第3話我がもの顔で自室で寛ぐ女子
「コウちゃん、帰ってきてからずぅーっと浮かない顔してるけどなんかあった?ウチで良ければ、話くらい聞くよぅ〜」
「……あぁ、いやぁー何でもない。ってかぁッいつまで寛ぐ気だ!ここでぇッッ、おれの部屋でぇッッ柚葱菜はよぉッッ!」
俺の太腿に頭をのせ、見上げながらご満悦そうな表情を浮かべながらリラックスした柔らかい声音で提案してきた
「うわぁ、いやぁっ唾飛んできたー。汚いよぅーコウちゃんサイアクぅ〜もうぅ」
大袈裟なリアクションで非難する仲嶺にゲンナリし、深いため息を吐く俺。
「はぁー、なんかのアニメで繰り広げられたシーンを再現してるみたいなのはやめろってぇ……」
「ああ〜夏がやってくると観たくなるあのアニメのことぉ〜?」
「自覚しながらやってのけるとは流石だな、柚葱菜氏よ」
「えへへぇ、それ程でもぅ〜」
褒められたと勘違いした彼女が膝枕をされたままの体勢で口許を緩めながら照れる。
「褒めてんじゃねぇッ!呆れてんだよ、俺はッ!」
「ええッッ!?褒めてたよね?呆れてる風な感じじゃなかったじゃんッ!?」
「はぁー、全くコイツって奴は……馬鹿すぎんだろ、おまえ」
「コイツやおまえと呼んだ挙句に……バカって。バカはどっちだよ、コウちゃんッッ!テストの点が高いのはウチだよッ、コウちゃんなんて赤点いくつよッ!」
「ぐぬぬぅっ……そ、それは、その……とっとにかくぅっ、柚葱菜は馬鹿だってぇの!」
痛い所を突いてこられ、低く唸り、狼狽えずにいられなかった。
「ああーッッ!いつものだぁ〜コウちゃんのズルぅー!」
「ぁあぅっ、あぁぅ……ああっ……」
駄々をこねる子供のように大胆に身体を動かす彼女で、太腿にのせる頭をぐりぐりとめり込ますように動かれるので声にもならない呻き声が漏れるのだった。
彼女に強要されていた膝枕から解放された俺は、ブラウスを着直した彼女に左頬をつねられていた。
「言ってよ、コウちゃん。気になったウチから逃げられると思ってるの?」
「……ませぇん」
ベッドの上で正座をさせられ、片頬をつねられている状況は本日だけではない。
過去に幾度か現在の状況に陥っている。
放課後になると俺の自室が、彼女に占拠される。高確率で。
要するに、俺の自宅——一宮家の一宮浩介の自室は彼女が入り浸る一室となっている。
俺と離れたくがないために同じ高校を受験した彼女である。
彼女が俺にそれほどの執着するのが理解できずにいる。
確かに、中学時代の彼女は他の女子に比べ距離感は近かった。
肩が触れ合うことなんて幾度もあった。その割に俺に対して恋愛的な発言は一度もない。
好きだとか愛してる、付き合おうといった発言を彼女の口から聞いたことがない。
「聞かせてくれる、コウちゃん?」
「は、はいぃ……」
渋々ではあるが、放課後に交わした彼女とのやり取りをぽつりぽつりと話した。
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