第21話 騎士従者
翌朝、地平線に朝焼けが染め始めた頃、ホフマン男爵領の中で最も大きな町の広場には多くの人々が集まっていた。
騎士は単独で存在するわけではなく、補助的な従者が必要不可欠。甲冑、武器、馬の手入れする人が必要になってくる。何故なら、高貴な騎士様は自分自身でやる発想自体がないからだ。
私も例外ではなく、今日は私の騎士従者を選ぶ番だ。広場に集まったたくさんの若者たちは運試しに来ている。
貴族階級から見たらただの騎士の従者だとしても、一般の領民にとっては依然として人気の職業であるのは間違いない。
この一歩を踏み出すと、軍事訓練に参加する資格を持つようになる。戦場で功績を立てれば、報酬を得ることも可能だ。
確かに戦場は危険だが、問題は騎士の従者をやらなくても、戦場に出さられることだ。
常備軍を養う余裕のない中小貴族にとって、農奴を徴兵して戦わせることはよくあること。高貴な貴族である彼らが、ホフマン家のように自分たちの生活水準を下げてまで常備軍を養いたいかと、聞かれるて、答えは人それぞれ。その中にはやりたいけど、出来ない者も少なくない。
いずれにしても、貴族様の傍に従っている場合の生存率は、下っ端の兵士たちといるよりも高い、一般的には、ね。
「ハーランド、お前の方法で、選抜を始めて構わんぞ」
父親は広場に集まった少年たちを見つめながら、もうこれ以上人が集まらないと感じたのか、私に選考を始めるように言った。
戦場では親密な協力が必要なので、従者はできるだけ親しいほうが良い。目の前のこの一団の若者たちの中に、私と親しい関係にある人もいる。
しかし、私が従者を選ぶ際に設定した基準を満たさなければ、例え親しい関係でも採用はしない。
「では、従者を希望するものは、町を10周回って、砂時計が尽きるまでに戻って来なさい」
私は微笑んで宣言した。
ただ、この微笑みが少年たちの目にどのように映ったかはわからないがな。
元々少なかった砂時計の残り沙を見て、皆慌てて走り出した。
人に勝てなくても、仲間に勝てればいいのだ。私にとって、貴族社会の戦争も同様に、最後に生き残った者が勝ちなのだから。
この階級が固定化された時代において、一攫千金はほとんど不可能。私のような継承権を持たず、更に冒険を望まない小貴族にとって、最善の方法は「待つ」ことだ。
自分より高い継承権を持つ者の死を待ったり、またはとある親族が途絶えるのを待ったり、あるいは条件に合う貴族との政治結婚を見つけることが、戦功を立てて領地を獲得するよりも簡単だ。
なぜなら、今ある全ての領地はすでに誰かの所有物だから。外部の力が介入しない限り、大きなチャンスは滅多に現れません。
どうせ用意できる席が限られている以上、主なき領地が現れない限り、新しい領地貴族が誕生することはあり得ない。功績を立てたとしても、名誉貴族になるのが関の山だろう。
サササ…
砂時計はすぐに底を見せ、従者選抜に参加した少年たちは次々と広場に戻ってきた。成功を喜ぶ者もいれば、失望してうなだれる者もいた、正に百者百様と言ったところかな。
私が結果を発表しようとした瞬間、父親が突然口を開いた。
「47名が制限時間内に到着した。でだ、第2ラウンドを開始しょう!」
ああ、私は一瞬で理解した。合格者が多すぎたのだ。無論、男爵の領地にとって、これぽっちな頭数には困らないが、私には収入源がない。
一族の伝統に従って、数か月のトレーニングの後、私はエドソンのように自分で生計を立てる必要がある。
給料のいらない騎士従者は多ければ多いほど良いように見えるが、その前提条件は彼らを養うことができるか否か。
ホフマン家は子どもたちが独立する際にいくらかの資金援助を行うが、多子家庭であるホフマン家自身の財政状況を考慮し、普段から節約生活を送っても、それぞれに割り当てることができる金額はそれほど多くない。ついでに言うと、私は子どもの頃から自分の分のお金を使ってきたから、更に少ない。
私は父親にこっそりと尋ねみた。
「今の私に何人の従者を雇えますか?」
父親は少し考えた後、「お前が以前の要求した家畜の費用、槍投げの練習の消耗、そしてホフマン家の者が以前に独立した際、どれだけの時間を費やし、経済的自立をしたかを考慮すると、最大で10人まで雇うことができるな」と返答してくれた。
はあ??!!
これまで、そんなにお金を使ったのか?エドソンが独立するときは30人近くを連れて行ったんだぞ!
はぁ~、でも仕方がない。背に腹は代えられぬ、父親の報酬を受け入れるしかないか。
「次に、皆を8つのグループに分けて、お互いに戦ってもらう。そして、その中から最強の10人を私の従者とする」と私は無念な気持ちで第二ラウンドの選抜方法を発表した。
人数を増やせないのなら、質で勝負するしかない。各グループの最強者を選ぶのではなく、度重なる戦いを通して運が良かっただけの人を選り分ける。騎士である私と父親の目利きがあれば、武芸を学んでいない若者から強者を選び出すのは造作もないことだ。
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