第3話 東<1>

「グループで相談しろ〜」


これは言われる。

なぜこんな無意味なことをしなければならないのだろう。

「『イジメについてどう思うか』ね」

これも言われる。

なぜこんな無意味なことを聞くのだろう。

「、、、萌はダメだと思う」

まだ何も言われていないのに、小さな声で意見する。

萌は自分のことを萌と呼ぶ。

高校生にもなって。

さらに、今回すべきはなぜなのか、である。

「このシートに書け〜」

先生から紙の束をもらう。

ああダルい。

でもね、

こういう相談ダルいやつ待ってた。

裏工作してでも、この班になりたかった。

「その紙ちょうだい」

右手で紙を渡す。

「ちょっと、私にもちょうだいよ」

智子がそう言いながら左手の紙の束をひったくる。

いや、ひったっくったと思う。

だって私は触れていないのだから。

私から紙をもらう、

無感情に澄ました、

凛々しい凛々しい東山君将来の彼しか触れていないから。



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