だから僕はいくつかのスマホゲームを辞めた

 今の若者が何歳から自分用の携帯電話を持ち始めるものなのか、僕にはうまく想像できないが、僕はちょうど大学生になるタイミングで携帯電話を持つようになった。その後、スマホが登場しても、「携帯できる電話機に何を求めているのか。そんなに多くの機能が必要なわけない」と、携帯電話にはカメラさえ不要と思っていたほどで、しばらくはガラケーを使い続けていた。

 風向きが変わったのは、僕より先に妻がスマホを購入したことだ。ガラケーでは望むべくもなかったネットサーフィンが快適に出来る、といたくご満悦だった上、ブームになっていた「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」とやらをインストールしてみたところ、すこぶる面白いと言う。僕も借りて少しやってみたら、「石をつなげて消す」という基本のパズル部分だけでも、自分で一度に動かせる石の自由度が非常に高く、戦略性もあり、やり応えがある。ゲーム全体としても、収集要素や育成要素が多く、飽きさせないつくりになっていて、すっかり嵌ってしまった。妻が使っていない時にスマホ本体を借り受けて、僕がプレイするような日々が続いた。パズドラ専用の「携帯ゲーム機」をやり取りしていたような感覚に近い。結局、パズドラについては、専用機であったスマホを妻が電車内に忘れて逸失してしまって、急遽機種変更せざるを得なくなり、データ移行に必要な情報を控えていなかったため、続けられなくなって、辞めた。なお、僕はガンホーの株式を所有しており、応援する目的もあって、後に、ニンテンドー3DS用ソフトの「パズドラZ」を購入している。こちらは、一通りクリアこそしたものの、熱狂的に嵌るほどでなく、これは、アップデートで随時イベントの更新などが出来ない買い切り型ゲームの限界だったのかもしれない。

 スマホの(携帯ゲーム機としての)可能性に気づき、遅ればせながらiPhone(5S)を購入した僕は、それから様々なスマホゲームに手を出していくことになる。僕がスマホゲームを始める理由には、大きく三つのパターンがある。

 一つ目は、「妻に誘われる」ことである。妻は、「スマホを縦持ちでプレイ出来、主人公アバターが可愛らしくて衣装の着せ替えが可能な、アクションゲームが下手でもそれなりにプレイできるRPG」を好んでいた。大概の場合、そのようなゲームはゲーム内フレンドと協力してプレイすることが可能であり、ヘルプのために僕にもゲームを始めるよう指令が出た。僕は渋々それに応じる、という流れになる。なぜ渋々なのかというと、絶対に「妻の方が先に飽きてしまい、僕だけが続けるという逆転現象が起きる」からである。妻に言わせれば、「いつのまにか私より嵌って、私より強くなって先に進んでしまうので、やる気を削がれる」ということらしいのだが、だとすると、僕は何のためにプレイし始めるのかよくわからなくなる。「剣と魔法のログレス いにしえの女神」と「ファンタジーライフオンライン」が、まさにこのパターンで、前者は、課金せずにエンドコンテンツに混ざるのがどうやっても不可能になってきた(新ジョブが実装され過ぎて、「アサシン」「デスペラード」辺りでついていけなくなった)タイミングで離脱し、後者は、「エンドコンテンツを無理に目指すことなく、無料で楽しめる範囲でやっていこう」とコツコツ続けていたら、サービス終了によって強制的に辞めることとなった。「最高ランク☆5を超える☆6キャラクター実装!」みたいなインフレ不可避のアップデートがあったら、存続黄色信号なのだと、大いに学ばせてもらった。

 二つ目は、僕が気まぐれに始めたゲームであり、これはそれほど多くない。「雀魂」と「麻雀一番街」という麻雀アプリを除くと、「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」しかない(ネット麻雀を辞めた経緯は別の章に譲ることとし、ここでは触れない)。ドラクエの方は、イベントモンスターが確率で仲間になるのだが、その確率があまりにも低く、何度も何度も周回することを余儀なくされ、それに嫌気がさしてきて、ある日、何の脈略もなくアンインストールした。

 三つ目は、ポケモン関連ゲームであり、これが一番多い。僕は、ポケモンというコンテンツに魂を救われたと思っていて、恩返しのために、ポケモン関連のものにお金を落とすことを一番の趣味としている。ゲーム本編は当然のこと、スマホゲームについても(全てを網羅していると到底言えないが)、「ポケモンGO」「ポケモンコマスター」「ポケとる スマホ版」「ポケモンマスターズEX」のプレイ経験を有する。ポケモンGOとポケモンマスターズEXは、執筆時点でまだ続けているのでここでは言及しない。ポケモンコマスターは、ポケモンのフィギュアを使った陣取りゲームみたいな代物だったが、バランス調整に失敗していて、最初期はオニスズメという希少性のかけらもないポケモンで無双出来ていた。しかし、徐々に強さが調整されていき、順当に、レア度の高いポケモンを持っていないと勝てなくなってきて、その内プレイしなくなり、いつの間にかサービス終了してしまった。ポケとるは、ポケモンの顔を並べて消すパズルゲームだが、パズル力が足りずに高難易度コンテンツに全く歯が立たず、いつしかプレイを諦めた。

 要するに、プレイする楽しさをストレスが上回ると、モチベーションが落ちてきて、ゲームから離れてしまうということだろう。なお、スマホゲームは大概において、「ペイトゥウィン」のシステムが採用されており、課金すれば強くなり、ストレスから解放される。確かに、僕は今でも続けているゲームに対して、金を落とすことを辞さない。スマホゲームのガチャ課金というシステムは、運営企業にとっては金のなる木だが、プレイヤー側には何の得もない。僕はいくつかのスマホゲームを辞めて、いくつかのスマホゲームを続けているが、それは、時間ばかり浪費する無料プレイのゲームをやめ、課金により「ガチャのハズレ」という虚無のために多額のお金を浪費し続けていることに他ならない。……まあ、虚無に投じた僕のお金だって、巡り巡って誰かの子供のミルク代に代わっているはず。そう信じる。

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