第2話彼女のブラコンぶり
「何でそれを……そのこと、知ってんのよ。誰にも知られてない筈なのに……もしかして、ストーカーしてるんじゃ——」
「違っ違うって、いや違いますよ……お兄さん、数樹さんから聞いたんです」
俺は嫌悪感と警戒心を滲ませた表情を浮かべる女子——松原遥那の誤解を否定し、安心させようと彼女の兄の名を口にした。
「えっどうしてかずにぃ……お兄ちゃんの名前があんたなんかの口から……」
彼女の表情には怪訝さが増していた。
相変わらず尖った口調の彼女だった。
「バイトが数樹さんと一緒で、それで松原さんの——」
「軽々しくかずにぃを名前で呼ぶなーッ!かずにぃを……わ、たしの、かずにぃをあんた如きが名前で呼ぶな」
普段の様子からかけ離れた程に殺気だった彼女が声を荒らげつんざくような叫びをあげた。
「……ご、ごめんなさ、い。気に障ることを言って、ごめんなさい……」
「はぁーはぁー、ふぅふぅ……」
口と鼻から荒い息を吐く彼女に、思わず後退りしてしまう。
睨みを効かせながら、
「えっとその……松原さんのお兄さんに、頼まれたんです……松原さんを兄離れさしてくれないかと」
「……か、かずにぃが、そんなこと……」
放課後の教室は俺と松原遥那の二人だけである。傾き眩しい夕陽が教室内に差し込んでいる。
グラウンドや体育館からは威勢のある運動部の声が聞こえる。
彼女と向かい合い、数々の罵詈雑言を浴びせられた俺は傷心しきっていた。
松原遥那のブラコンぶりは相当に深刻だった。
数樹さんを名前で呼ぶなって……それなりに彼とは親しいのだけれどなぁ。
俺がブサイクだからなのか、俺以外でもそうなのか……?
早く帰りたい……けれど、ノルマは達成しておきたい。
こ、怖すぎる……この
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます