世界と繋がる境界線
文月(フミヅキ)
第1話
ここは太陽、月、そして地球の神々によって保たれた歪な世界。それぞれの神がそれぞれを護り平穏な日々を保っていた。太陽の神が失くなるまでは…。
世界を護った一人の少女の物語。
カーテンの隙間から陽の光が刺す。六畳の部屋には勉強机とベッドが置かれ、幼い子供部屋の様。そして床には場違いな大量の「クすリ」が散らばっている。魂が抜けてしまったような、所謂、廃人のようなその子はベッドに腰掛けてピクリとも動かない。陽の光が脚を照らす。触れたら折れてしまいそうな、また、真っ直ぐ生きていけそうなその脚は誰が見ても美しく、陽の光によってさらに白肌が映えている。少女は今日も「クすリ」を飲む。一日四錠。共働きの両親は朝早く家を出てしまうため、食事と共に母が薬を持って部屋に置く。何の効果があるかも分からない粒が大嫌いな太陽と共にやって来るのはもう慣れてしまった。
いつまで続くんだろう。いつまでも続くんだろうな。
薬は母が持ってくるし、太陽は勝手に起きてくる。明るいし。だから嫌い。
部屋のドアにかかった制服を見る。真新しい霞南(かなん)高校の制服。クリーニングに出されてシワひとつ無い。今日、この制服を着て初めて学校へ行く。正直行きたくない。だって私可愛いから、モテちゃう。ってのは冗談。本当はみんなにからかわれるから行きたくない。
私は[精神病]だから。
世間一般に知られている気分障害や統合失調症とかいう病名がない。医師にも原因や症状の判断が難しく門前払いされている。ただ言われたことは精神病だね、と。そのため色々な種類の精神病薬を飲まされている。朝食と服薬を済ませ時計を見る。7時56分か、そろそろ準備しないとな。制服に腕を通す。重い。学校までは歩いて行ける距離が良かったためこの高校を選んだ。評判も悪くない、大学のように自分で好きな講義を受けられるところも魅力である。春一番の暖かさ。気象予報士が言っていたが、ようやく当たったな詐欺師め。十五分程歩いて校門の前に着いた。桜の花びらが絨毯のように敷かれ、まるで私を飲み込もうと言わんばかりに校内へ誘う。私立霞南高等学校入学式。
ここで私の人生を変えた一人と出会うことになる。
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