第3話 環境指標動植物

「しらべ、環境指標動植物ってのがあってな」

「ぐー」

「山歩きしながら寝たふりすんな」

「だって、また長い話になりそうだったもん」


「そんなんだから通知表がオール3になるんだぞ」

「いやぁ、照れますな」

「褒めてないっての」

「でも私、大学とか行っても、単位落とさない自信があるよ」


「全部、可だろうけどな」

「いいじゃない。おにぃなんか去年、3つも単位落として進級が危なかったでしょ? おとんがハラハラしていたって言ってたよ」


「うるうるうるさいよ。今年になってちゃんと取ったから大丈夫なんだよ」

「追試でね」

「なんで知ってんだ!?」

「おとんに、追試で8,000円いるって泣きついてたのが部屋まで聞こえたもん」

「くっそ、地獄耳め」


「もし留年したら学費は自分で稼いで払わせる、って言ってたよ」

「うがっ。ま、まじか!?」

「うん、ほんとだよ。言ってたのは私だけど」

「お前かよ!」

「今度単位落としたら、その時点で学費出してあげないからね」

「お前に出してもらってねぇよ!」


「で、その環境大臣だか観葉植物だかがどうしたって?」

「環境指標動植物な。その地域における環境の破壊度を、そこに住んでいる動物や植物を観察して計ろうという試みなんだ」

「ますますもってイミフなんだけど?」


「うぅむ。環境は分かるだろ?」

「そりゃ分かるよ」

「指標は?」

「なんとか分かる」

「動植物?」

「なめてんのか!」


「じゃ、全部繋げて言ってみ?」

「環境大臣さんの育休取得?」

「時事ネタを出すな!」

「さん、が付いた分だけ丁寧になったでしょ」


「悪い方に変わってるぞ。ともかくそういう指標があってだな、その鳥バージョンを日本野鳥会が設定しているんだ」

「ご苦労なこってすな」

「なんで上から目線だよ。それで、あの鳥は何点かって話をしたかったのだが」


「やっと最初の話に繋がったね。じゃ、93点で」

「鳥の種類も分からんのに、適当な点を付んな。ってずいぶんと高いな、おい」

「高めにしておかないと、審査員として不適格と言われそうで」

「どこの上沼恵美子だよ。指標は10点満点だ」


「じゃ10点で」

「点数は高めに言えば大丈夫という風潮やめろ。点数の前にあの名前を知らないといけないだろ」

「じゃ、スズメで」


「だから適当なこ……合ってるじゃねぇか?!」

「えっへん。だって良く見る鳥だもん。スズメは何点?」

「自慢されるとむかつくな。スズメは1点だ」

「たった1点かよ! 20匹ぐらいいるから20点ね」


「ダメなんだ。種類ごとに点数が付いてるから、どれだけいても1点だ。あと鳥は20羽って数えような」

「えー。カスだって10枚集めれば1点になるじゃない」

「だれが花札の話をしろと。数がいくら多くてもダメなんだよ。環境破壊度を示す指標って言っただろ?」


「じゃカラスは何点?」

「カラスはハシブトガラスが1点。ハシボソガラスは2点」

「カラス天狗なら500点ぐらいありそう?」


「それ鳥じゃないから。実在の生き物ですらないから。あそこにいるのはハシボソガラスだから2点だ」

「カラスだけでも2種類もいるのか。ややこしいな、もう。でもスズメとカラスで3点になるのね。満点は何点?」


「50点満点だ」

「ってことはあと22点か。それなら、どこかに鳥さんいないかな……」


「こらこら。計算が違ってるぞ。50点満点ならあと47点必要だろ」

「私、いつも真ん中を狙うの」

「真ん中?」

「そう。テストは100点満点だから50点を狙う。鳥さんが50点でいいなら25点が目標!!」


 ドヤ顔でそんななさけない目標を言いやがった。だからオール3になってしまうわけだ。話も通じているんだかいないんだか。こんなのに付き合わされる俺っていったい……。


 まったく妹なんて、ろくなもんじゃねぇ。

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