第15話 初陣①

 トロールの高さは約5メートル以上あり、太っていて、筋肉質で、浅黄色の肌をしていた。手と足は広く、手には5本、足には4本の指があり、大きなカエルのような外見をしていた。頭が大きく、口も大きく、鋭い黄色い歯がそこから生え、人肉を引き裂くのは造作もないことだろう。小さな目は深くくぼんでおり、まゆ毛は長くて密集しており、2匹のふかふかした毛虫のようだ。全身からは悪臭が漂い、思わず数歩後退してしまた。


 トロールはのろのろと水の中から出てきて、欠伸をしながら周りを見渡すと、我々を見つけてしまった。我々を見ると、大量の唾液を垂らし始めた。


 あ~気色悪いわ~


 皆、一瞬間にして武器を取り出し、トロールに向かって狙いを定めた。しかし、突然の異変に対し、父親の顔には深刻な表情が窺えなっかた。

 トロールは、訓練を受けていない普通の個体であっても、人間が敵わないほどの腕力や、重甲に匹敵する皮膚、強力な回復力を持ち合わせている。レベル3の騎士であっても、苦戦を強いられることがある。


 無論、それは1対1の場合だけだ。


「ステファン!!!ここに巨魔が現れた!お前は一人で応援に向かってこい!!!ハーランド、お前は外側で援護射撃をしろ!他の人は2人一組になって、敵の視界を混乱させるんだ!」と父親は、短時間で迎撃の決定を下し、ステファンを呼び戻し、戦闘に臨むよう指示を出した。


 私はコントロールや調整には少し天賦があるかもしれんが、戦いのセンスは普通の人と変わらない。漫画や小説のように戦闘中に成長して、強敵を打ち破るという展開は多分一生できない。私のように『命の種』をまだ凝縮できていない身体が、一発でもくらえば、直ちに光の主にお会いに行くか、戦局を引きずるだけのお荷物になるでしょう。


「槍をくれ!」と私は、予備武器を持つ兵士に叫んだ。そして、腰につけていた剣も一緒に腰帯ごと横に投げ、木柄鉄先の長槍を手に取った。


 私は近接戦闘にはあまり長けていないため、剣の練習だけでなく、長槍や弓矢の練習にも専念していた。特に、長槍は長さの利点を生かして近接戦闘で活躍するだけでなく、投擲もできる。一度、私が投げた槍の先っぽは巨大な岩に深く突き刺さり、その岩に巨大な亀裂を生んだ。槍を引き抜いたとき、先端は凄まじい衝撃でひどく損傷していることに気づいた。その時、私は槍を極めることを決意した。

 無論、後で父親にこっぴどくに叱られ、貧しい独立用の資金から先端を再購入する費用が差し引かれた。


 私は少しトロールから距離を取った。一つは、突然の襲撃を防ぐためであり、二つは、飛距離を伸ばし、威力をより強くするため。

 予備武器を持っているのと、私を守るために配置された2人の兵士を除き、残りの兵士たちは2人一組になり、長槍でトロールを脅かし続け、その注意を引き付けている。父親は両手で騎士剣を握り、トロールの注意がそちらに向かっている隙に、その脚を狙っている。


 トロールに持続的なダメージを与える火の松明などがない場合、下肢を斬断して動きを遅らせ、頭の位置を下げて、切り落とすことが効率的な倒し方だろう。トロールについてあまり知らない状況で、心臓を見つけられるかどうかは別として、厚い皮膚と強力な回復力があるため、剣を突き刺しても、心臓を刺すことができるかどうかは博打に等しい。むしろ、脂肪と筋肉に阻まれて剣が取り出せなくなる可能性の方が高い。

 父親が軽く攻撃した後、彼は攻撃を続けず、すばやく一歩後退した。兵士たちは再びトロールの注意を引き、ステファンが到着した後に攻撃を進めるためだ。トロールの傷口が急速に癒えているため、今すぐ全力で攻撃を仕掛けると、『命の種』を持たない兵士たちの方が先に崩壊するかも知れない。


 適切な距離に到達した後、右手で槍の柄を握り、全身の力を集中して、走り出していく。槍を投げる前の数歩で、「退け!!!」と大声で叫びながら、腕を稲妻のように振り、長い槍をトロールの方向に放り投げた。


 父親と兵士たちは私の叫び声を聞き、本能的に後ろに急いで撤退した。彼らは私の投擲の威力を見たことがあるので、肉の塊と内臓と排泄物の混合物になりたくない一心で、全力で逃げようとした。


 トロールはまだ何が起こったのかわからず、先ほど自分の周りにうろついていた蠅どもが、後ろから来た大きな声と共にどこかへ消えてしまったのかと思っていた。しかし、長い槍が急に現れ、自分のお腹に突き刺さった。まだ何が起こったのか理解しきれないまま、槍は右下腹から突き抜けて背中から貫通した。トロールは痛みで涙を流し、大声で怒鳴りながら苦しそうに悶えた。

「グオォォォォォ!!!!!」

 トロールが怒号する中、父親はトロールの背後に忍び寄り、膝を剣で斬りつけた後、すぐに後退した。

 トロールは怒りを露わにして大きな腕を振りかざしたが、その攻撃は空振りで終わった。父親と兵士たちは、これまでの戦術を継続して、消耗戦を展開した。

 一方で、私は第二次攻撃の準備を整えていた。

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