第2話

 教室は1/C。なんか、表記おかしいけど私立だからか。もしくは幻覚だろう。周りを見ながら合わせていくしかない。教室に入ると、人と[いつもの]が入り交じっている。こいつらとも付き合いが長くなりそうだが、そんなことは放って先ずは友人作りだ。誰に話しかけたらいいんだ。戸惑っているとチャイムが鳴った。騒がしい教室は担任と思われる男性教師が来ると共に静まり返った。


「は~い、おはよ〜。今年度ここのクラスを受持つ仁波(じんば)だ。よろしくな〜。これから体育館に移動して入学式を行うからな。9時半には集まっておくように〜。以上。」


四十代くらいか、ベテランなのだろうがあの喋り方は何とかならないか?仁波のせいでみんな気が抜けてしまっている。第一学年を任されるのだからいい教師だと思うが、関わりたくない存在だ。早く帰りたい。入学式の長すぎる校長の話も終わり、ダラダラと話す仁波の説明も聞き流した。



 その日は結局誰にも話しかけられず家路に着いた。玄関を開け、二階の自室へ向かう。真っ暗なその部屋はとても居心地が良く、私をこの世界から消し去ってくれた。照明をつけることは無いので取り外したし、勉強机の小さな光もコードを抜いてあるためつかない。時間を亡くしたようなこの部屋はずっと真夜中。今日は疲れてしまったから早く寝よう。必要最低限の事を済ませ、お気に入りのベッドの上へダイブする。両親とはすれ違いの生活を送っているため最近は顔すら見ていない。どんな顔だったっけ。そんなことを考えていると、寝る前に必ず飲む「クすリ」を忘れていつの間にか眠ってしまった…。


 ん、ちょっと寒い。布団もかけないで寝ちゃったのか。布団、どこだろ。寝起きの瞼を開けながら目をこすった。ぼやけた視界の中に誰かが居る。上半身を起こそうとするが磔にされたかのように動かない。声も出ない。怖い。視界が段々と鮮明になってくる。私を覗き込むようにして屈んでいたのは一人の男の子。同い歳くらいに見えるが、幼くも、大人っぽくも見える不思議な人。ヒト、なのかな。[いつもの]と同じようにも見える。私が顔を強ばらせていると、男の子が口を開いた。


「初めまして。キミどうやってここへ来たの?それと、何者?」


「どうやって来たって…。ここは私の部屋じゃ、」

辺りを見ると机も大量の薬も何も無い。ただの地面が広がっていた。


「ここ、どこ?夢?」


「あぁ。なるほど。君か…」

男の子は小さく呟いたと思えば、先程より優しい口調で話し始めた。

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