第8話 初日②

「おっと!いかんいかん、話が逸れたな。話を元に戻そう。


 騎士修行の第2段階は戦闘訓練。これは、戦闘訓練には2つの側面が考慮されているためだ。


 まず第1に、戦闘訓練によって体をコントロールする能力が向上する。『命の種』を凝縮するには、自分自身で『命の力』をコントロールするが必要不可欠、外部の力を借りることもできん。体をコントロールする能力が強ければ強いほど、『命の種』を凝縮するときに引き出せる『命の力』が多くなり、『命の種』の質も良くなる。例を挙げると、ある人の『命の力』の総量が100で、『命の種』を凝縮するときに60%の『命の力』を引き出した場合、その『命の種』の質は60になる。しかし、ある人の『命の力』の総量が80で、90%の『命の力』を引き出した場合、その『命の種』の質は前者よりも高い。


 第2に、騎士は戦う必要がある。手柄を上げるにせよ、家を守るにせよ。優れた戦闘技術は、騎士が生き残る可能性を上げてくれる。したがって、戦闘訓練を通じて、騎士の『命の種』と戦闘技術を向上させ、将来の堅固な基礎を築くことができる」


 なるほどなー。


 身体能力はどうしても種族や環境に影響されるが、自己掌握力が高ければ先天的なハンデも覆すことが出来る。


 そう言えば、エドソンって一見可愛らしいに見えるけど、ザックとステファンに怖がられている?いや、畏れられているのかな?


 確認してみよう。


「お父さん、うちじゃ誰が一番つよいの?」


「なんだ?もうそんなことに興味を持ったのか?」


「うん!教えて」


「ん~、そうだな~」父親は胸の前で両手を組んで、しばらく考え込んだ。


「ワシが今一番強いのは事実だ。でも、エドソンはもうすぐワシを追い抜くだろうな。ワシはレベル4に行き詰まって、どうやって突破するか見当もつかない。だけど、エドソンはレベル4の一部を手に入れている」


「へ~、エドソンお兄さんってすごいんだね!」


「あはは!ワシの子だから同然だな!あはは!!」父親は誇りながら、ケラケラと高笑いした。


「あはははは!!ケホケホ!!」


 笑い過ぎだ!


「ああ、すまんすまん。じゃあ、騎士修行の話を続けよ。


 最後のステップは乗馬訓練だ。このステップは『命の種』を凝集することとは関係ないが、無視できないものだ。騎士の乗馬訓練は戦闘能力を高めるための重要な一環で、主に騎士と騎乗動物が協力して行う突撃が彼らの最大の武器だからだ。この攻撃方法は自分の身体能力の数倍ある敵に対しても、有効な大ダメージを与えることができる。だから、騎士は乗馬訓練を通していくつかの能力を向上させなければならない。


 まず、乗馬訓練は騎士が騎乗動物を制御する能力を強化することができる。騎士と騎乗動物の息が合っていれば、騎士は騎乗動物の特徴をより活かして、戦闘中に騎乗動物を自在に使うことができる。


 次に、乗馬訓練は騎士のバランス感覚と反応能力も高めることができる。騎士は騎乗動物を操りながらバランスを保ち、いつでも予期せぬ事態に対応できるようにしなければならない。これは戦闘中の彼らのパフォーマンスにとって非常に重要だ。だから、乗馬訓練は騎士修行に欠かせない一環で、騎士の戦闘力を大きく向上させることができる。


 ハーランド、何か問題があるか?」


「ないです」


「じゃあ、今日の最初のレッスンは、まず「命の力」のすごさを感じてもらう」


「さて、説明は以上だ。では、このかかしを相手に戦闘訓練を始めよう。」と、父親は隣に立っているかかしを叩いて、握っていた木剣を私に渡した。


「このかかしを全力で斬りかかってみろ」


「はい!」


 差し出された木剣を受け取り、両手で木剣を握りしめ、力いっぱい上に振り上げ、そして激しく振り下ろした。体は剣の動きに従って、足を踏み出し、かかしを真っ二つにしようとした。


「ああ!」


 気合を入れて大声で叫び、全身の力を込めて、木剣を振り下ろした。かかしに当たった木剣の衝突音が響き、腕も震えた。私は自分の腕が震えているのを感じ取った。


 顔を上げてかかしを確認すると、木剣が当たった部分は少し凹んでいたが、よく見ないと、その傷はわかりにくかった。


 父親の方を見ると、彼は満足そうな表情をしていた。


「気勢がいいな、ハーランド。


 ザックたちが初めて挑戦した時は、こんな気勢なかったな。


 でも、ひとつ覚えておきなさい。堅い木は折れる。全力で攻撃するのはいいことだが、自分を傷つけることもある。


 ワシが手本を見せてやろう」


 父親は私の木剣を受け取り、かかしの一歩手前まで移動し、木剣を持ち上げた。すると、右手が突然消えた。次の瞬間、風を切る音共に、かかしは右手の軌跡に沿って、木っ端微塵になった。


「どうだ、ハーランド?」


 父は散らばったかかしを見もせず、私に顔を向けて、口元をわずかに上げて自慢げに言った。





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