第17話 16歳

 トロール・幻影との戦いから6年が経った。

 その戦い以降、周囲の領主たちから不審な事件の報告もなく、不思議な現象も起こらなくなった。そのため、私たちはこの件が一件落着と判断し、再び平穏な日々が戻ってきたと喜んだ。


 この平穏な6年間に、いくつかの出来事が起こった。

 まず、ザックとアンナ嬢の間に3人の子供が生まれたこと。

 これにより、私や他の候補は正式に男爵の相続権を失った。無論、ザックの子息が全員他界すれば話は別だが。

 しかし、貴族社会では、『偶然』な死亡は珍しくないが、『偶然』が3回続くと、他人をバカにしているとしか思えない。疑惑だけで、牢獄行き、やったのがバレれば、魂さえ砕かれる。


 そのため、近い将来私は両親から独立することが確定した。

 今は、まだ『命の種』を凝縮していないが、私の場合、騎士になることはもう決定事項のようなもの。だからこそ、今から独立後の人生計画を考えなければならない。


 北方に参戦することや流浪の騎士になることは、私にとって絶対に不可能だ、神に誓ってもいい。

 この混乱の時代を生き残ることを人生目標にしている私が、愛国心や理想論を掲げ、英雄になろうなんて考えられない。運良ければ、官職や貴族の地位を手に入れることもできるかもしれんが、このような世界に転生した私の運なんてたかが知れている。


 騎士団は悪くない選択肢だ。高貴な社会的地位と優遇された待遇は、多くの人が夢見るもの。大貴族の家に生まれた人々と比べた場合、私自身の力量が何処まで通用するか分からないが、人生には何か目指すべきものが有っても罰は当たらないと思う。そうだろう?


 しかし、どの騎士団に入隊するか選ばなければならないという問題に直面すると、まだ躊躇がある。

 王立騎士団は総合的に優れた選択肢であることは間違いないが、競争は激しい。他人に劣らない自信はあるが、他人を侮るつもりもない。さらに重要なのは、もし北方の獣人帝国が侵攻してきた場合、彼らは前線に送られる可能性が非常に高いこと。王立騎士団のメンバーは、精鋭の中の精鋭であるとはいえ、死傷者は必ず出る。戦争には犠牲者が付き物だからなあ。もし私がその不運な犠牲者だったら堪ったもんじゃない?だからしばらくの間、観察してから決断を下すことが必要である。


 でだ、私にとって最も適しているのは、東南州のいくつか存在する騎士団だ。

 中でも最も有名なのはシュナイダー伯爵のスカーレット騎士団。だが、この騎士団に入団することは少々高望みかもしれん。その場合、私は中位貴族が所有する騎士団をメインに考えること。待遇はトップクラスの騎士団ほど優遇されないかもしれが、少なくともここで足を踏み入れることができ、あまり戦闘任務を担う必要もない。


 そういうわけで、私の計画はまずスカーレット騎士団に加入してみること。もし入団試験に落ちった場合、他の小規模な騎士団を考慮し、最後に婿入りも視野に入れなければならない。婿入りを選ぶと、地位は高くないかもしれんが、比較的安全なポジションに居られる。なぜなら、このような人を強制的に招集しても、何の役にも立たない可能性ほうが遥かに高いからだ。さらに、婿たちが死んだ場合、彼らの親族または勢力を怒らせることになる。


 二つ目の出来事は、ステファンが結婚したこと。

 彼が持っている騎士領は継承することができないため、貴族の世界では理想的な結婚相手ではなく、結婚の際には多くの困難があった。最終的に、父親が人脈や人情を駆使して、ホフマン家からかなり遠い場所に住む騎士の娘、バーバラ嬢を見つけました。バーバラ嬢も貴族の娘であり、彼女の父親は世襲可能な騎士でしたが、長男ではないため、貴族とはみなされていませんでした。


 幸いなことに、彼女の家族は少なく、彼女以外には両親と成年直前の弟しか居なかった。そのため、生活は比較的裕福で、私は彼女たちの生活状況がホフマン家よりも良いのではないかとすら思えた。結婚式が終わった後、彼らは用意された騎士領に引っ越した。


 ちなみに、彼らの子供も2年前に生まれた。


 三つ目のことは、両親がもう1人の弟と1人の妹を生んだこと。彼らの名前はそれぞれルーベンとミシェルです。

 まあ、超常的な力が存在するこの世界では、50歳を過ぎてもまだ中年と考えられが、彼らの年齢を考えると、やっはり相当頑張ったのだろう。

 ただ、ザックの子供たちが、自分たちよりも年下の子供たちをおじさんやおばさんと呼ぶことになるのに、どう思っているのだろう。


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 ちょっと待って!

 もしかして、私にも年下の叔父や叔母がいるってこと?!


 四つ目の出来事は、私が例の貝殻を持ち帰った後、私の成長が加速したように感じたこと。

 貝殻を触れた時、修行中にしか感じられなかった神秘的な力がより明確に感じ、私に更なる助力を与えてくれた。この力は、制御や協調に大きな助けを与えるだけでなく、生命力の総量も増加していることを新たに感じた。増加する総量はあまり多くないかもしれんが、他の人たちが修行をした後に成長を感じることができないことと比較すると、そのすごさが分かるのではないか。


 おそらくそのため、私の体は6年前から急速に成長し、1年前には2メートルほどになり、身体の発達もほぼ終了した。半年の観察の後、身体がほぼ定着したことを確認し、私は『命の種』を凝縮する準備を始めた。


 半年前から、私は自分が全身の『命の力』をどの程度正確に制御できるかをテストし始めた。頭部から足先まで、自分で制御できる範囲を詳しく調べようとした。例えば、本来左足に存在する『命の力』を、右手の薬指に移動させることなどを試す等々。

 最初の段階では、あの神秘的な力の手助けがあっても、自分の思い通りに『命の力』を移動させることが出来なかった。しかし、長時間の練習を経て、私は『命の力』を100%制御することに成功した。私がこのことを父親に報告したとき、彼は驚いてしばらくの間口がふさがらなかった。




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