第16話 初陣②
しばらくして、ステファンが別の方向から駆けつけ、トロールが自分の体から槍を抜こうとしているのに気づいた。その隙をついて、父親が奇襲を仕掛けてた。ステファンはすぐに腰に差した長剣を抜き、父親から少し離れた位置に立ち、トロールの視線に入らない位置に身を置いた。
「ステファン、トロールの下半身を斬れ!動きを止めるんだ!」
「はい!」
トロールを引き付ける役割を担っていた兵士たちは2人抜け出し、6人の兵士が担当することになった。それによって、ステファンが戦闘に参加したことで、やや混雑していた戦局が、うまく展開するのようになった。兵士たちの体力も限界に近づいていたため、交代で休息する必要があったのも原因の一つだ。
⋯⋯⋯⋯
ステファンが戦場に加わって間もなく、戦闘はほぼ終わっていた。2人のレベル3騎士が力を発揮し、トロールの下肢の再生が間に合わないほど切り続けた。すぐに、トロールの下肢は体の重みに耐えきれず、地面に倒れてしまた。ステファンがトロールを牽制している間に、父親は力を込めてトロールの首を斬り落とし、戦闘を終結させた。
しかし、トロールの首が斬り落とされた直後、飛び出した首とその身体は次第に消えていき、まるで存在していなかったかのように跡形もなくなっていた。だが、戦いが残した痕跡は、トロールが存在したことを物語っていた。
戦闘が終わった後、一人の兵士が転倒して頭を打ってしまったが、それ以外の者たちは少し疲れているだけだった。完璧な勝利と言えるでしょう。
父親は兵士たちに戦場の片付けを命じ、私とステファンを呼び出した。
「ここで何が起こったのです?なぜトロールがここに現れたのか?そして最後に、なぜその死体が消えたのか?」ストファンは父親に怒涛な勢いで尋ねた。
「ワシもお前が質問したい気持ちもわかるがな。ワシも知りたいわ」父親の答えに疲労が隠せない。
「ハーランド、何か気づいたことはあったか?」と、父親は私に尋ねきた。
「自信がありませんが、お父様」
「問題ない。手掛かりがない場合、すべての情報が価値があるものだ」
「では。最初にこのトロールを見たとき、すぐに現れたのですが、足元から現れたようにも見えました」
「つまり、最初から幻影だった可能性があるということか。ワシらは幻影と戦っていたということなのか?」父親は考え込み、自信なさげで呟いた。
「私はその可能性を排除しきれません」
「信じられないが、発生した以上、それは事実だ。ワシらはその事実を受け入れるしかあるまい」
そう言って、父親は私たちをトロールが最初に現れた場所に連れて行った。
天気は少し暗くなってきているが、池の周りには木々があまりなく、観察には影響があんまりなかった。
私たち3人は池の外縁にやってきて、私が長槍で池のとある場所を指し示しながら、「当時、この付近で、トロールが突然現れました」と言った。
父親は考え込み、私たちは彼が決定を下すのを静かに待っていた。
父親は私が持つ長槍を見て、「その槍で先程の場所に届くか?」と尋ねた。
私は手中の長槍を見て、そして先程の場所を見比べて、考え込む。そして、「もし、準備用の柄と結合させれば、届くかもしれません」と答えた。
「それじゃ、やってみなさい」
「はい」
私は兵士を呼び寄せ、予備の長槍の先端を取り外し、両端を紐でしっかりと縛り、の長槍を作りました。私は長槍を伸ばし、まず先端を池底に突き刺しましたが、何の反応もなかった。
その後、私は柄を水中に引っ張り、左右に振り動かし、何か手掛かりがないか探っていた時、柄から障害物にぶつかった衝撃が伝わった。私は先端で何度も触れ、柄からは模様のついた石のような感触が伝わってきた。私は身体を沈め、両腕で力強く振り上げ、目標を水面から引き上げ、再び水面に戻る前に先端で引っ掛け、一緒に引き戻した。ステファンはそれを両手で受け取り、パッと見て、そして父親に手渡した。
「ハーランド、他に何もないのか?」父親は、ステファンが手渡したものを見て私に尋ねた。
「ありません。感触から判断すると、残りは砂や小石だけです。さっきのは何だったのですか?」
「ああ、ただの貝殻だ」父親はため息をつき、手に持っていた貝殻を私に投げつけた。
私は慌てて手で貝殻を受け止めようとした、手に触れたその時、訓練の時に感じた神秘的な感覚を再び感じた。しかし、今回の感覚は以前のとは若干違い、何か脳内や精神的に新しいものが加わったような感じがしたが、具体的に何かはわからないでいた。
父親は私が驚きの表情を見せたのを見て、「どうした?」と尋ねきた。
「何でもないです、ただ模様がきれいだなと思っただけです」と、私は笑いながらごまかそうとした。
「そうか。気に入ったなら、それを持っていっても構わん。ステファン、他の人たちをまとめろ、今日は引き上げるぞ」と、父親は私の振る舞いには気付かず、ステファンに命令を下した。
ステファンは兵士たちを集め、忘れ物がないかを確認した後、来た道を辿って、拠点に引き上げた。
翌日、私たちは人数を割らず、昨日探索したエリアを再び探索した。水中にも数人派遣して探索させたが、これといった疑わしい痕跡も見つからなかった。最終的に、私たちは村人にいくつかの注意事項を説明した後、そこを出発して本邸に戻った。
3ヶ月後のとある日深夜。
戦闘の爪跡が完全に消えた池のそばに、全身ずぶ濡れの人が立っている。
彼の体や地面に広がった水染みから、たった今水たまりから出てきたと思われる。
彼の額には、現在の心境を明らかにする青筋が次々と跳ねていた。
「くそっ!!!誰だ!!!誰があれを取っていったんだ!!!あれを手に入れるために、組織が何年もの間準備をしてきたんだ、今、全て水泡に帰してしまた!!!」
彼は言葉を重ねるにつれてますます興奮し、最後に剣を抜き、池の水を一振りで空高く跳ねさせた。
彼は雨となった池水を浴びながら、だんだんと冷静さを取り戻した。
「だめだ。この計画は組織が何年もの間入念に準備したものだ、私の一環で失敗するわけにはいかない。どうやら人情やコネを動かして、組織から何か借りてこなくてはならないみたいだ。ああ、このままでは評価が下がってしまうな」
「でも、これは全て神に仕えるための努力だ」
男は信仰に満ちた狂信的な眼差しを浮かべていた。
「すべては異端を滅ぼすために」
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