第18話 休み明けの朝

 俺の冬休みが終わった。その初日である。


「ふぁぁぁ、おあよ」

「おはよう。おにぃ、まだ着替えてもいないの。今日から学校でしょ


「ああ、1、2時限は自主休講にして、昼から行くふわぁぁ」

「また、夜中にエロゲしてたん?」

「人聞きの悪いことを言うな。ウマ娘だよ」


「ああ、女の子を調教するやつね」

「誤解を招く表現やめろ! 昨日、SSRを引いちゃったもんで、一生懸命育ててたんだよ」

「調教してたんだよね?」

「そうじゃない! いや、間違ってもいないけど……」


「大学生が夜中になにを頑張ってんだか。休み明けが辛いのは分かるけどね、もしゃもしゃ」

「あ、俺にもトーストくれ。ふぁぁぁお」

「いま、焼いてるから焼けたら勝手にとってね、ごくごく」


「うん、分かった。やっぱりあれだよな、しらべ」

「なによ」

「休み明けの初日は辛い。だから最初の日ぐらいは」

「中学なら半日だけどね」

「休みにして欲しい」

「一生寝てろ!」


 お後がよろしいようで。


「こらこら。そこで終わっちゃダメでしょ」

「あ、トースト焼けた。ジャムはどこだっけ?」

「食器棚の2段目よ」


「そっか。あ、ほんとだ。コーヒー飲もうっと……あれ、スプーンはどこ?」

「食器棚の下側の引き戸よ」

「あ、ほんとだ。砂糖は?」

「さっきの食器棚の3段目」

「冷蔵庫じゃなかったのか」


「砂糖は冷蔵庫入れちゃダメなの。固まっちゃうでしょ」

「冷蔵庫なら乾燥するから固まらないだろ?」

「塩はいいけど、砂糖は乾燥させちゃダメなの」


 そんなはずは……(ネット検索)まじやんけ!? なんで俺はしらべにマメ知識教わってんだ。反省しよう。


「分かればよろしい」

「で、クリープは」

「おにぃ、いい加減に覚えなさいよ。毎日のことでしょ?」

「ふぁぁぁあ。なんか眠くて覚えられない」


「いやいや、起き抜けに覚える必要はないから。いつでも覚えられるから。24時間砂糖は同じ場所にあるから」

「家事のことは全部お前にまかせてるからなぁ」

「えへん。私はなんでもできるからね」

「なんか威張り始めたぞ?」


「私ができないの勉強だけよ」

「それって学生としてはどうなのよ?!」


 私の存在価値も分からないとは。まったく、兄なんてろくなもんじゃねぇ!

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