第2話 南<1>

「なあ女子たちいないしエッチな話でもしようぜ」


男子の場合も、特にこれといった合図はなく、恋バナは始まるらしい。

廊下で聞き耳をたてる。

「なあどんなのがタイプ?」

男子の場合は『タイプ』を聞くらしい。

自分と同じ子が好きだった場合女子のように上手くスルー出来ないのだろう。

「巨乳、ロングヘア。俺はこれ以外何も求めない」

だから売れ残ってんだよ猿どもが!

高校2年生、青春真っ只中。

夕日差し込む午後の教室。

非モテの集団と汗の匂い。

「吐き気がするわ」

「それを盗み聞きしているお前はどうなんだよ」

付き添いの智子がすかさずツッコむ。

失礼な!

私にはちゃんと目的があるの。

「俺もだわ〜W」

猿が汚くゲラゲラ笑う。

いや、笑ったと思う。

だって私は聞いていないのだから。

猿どもと会話する、

楽しげに笑った、

愛おしい愛おしい南海君将来の彼しか聞いていないから。

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