第4話 状況把握

 己を知り、敵を知れば百戦危うからず。


 生き残るためには、まず情報を掌握することが必要不可欠。


 父上の書斎には、役に立つ情報が少しでもあることを願っていますよ~


 結果から言えば、情報はめったになかった。


 まあ、予想はしていた。男爵は貴族であるが、下位の貴族に過ぎず、代々伝わる知識もそれほど多くはない。


 中央や州の政治的な駆け引きに参加する力もないから、一般的には自分自身に関連する伝承や情報しか記録していないケースの方が圧倒的に多い。


 それでも、役に立つ情報が幾つかあった。


 まず、王国に関すること。王国の正式名はデラバ王国。大陸北部の人間国家の中で最も強力な存在であり、人間国家全体でもトップ5に位置する。


 しかし、数十年ごとに北方の獣人帝国に繰り返し侵略されている。王国はその度に、頑固な長城、分散した砦、そして全国総動員による巨大な軍隊によって、他の人間国家の支援を届くまで持ち堪える。


 他国の援軍と合流した後、再び北伐を行って失った領土を奪還してきた。平時でも国境付近の小競り合いは途絶えることはない。


 獣人帝国は、5つの獣人皇族によって共同統治されている。皇帝は10年ごとに交代し、交互に就任するらしい。


 50年以上前、獣人帝国の1人の皇帝が侵略戦争を発動し、北部領土を大規模に占領した。この戦争は過去に見ないほど激烈極まり、人類の国々が援軍を派遣しても、北部領土を奪還することは叶わなかった。


 王国は北部の多くの領土を失いましたが、それによって戦略的に撤退を実施し、隣国の2つと国防負担を共有することを実現した。


 前回の戦争で、王国は大きな損失を被りましたが、うちの領地はあまり影響を受けてなかった。


 ホフマン男爵は東南の州に居住しています。この地域はほとんど平野であり、肥沃な土壌と温暖な気候に恵まれ、十分な日照と雨水の資源を持ち、王国の重要な穀物生産地の1つに名を連ねる。


 毎年春と秋には収穫期があり、好条件の場合にはさらに収穫期が追加され、領主たちはより多くの収穫を得ることができる。


 戦時総動員が起こるたび、東南地方の貴族たちは後方支援に関する任務を負う。食糧、軍需品など関連する物資の収集と、前線への輸送を担当する。直接的に戦争に巻き込まれることは基本的になく、獣人による侵攻が自分たちの領地にまで及ぶ場合を除いては、戦争に直接的に関与することはない。そのため、常に戦時経済にある北部地方に比べ、東南地方は比較的裕福である。


 自家の領地の規模は一般的な男爵領とほぼ同等であり、人口の数は農業生産の豊凶によって変動し、通常は数万人程度。経済モデルは基本的に小農経済で、他に特殊な経済産物はなく、貿易活動もほとんどない。


 何故なら、領地内で生産される経済作物が周辺の領地と類似しているのと、各貴族領地を通過するたびに通行税を納める必要があるため、商人は自然に利益のない地域を避けるようになる。もしホフマン男爵家に需要がある場合は、交通の要所にある都市に向かって購入に出かければいいだけの話。


 はあ~

 予想以上に酷い状況だ。


 ホフマン男爵家は直接的には戦争に巻き込まれないかもしれないが、実質家督を継げない四男として、徴兵されて戦争に参加する可能性が極めて高い。


 貴族の地位は国に対しての責任を果たしてこそ確約されるもの。その責任を果たさない場合、貴族位の剥奪もあり得る。逆に責任さい果たせば、例え一族の生き残りが赤ん坊でも、継承権は残される。最悪、当主一家が皆殺しにされても、遠縁の者が領地を継承する。


 まあ、全滅した一族はどう思うか知らんがな。


 さって、これからどうしたもんかな~

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