第14話 現場調査
三日後、父親はストラヴァン、私、20名の兵士、数人の従者を連れて、噂に聞く池へ向かうため出発した。
その前に、私たちは使者を北のフィッシャー騎士領に緊急派遣し、この行動の目的を通知し、不必要な誤解を避けた。出発の2日前、私たちはフィッシャー騎士領からの返信を受け取り、彼らはこの状況について何も知らないと表明し、情報共有を希望していると伝えてきた。必要なら、フィッシャー領も軍隊を動員してこの事件を調査することも辞さない考えだ。
士兵たちの体力と衝突の可能性を考慮して、私たちは急いで進むことはなかった。太陽が沈みかけた頃、私たちは池から最も近い村に到着し、その村の最大の家を徴用し、暫定的な拠点とした。
自分たちが持参した食料を食べた後、父親は隣にいた従者に部屋を出てもらうよう合図し、次の日の計画を私とステファンに真剣に説明し始めた。
「明日、ワシとステファンは各10人を率いて池の調査に取り掛かる。ステファン、外側から調査を開始し、周辺にも奇妙な現象があるか確認してれ。ハーランド、明日はワシの傍について行き、むやみな行動を慎むように。何か質問はあるか?」
「お父様、質問があります」
「何か、ハーランド?」
「もし私たちが対処できないような状況、例えば、強力な魔獣や罠に遭遇した場合、どうすればよいのですか?」
「うーん、もしそのような状況が本当に起こった場合、兵士たちを盾にして、できるだけ早く撤退しろ。同時に、もう一組にも大声で警告し合うように」
「了解しました」、私とステファンは頭を縦に振り、了承した。
「よし、他に疑問がなければ、今日は早めに休んで、明日のために体力を温存しておいてくれ」
私とステファンは同時に父親の部屋を出て、それぞれの部屋に戻った。
ベッドに横たわり、私はこの件の始末について考え始めた。
とある兵士が休暇から戻ってきて、父親に報告するまで、私たちはこの事について知らなかった。
つまり、この兵士の前回の休暇中には、この奇妙な現象は存在しなかったはず。フィッシャー卿の反応から見て、彼らの言い分が真実かどうか知らないが、この件には全く関与していないようだった。
では、原因は何だ?以前の兵士の説明によると、この池は河川や雨水の堆積ではなく、地下水からの源流である成り立っている。他の場所から川を下ってくることは不可能である。
これまで元々そこに存在していた何かがあるとか?
最近になって、何かが起きたて、その何かに変化をもたらしたのか?
その契機は何だ?
もし異変を引き起こすような変化があるなら、父親はもっと早くに気づいていたはず。一兵士の報告を待つような事態にはならなかったはずだ。
邪神や神など、神秘的な力の影響を受けているのか?
しかし、この周辺の村人たちは一般の人々で、前世の人よりも体質が弱くなっている。もし本当にそのような力があるなら、この周辺地域の地図をすで書き換えなければならないはずだ。
あとは、人為的要因が考えられか。しかし、ホフマン男爵領は地味で小さな領地。この規模の領地は、デラバ王国に何万、とまで言わないが、何千はあるはずだ。なぜこんな小さな領地に狙いを定める必要があるのか理解できん。
まあ、とにかく明日現地に行って、何か有意義な手がかりが見つけられることを祈ろう。
翌日の朝、私たちは20人の兵士を連れ、噂の池があるという森の近くに到着した。父親はステファンに指令を出したあと、ステファンは10人の兵士を連れて森の周りを離れた。その後、父親は私に向かって「ハーランド、ワシについて来て」と言い、小隊を率いて森の中に入った。私は父親に続き、森の中に踏み入れた。
私たちは前に3人、中央に4人、後ろに3人の隊形で進んでいた。私と父親は中央にいて、周囲に予期せぬ状況が起こった場合に備えて対処できるようにしていた。
林の中の野道を通り抜け、柔らかい土地の感触を足元で感じていた。両側の小道には青い草が茵のように広がっており、オレンジ色のスカシユリ、深紫色のバイオレット、真っ白なユリのような、多彩な花々が点在して、太陽の光を浴びて鮮やかな色彩を放っていた。
森林の中には生命力と活力があふれており、木々は高くそびえ立ち、密集して両側に分布して、自然な樹冠を形成し、日光を遮って涼しく心地よく感じられる。
木の上には、小鳥たちが遊んでいて、喜ばしい鳥のさえずりを発しているようで、この美しい春を祝福しているかのようだ。
ここは自然と調和し、美しい世界だ。ここに入ると、すべての悩みが消え、身心が完全にリラックスするような気がする。
地元の人たちがよくここに来るのも頷ける、出来れば調査じゃなくて、バカンスで来たかった。
トホホ⋯⋯⋯⋯
森の奥深く、小道を進んでいくと、曲がりくねった小道に従って、一面の青々とした水が目に飛び込んできた。水たまりの周りには草が茂り、白い蝶々が飛び交っていた。花弁にとまって蜜を吸ったり、水面上を飛び舞ったりと、優雅な姿を見せていた。
父親は兵士のうち6人に池の周りに分散して調査するよう命じた。残りの4人は私たちの左右後方について同行させていた。
私は周囲の環境を観察したが、報告にあったような異常は見られなかった。
私たちはこの周辺を何度も巡回し、午後になっても何も見つけられず、父親は空の色合いを見て、今日は何の手がかりも得られないだろうと感じたようだ。部隊を引き上げ、退散しようとしていたその時、池の中から、突然巨大なトロールが現れた!
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