第23話 こいつだけ?
「キジバトってのはそのぐらい警戒心のない鳥なんだ。日本が貧しかった時代には乱獲されて絶滅しかかったんだ」
「へぇ、可哀想な鳥ね」
「戦後には山の奥地にしかいなくなって、ヤマバトなんて呼ばれていた時期があるぐらい。貴重な動物性タンパク質だった」
「へぇ」
「でも、昭和38年に鳥獣保護法が改訂されて、保護されるようになってからというもの」
「あ、ごめん。私、ちょっと用事を思い出しちゃった。またね、ご馳走さま」
「数が増えて……あ、そう。それは残念だね。またメールするね」
「うん、じゃ、お先」
「ってなことで、今日のデートは途中解散となった」
「まったくもう、プンプンよ」
「なんでだよ!?」
「いつもいつも、まったく懲りもせずに、同じことを。もう」
「いや、なんでお前が怒ることがあるのかって」
「あの子は学校の後輩なのよ。また私に苦情が来るじゃない」
「いや、今回は揉んでないからセーフ」
「そういうこっちゃなくて!!」
「待て?! あの子、しらべの後輩なのか!?」
「そ、そうよ」
「あっちょんぶりけ」
「なにそれ?」
「あ、いや。知らなきゃいいんだ。いや、良くない。俺は高校生だとばかり思ってたぞ」
「それは私より発育がいいからやかましいわ!!」
「それを言わないようにしていたのに、お前が先に言ってどうするよ」
「なんかそういう空気だったから、このやろうめポカスカ」
「痛たたたた。こら、なんで蹴るんだ」
「足でよ、どかぼか」
「いや、そういうことじゃなくて痛たた」
まあ、しらべの言わんとすることは分かっちゃいるんだ。お前は自分勝手に喋りすぎると。しかし、相づちを打ってくれる相手だと、ついつい知っていることを喋りたくなるのが人情というものだ。それは俺がが博識だから仕方ないことだ。
いやなら途中でなんとか話題を変えるとか、ボケをはさんでみるとか、話が長いと苦情を言うと……。
それ、いつもしらべがやってることじゃないか。
「ってことはなにか。俺と付き合える相手って、お前しかないという痛だだだだだっ」
「妹に欲情すんな!」
「するかっ!!」
まったく、妹なんてろくなもんじゃねぇ!!
だけど、俺のことを一番正確に理解してるのは、妹(こいつ)なんだよなぁ。
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