第9話 初日③
私は父親の動きをはっきりと見えていなかった。気づいたときには、目の前のかかしが木っ端微塵になっていた。
「これが騎士の力だ」父親はどっやと自慢した。
「普通の訓練された兵士が木剣で全力でかかしを攻撃しても、せいぜい引き倒すか飛ばすかだけだ。しかし、超常的な力を持つ騎士は、たとえ初級騎士でも、絶大な破壊力を発揮できる」
私はトラックに撥ねられたかのようなかかしを驚きのまなざしで見つめ、喉の奥で唾液を飲み込んだ。
私は初めて目にする超常的な力に圧倒された。それは、人間が普通に持っているはずのない力であり、私の常識を超越していた。
このような力を身につけることが出来れば、私の目標――生き残ること――に近づける確率が跳ね上がるはずだ。
「お父さん、すごい!私もお父さんみたいに強くなりたいです!」私は父親に興奮しながら、早く早くと迫った。
「ん?ははは、もう我慢できなくなったみたいだな。」父親は私の切羽詰まった様子をケラケラと笑った。「しかし、そう急がなくてもよい。ワシが一から手取り足取り叩き込んでやるからな」
父親は木剣を腰のベルトに挿し、私の前まで歩き寄り、しゃがんで、右手を私の胸の前に置いた。
「まず、『命の力』の存在を感じることを学ぶ必要がある。『命の力』を感じ取れなければ、修行する意味がない、『命の種』を凝縮できないからな。しかし、心配しなくても大丈夫だ。ワシが先導して、感知しやすいようにしてやる。さあ、目を閉じて、自分の内側に集中するんだ」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「!!!」
私は父親の指示に従って目を閉じ、自分の体内の変化に注意を集中した。すぐに、暖かい流れが私の胸から湧き上がり、無数の小さな魚如く、私の体内を通って『命の力』を全身に伝達しているようだ。この流れはさっきの反動でダメージを受けた箇所でしばらく停滞し、まるで波が砂浜を洗い流すように、私の腕の痛みを徐々に消していた。
私は驚いて目を開け、父親を見つめてた。彼は頷き、私が第一段階をクリアしたことを示しました。
「良くやった。もう生命力を感じ取れるようになったんだな。さっきはワシが自分の『命の力』を使ってお前の体内の『命の力』を刺激しただけだ。それで、『命の力』が活性化されたんだ。何か感じたことはあるか?」
「温泉に入った感じだよ。熱いお湯が体に流れ込んで、先程はチクチクしていた腕の感覚も取れたんだ。」
「良くやった、それが『命の種』の疑似体験だ。その感覚をよく覚えておきなさい、これから『命の種』を凝集するのに役立つ。『命の種』があれば、あらゆる小さな傷や病気に対抗することができ、さらには老化を遅らせることもできる」
父親は私の胸の前から手を取り去り、私が感じていた温かい温もりも次第に静まって消え去った。突然、私は何かを失ったような喪失感を感じ、その何かを表現することができなかった。私が寂しげな表情をしているのを見て、父親は私の頭に手を置いて、激しく髪を乱した。
「ははは、皆最初はそんな感じだよ」父親は笑いながら私を見つめ、「次のステップは、独りで体内の『命の力』を活性化することだ。同時に、体への負担を増やさず、体力、戦闘、そして乗馬の訓練を行う」
私は頷きましたが、まだ少し不安で、
「もっと練習できないの?」と父親に尋ねた。
「焦るといいことは起こらんよ」父親は私の頭を撫でて、「過剰なトレーニングは身体に悪影響を与え、正常な成長を妨げる可能性もある。結果的に、『命の種』の質を低下させることになりかねない。分かるか?」
私は再び頷き、父親の教えを真剣に聞いれた。『命の力』は貴重であり、私はより多くの力を掌握したいという欲求があるものの、過度のトレーニングは私に不可逆的なダメージを与える可能性があることも知っている。私は父親が教えたように、まず自分の『命の力』を掌握し、その後に自分の能力を高めることにした。
「よし、じゃあ今日の残りの時間は戦闘訓練と乗馬訓練の慣らしのために使おう」
父親は私の左手を取り、訓練場の一角へ向かいながら講義を続けた。
「戦闘は騎士の基本的なスキルだ。各種の武器をどうやって使うか学ばないといけない。人と人の感覚はそれぞれ違うから、同じ剣を使っても違う人が使うと効果も違う。だから、色々な武器を試して、自分が得意な武器を見つける必要があるんだ。あと、長剣と長槍の練習も必要だぞ」
「それは貴族の威厳のためですか?」
「いや、ただ単にそれらの武器が最も一般的なものだからだ。戦場では、武器が損傷したり鈍くなったりすることは日常茶飯事だ。その場合、死体から拾うのがで一番手っ取り早い」
「⋯⋯⋯⋯」
超現実的な理由だった!!!
「乗馬訓練は騎士の特色的なやつだ。乗馬の操縦や世話をする方法、馬に乗って武器や防具を使用する方法、様々な地形や速度でバランスや制御を保つ方法を学ぶ必要がある。これらの訓練はどちらも重要で、また過酷だ。準備をしっかりとしておく必要があるぞ」
「はい!」
「でも、あまり心配しなくてもよい。今日はおおよそ理解するだけで、明日からが本格的な訓練だからな」
父親は笑って、私に緊張しすぎないように促した。
その後、私は武器庫で刀や槍や弓などの武器を使って、どれが一番自分に合っているかを見つけようとしが、ぴんとくるものが無くて断念した。馬小屋に何頭か仔馬がいたが、今日はあくまで見学のため、残念ながら乗れなかった。
初日を終えた後、家族と一緒に夕食を食べましたが、いつも以上に食欲がありました。当然のことです。
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