第18話『命の水』
とある夜、私たち一家はちょっと豪華な夕食を楽しんでいた。炭火焼きのローストビーフ、グリル野菜のサラダ、チキンパイ、炒め野菜、そしてキノコスープなどが並んでいた。私たちは食べながら、最近の社交界の噂や、自分たちの近況などについて話し合っていた。
突然、父親は話題を変えて、私の修行の進捗状況を尋ね来た。
「ハーランド、最近の修行の様子はどうだ?」
「体力面のトレーニングはまだ続けていますが、3か月前から大して変化していません。自分の感覚だと、肉体の限界に近づいてしまった感じです。少なくとも、自分自身の修行だけで、もう向上できるとは思えないです」
「うん、それが普通だ。体の成長期は人それぞれだからな。最初は、なぜお前の体が他人より早く成長したのか分からなかったが、おそらく早熟なだけで、特別な体質というわけではなさそうだ。それでは、『命の力』の制御について、どの程度自信がる?」
「自分の感覚から言うと、基本的にはほぼ完全に制御できるようになっています」
「良くやった。準備が整いたら、ワシが王都に『命の水』を申請しょう」
「ありがとうございます!お父様!」
「スコット、お前もそんな顔をするな。心配しなくてよい。お前の分もなんとか用意してやるから」お父様は私と話している時、僅かに不安そうな表情を見せていたスコットを見て、落ち着かせるように宥めた。
「は、はい!お父様」スコットは自分の表情が誰にも気づかれなかったと思っていたのか、突然父親に指摘されて、あわてて返答した。しかし、彼が明らかにほっとしたことが感じられた。
それも当然のこと。騎士になれるかどうかは、『命の水』を飲めるかどうかに密接に関連しているからな。
『命の水』は、錬金術の産物で、基本的な効果が2つある。
1つ目は、人々が『命の種』を凝縮する際に、本人の『命の力』以外の『命の水』を提供し、成功率と『命の水』の品質を高めることができる。
例えば、とある人の『命の力』の総量が50しかないと想定した場合、彼の制御力がどれぐらい優れていても、『命の種』を凝縮するのは非常に困難である。できたとしても、その潜在能力はたかが知れている。
しかし、『命の水』は、追加の20〜30の『命の力』を提供することで、『命の種』を凝縮する難易度を大幅に低下させられる。成功した場合、この追加された『命の力』の一部は、凝縮した分だけ、本人の力へ変えられる。
2つ目は、『命の水』は『命の種』を凝縮できなかった場合でも、使用者の命を保護することができるからだ。
『命の種』を凝縮する本質は、ダイヤモンドを作るように、圧力をかけ続け、莫大な『命の力』を『命の種』に変化させること。この過程で、全身の『命の力』を『命の種』に圧縮しようとすることが一般的である。何故なら、『命の種』に含まれる『命の力』が多ければ多い程、自分のポテンシャルが高くなっていくのだから。もちろん、その場合、自分自身を守る『命の力』も含まれる。『命の種』を凝縮できなかった場合、それまでに圧縮した『命の力』が一気に無防備な体に反噬される。最善の場合、反噬は大きなダメージを体に与え、長期的な回復期間が必要になる。最も一般的な結末は、光の主に謁見することかな。
『命の水』が提供する『命の力』は、外側に覆われた保護膜のように、『命の種』を凝縮する際に存在し、失敗した場合に身体を反噬から守ることができる。
理論上、『命の水』を購入できる能力があれば、無制限に『命の種』の凝縮に挑戦できる。しかし実際には不可能だ。
『命の水』は今の貴族階級を形成する重要な根幹であり、国力に直径する戦略物資である。無能な者が無駄遣いして良いものではない。
王室や大貴族の一人息子であり、他に継承者がいない場合を除いては、誰もそんな贅沢を許さんだろう。
多分?
王国に属する福利として、または王国が貴族に対する義務として、王国は自分の貴族に『命の水』を提供する必要がある。
各貴族は、自分の階級或いは実力に基づく購入クォータを持っている。たとえば、ホフマン男爵家の場合、10年ごとに1回の購入権を得ることができる。そう、これは単なる購入権であり、十分な富がなければ、『命の水』を手に入れることはできない。
ホフマン家のような子供に恵まれた貴族にとって、他の一時的に必要がないまたは貧しい貴族に高い代価を支払って『命の水』を購入する必要がある。これは理解できることだ。なぜなら、『命の水』は戦略的な資源であり、各貴族は自分たちに属する騎士の数を増やすことで自分達の勢力を強化したいからだ。そのため、市場での『命の水』の需要は常に供給を上回っている。
ステファンの『命の水』は、ホフマン家と懇意のある家から、規定価格の80%以上の金貨を上乗せって購入したみたいだ。これは非常に良心的な価格であると言える。なぜなら、関係が良好な場合にのみ、売り手が金銭での精算を検討するからだ。
一般的な場合は、規定価格の何倍か他の貴重な資源などを要求される。スコットと私の年齢が近いことを考慮すると、彼が『命の水』を必要とする場合、ホフマン家が再び多額の金貨や人情を必要とすることも容易に想像できる。私たちの家が万年貧乏貴族であったのも、分かったような気がする。
母親は特に変な反応を見せませんでしたが、僅かに吊り上がった口筋が、彼女の気持ちを物語っていた。稀少な資源をめぐって自分の子どもたちが互いに殺し合うことを見なくなったことに安心したのだろう。
一方、ザックの額の皺が少し深くなっていた。自分を父親の立場に置き換えて、将来、子供たちのために準備することを今から心配しているようだ。彼らには安定した生活があるが、私たちと違った問題を抱えているんだなと、実感したよ。
まぁ、これも人生か。
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