22.動物まみれの集落

 カイルは盛り土で出来たお墓をしばらくじっと眺めてから、集落の中に人がいないか探し始めた。集落内のどこを歩いても見当たらない。


「やっぱり、いないなぁー!どっかに行っちゃったんだな」


人気がここに来ていないのを気づいていたが、暇だったので、集落の中を歩き、探してみたが、カイルの予想通りだった。そうこうしているうちに、夕暮れに近づいてくる。人気がない集落は不気味だったが、夕暮れに近づき、薄暗くなると、さらに不気味さが増してくる。カイルはそういう雰囲気は気にしない性格なので、平然としていた。盛り土のある広場に戻り、地べたに座り始める。その広場は血生臭さが少し残っていた。


「今から帰ると、その辺で寝ないといけないし、何か面倒くさいから、誰かここに来るのを待つか」


あのミサイルの爆発に気づいて、こっちの方に誰かが来る可能性があると考えたことによるものでもある。お腹が鳴ると、立ち上がった。


「飯の時間だ。あのスープまた飲みたいなぁー!」


揚陸艦の食堂で出されたスープのことを思い出していた。しかし、あの食堂のような環境はこの地には皆無である。食料は一人であるならば自力で取らざる負えない。カイルは腕を上げ、手を開いた。


「おいでぇー!!」


この言葉による効果はないが、自分の気配、存在を周辺に放ち、剥き出しにしている。手を上げながらやるのも、効果を増大させることにある。しばらく続けていると、遠くの方からカサカサと音が聞こえてくる。


「来たなぁー!どんなやつだぁー!」


集落に入り、カイルに近づいてきたのは、草食型の動物だった。しかし、剥き出しにしたままなので、一匹で済まず、複数匹やってくる。カイルはそれを気にせず、動物を狩っていく。


「いただきまぁーす!」


適当に選んだ動物の身体にそう言いながら手を触れると、力が抜けたように倒れていった。


「お前の命は無駄にしない。骨以外は全部喰らってやるからな!」


集落内の住居にある火打石を拝借して、火を起こす。ついでに拝借した刃物を使い、動物を解体していく。


「こういうのは、ナナミがうまいよな!やっぱり!」


解体して、切り分けていくが、どれも雑でいびつだった。


「まぁー、いいや!」


解体した肉をその辺で見つけた木の棒で串刺しにして、火の中に入れた。ちょうどよく焼けると、火の中から取り出し、かじりついていく。カイルは自分の存在を剥き出しにしたままなので、気づけば、集落内は動物たちでたくさんいた。解体した肉を全部焼いて食べ終わると、火をそのままにして、屋根の上に登る。火の回りに動物たちが集まっていく。


「なんか面倒くさいことになった。もうやめないと!」


剥き出しを止めるのを忘れていたので、もう止めたが、すでに手遅れで集落の中は火を中心として動物で溢れかえっていた。辺りは完全に暗くなると、動物たちの数は少し減ったが、鳴き声と糞尿で集落は滅茶苦茶になっているが、それに動じることなく、カイルは屋根の上で寝っ転がりながら、星空を眺めている。動物の鳴き声と糞尿の中、いつのまにか寝てしまっていた。燃えていた火が消えてから、時間がだいぶ経ち、やがて明け方となる。


「ナナミか?でも違うような」


遠くから速いスピードでこの集落に近づいてくる気配に気づいたことで目を覚ました。ナナミと一瞬感じたが、以前と気配が違うので断定しきれない。


「他のやつだろう!ナナミにしては強い」


そういうとカイルは再び寝てしまった。


                ※ ※ ※


 少し時間が経ってから、急に動物たちの鳴き声がうるさくなってくる。遠くから女の声も聞こえてきた。


「なんなのよ。これは!どうなってんの!」


ナナミの声だとわかり、カイルは目を覚まし、起き上がる。


「ナナミだったか!」


あくびをしながら、ナナミのいる方を探す。見つけると、動物だらけの集落内で動物と格闘している姿が見えた。以前のようにサバイバルナイフで戦わず、素手で戦い、動物を一撃で次々と倒している。


「なんか強くなってないか?ナナミィーーー!」


戦っているナナミに能天気に手を振った。


「おれはこっちだぁーーー!」


カイルの声に気づき、戦いながらも、屋根の上から手を振ってくるカイルを見る。


「やっぱりここにいたのね。これどうにかしてよぉー。カイルのせいでしょ」


動物がこれだけいるのはカイルが原因だとわかっていた。


「がんばれ!今のナナミなら出来る!」


他人事のように言った。ナナミは溜息を着くが、邪魔な動物たちを倒さないとカイルの元へはたどり着けない。


「くさいーーー!!うるさいーーー!!」


動物たちの鳴き声と糞尿の臭さに苦しめられていた。その姿を笑顔で見ているカイルがいる。ナナミはそう連呼しながらも、次々と邪魔な動物たちを倒していき、カイルのいる屋根の下までたどり着いた。


「よし!」

「よしじゃない!」


ナナミはそういうと下からジャンプして一回で屋根の上に登った。これを見るだけでも以前と違い身体能力が上がったことがわかる。早速、屋根に上がると、カイルに近づき、蹴り飛ばそうとするも、そこにカイルの姿はいつの間にか無くなっていて、気づくと後ろを取られていた。


「俺にはまだまだだけど、前より力が重くなった。人間としては限界突破っていうのか?それ、急にどうしたんだ?」

「一発当てられればと思ったけど、やっぱりダメね!カイルは次元が違うもの。統領にキッカケを貰ったのよ」


それを聞き、能天気な顔から一転、顔をしかめる。


「あいつが・・・・」


ナナミは改めて、カイルの姿を見て、思ったことを口に開く。


「どうして裸なの?」

「爆発で燃えちゃったんだ!」


ナナミはリュックを降ろし、中からカイルがよく着ている薄い毛皮の服を取り出した。


「はい!」


薄い毛皮の服をカイルに渡す。渡されたカイルはその服を着る。


「あー、こっちの方が、しっくりくる!」


その言葉が気になったので、ナナミはそれを聞いてみる。


「向こうでは何着ていたの?」

「ピチピチのやつだよ。それより、あいつは俺たちに隠しているな・・・!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る