14.圧倒されるジーナ

 従者の男を不思議な力で気絶させたカイルは、従者の男を鋼鉄の甲板に寝かせ、自分もその隣で寝ていた。一時間強の時間が経つと、日が昇り始め、辺りが明るくなってくると、カイルは目を覚ます。隣を見ると従者の男は鼻息を鳴らし、まだ寝ている様子だった。そして、夜の暗さで見えなかった陸地側の川岸が薄い霧に包まれているもののよく見えるようになった。まず、見えるのはレンガ造りで出来た港町が見え、港には小船程度の船が停泊している。小船に乗りヘブンリバーで漁をしている人々は、この艦が通っていくことに気づくと漁の際中にも関わらずこの艦に向かって崇めるようにお辞儀する姿が見えた。


「こっちも同じか!大したもんじゃないのに」


カイルはその姿を見て、呟いた。そして、この艦に気づかず、お辞儀せず漁をしている人を見つける。同時にこの艦から機械が動く音が聞こえてくると、どこからか発射音が聞こえると、小船は砲撃され、大破した。小船に乗っていた人が大破した小船と沈んでいきそうになるのを見て、カイルは泳いで助けにいこうと立ち上がる。


「私の言いつけを破り、バレス殿にまで危害を加え、さらにあの愚民を助けるつもりか⁉」


ジーナの声が聞こえた。従者の男はバレスという名で呼ばれている。カイルの首をいつでもはねられるようにジーナの剣が声と共に近づけられていた。


「やるねぇー!おはよう!ジーナちゃん」


自分が危険な状況にも関わらず笑顔で能天気に挨拶をするカイル。


「御教えに逆らおうとする卑しい心を持った獣はやはり生かしておけない‼」


ジーナはカイルに殺気を剥き出しにする。


「前にも聞いたような!聞かないような!しょうがないなぁー!」


さすがのカイルもジーナに呆れた顔を見せると、とっさにカイルは、寝ているバレスの剣をすばやく拝借し、剣を片手で握り、ジーナの剣の動きを止めた。


「なぜ?」


ジーナは見たことがない光景を目にする。剣と剣が交わっているはずなのに、刃と刃があたっていなかった。まるで刃と刃の間に何かがあるように。その後、ジーナがいくら動きを変え、刃をあてようとしても交わることがないので驚きを隠せなかった。


「どうして?」

「俺もこれよくわからないんだ。でも、当たったらジーナちゃん死んじゃうと思うんだ」


能天気な顔をしてジーナに言った。実はこれでも加減しているが、ジーナの剣をどうしても押してしまう。カイルはまだ力の加減がいまいちだった。


「ジーナちゃんがそれだと、そろそろ気づかれるよ。落ち着こう!」


そう言うと、カイルは空いている片手をジーナの身体に触れると、ジーナの殺気は次第に収まっていく。そして、ジーナは剣を降ろし、鞘に収める。


「能なしのはずの獣がなぜ、騎士の剣を持て、私の鍛えた剣圧を止められるのか?これでは・・・」


落ち着いて独り言のように呟いているジーナだった。


「ジーナちゃんの剣を握ったらさぁー、光ってプルプルしたんだ。起こすの悪いから、すぐに置いたんだけど。握ってみたおかげかも」

「獣に私の剣を触らせてしまうとは、なんという恥だ!」

「そう落ち込むなよ!大したことじゃない」


カイルが能天気に励まして見せると、ジーナに睨まれてしまう。ジーナはまだ落ち込みつつ辺りの気配を探ってみた。


「そろそろ騒がしくなってきた。ここにも兵士が増えてくるはずだ。私の部屋に戻るぞ」

「そこの人どうする?」


カイルは従者の男ことバレスを指さして聞いてみた。バレスは目が覚める様子はない。


「バレス殿は誰か兵士が起こすはずだ!」


それを聞くとカイルの腹から音が聞こえた。


「おなかすいたぁー!」

「図々しい獣だ!今なら食堂には兵士はいないはずだから、ついてこい!」


カイルとジーナはこの艦の食堂に向かう為に、艦の中へ入って行った。ちなみに、砲撃された船で漁をしていた人はこの艦が通り過ぎてから、近くに漁をしている小船によって救出された。

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