第3話 引き合わせ
恵理はお昼を十分くらいですませると元同期祐梨の芸能情報に目を通すと同時に昨夜の流美との酒席でのやり取りを思い出していた。あの時の二人はまさしく昔話に花を咲かせ和気藹々とした雰囲気であった。お互いが持ち合わせている祐梨に因んだ芸能情報を披露しながら話をはずませていた。
「あたし達の中で第一線で活躍してると言えるのは祐梨てことか?」
「取調官シリーズだよね」
流美がふざけて敬礼のまねをして笑みを浮かべた。
「あのドラマ初めは深夜枠でのトップを狙って企画してたみたいだけど、他のドラマの主演の男の子が麻薬で捕まっちゃってゴールデンの放送時間枠に穴が空いて急遽祐梨が主演のドラマをもってきたて言ってたわね」
「そうそう主演の祐梨以外は結構キャストを入れ替えながらやるて言ってたけどゴールデン枠いっちゃったら祐梨の上司役の女の人に同僚役の人3人くらい固定しなきゃいけなくなって回を重ねていくうちに誰が主演だかわからないなんてネットとかで言ってたわ」
「あぁそうそうそれが取調官梨紗シリーズあるあるてのね」
恵理はちょっと身を乗り出して右手の肘をついて人差し指を上に向けて前後に微動させながら話にのりはじめた。
あれから祐梨のドラマネタで話が続いた後一区切りついてからなんと流美から乙海市市長選に出馬したいという話が切り出された。その席で恵理は一旦出馬をやめるように言ったが結局話を党に持ち帰って検討するということでお開きにした。
憲政党事務所で恵理は昨夜流美から出された政策立案に目をとうしていた。アイドル時代から流美がいつも言ってたとうりに学業と芸能活動を両立させてきただけあって中々理路整然としたものではあった。
「これ、見せてもらっていい?」
立案を一通り読み終えると選挙参謀の真田翔子が声をかけてきた。
「あ、あぁどうぞ」
恵理が戸惑い気味に返事をするとすかさず立案を取り上げて目をとうしはじめた。この段階でダメ出しが出まくるようならちゃんとやめるように説得しようと決意しはじめたその矢先
「中々見どころあるじゃない。この政策立案書いたのどんな人?」
「アイドル活動やってたときに一緒だった子です」
「ふぅんこの子市長選に出るんだ、今度の”かぎおつ”は面白くなりそうだわ。早速蓑田と太田を引き合わせようかしら」
真田から思わぬ言葉が出て恵理だけでなく周りの職員もキョトンとして一同仕事の手が止まってしまっていた。
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