5.一発の銃撃

カイルの言ったことに青ざめる集落の民達。


「神の御使い様がいるのに立つなんて何考えているの?すぐに膝まついて!」


集落の民達が青ざめる中、一人カイルに怒鳴るこの集落のシャーウーがいた。


「統領のお使いでここに来たんだ」


カイルはこの状況に能天気に説明する。


「よそ者か?何てことをしてくれたんだ!」


この集落の統領は怯えながら言った。浮遊物体に乗っている男はカイルに邪魔され怒り、邪魔をした張本人に銃口を向けた。


「獣ぉーーー!」


レーザーが発射されると、まっすぐカイルに直撃するコースだったが、カイルはさっきと同じように人差し指のみで再び弾いて見せる。弾かれたレーザーは男が乗っている浮遊物体に直撃した。そして、当たった数秒後くらいに、煙が出始める。


「あにさまぁー!あにさまぁー!煙がぁー!」


同じく浮遊物体に乗っている妹が煙を見て、心配した。しばらくして、男の乗っていた浮遊物体は浮遊しなくなり、地面にボトッンと落ち、身体が投げ出される。


「獣の土地に触れたら病気になる。助けてくれぇー!」

「大げさだなぁー!騒ぐことじゃないよ」


騒いでいる様子を眺めていたカイルが落ち着かせようした。すると、後ろに控えていた従者の男が出てくる。


「お前たち、獣と違って、聖なる身体であらせられるのだ!命を持って償え!」


従者の男は、病気になると転げまわる男を抱きかかえた。抱きかかえられた男はカイルに恥を欠かされたことに怒りが満ち溢れている表情を見せた。


「おい家畜!この獣達を皆殺しにしろ」


抱きかかえられている男に鎖で繋がれている家畜の男に言った。


「獣の分際で兄様をこんな目にぃー!」


浮遊物体に乗っている妹も怒り、膝まついている集落の民に対して無差別に鞭を打つ。


「逆らってはダメよ!受け入れるの!耐えて!」


この集落のシャーウーは集落の民に神の御使いに何をされても、我慢するように必死に声をかけた。そして、当然この一部始終を隠れて見ていたアンとナナミも、特にナナミはアンに止められ必死に堪えていたが、限界が来てしまう。リュックにしまってあったショットガンを取り出し、鞭を振う女の胸の辺りに照準を合わせる。


「ただじゃ済まないよぉー!」


アンは泣きながらナナミを止めようとすると、ナナミはアンに振り向いた。


「アンはここから離れて逃げて集落に戻って!もう、これ以上理不尽を見過ごすことは出来ないの。だから、あなただけでも生きて戻るの」


ナナミは集落の民に鞭を振い続ける女の方を再び見て、今まで見たことのない凛々しく強い意思を持った顔をアンに見せる。


「私は人々を護る自衛官だった。この世界に来てもそれは変わらない。私の目の前に理不尽に合い、奪われそうな命があるなら、命を賭けて護るのが私の使命!」


覚悟を決め、鞭を振う動くターゲットに対して、うまく照準を合わせ、ぶれないように心を一旦落ち着かせ、ゆっくりと引き金を引いた。


                ※ ※ ※


「家畜!二足歩行を許す」


四つん這いだった家畜の男は従者の男に抱きかかえられている飼い主に許され、立ち上がる。


「やれ!」


家畜の男に命じた。


「お前たちとは同類みたいなものだが、俺が生きるために死んでもらう!」


家畜の男が膝まついている集落の民に殺害予告をする。


「困るよ!俺のお使いが果たせなくなっちゃうよ」

「早く獣どもを殺せ!」


飼い主に催促される。


「邪魔をするなら、お前から殺す!」


そう言うと、家畜の男は殺すためにカイルに襲いかかった。


「本気みたいだ。俺はそれを受け入れるよぉ!」


カイルは殺気のある攻撃に対して、かわすことや反撃することなくパンチや蹴りなど普通なら喰らえば死んでしまいそうな攻撃を一通り受けるが、軽い傷程度で地面に倒されるが、再び立ち上がる。そのありえない姿に家畜の男は唖然としてしまい、声が出なかった。


「わっ!擦りむいちまった。痛い!」


カイルは擦りむいて痛いところを手でさする。


「お前、満足か?」


家畜の男を見据えた。


「そんな獣のガキ早く殺せ!もたもたしていると、お前も殺すぞ!」


飼い主の男は家畜の男にレーザー銃を向ける。飼い主の男を抱きかかえている従者の男はこの一部始終を見て、「この家畜では、殺せない」と心の中で思った。


「申し訳ありません。すぐに殺しますので!殺さないで下さい」


家畜の男は怯え、飼い主の男に命乞いをすると、捨て身でカイルに全力で突撃する。


「よいっしょ!こんな感じだったかな」


突撃する家畜の男に対して、カイルは柔道の技のごとく投げ飛ばしてみせた。さらに、動けないように抑え込みもする。


「ナナミに教えてもらったジュウドウってやつをやってみたけど、使えるなぁー!」


技が成功して能天気に笑顔でカイルは呟くが、家畜の男はそれでもカイルを殺してこようと抵抗し、暴れる。抑えながらカイルは男の目をのぞき込むように見つめた。


「もういいんだ!後は俺が引き受けるから」


すると、暴れていた家畜の男は、不思議と大人しくなった。カイルは抑え込みを解くが再び暴れる様子はないので、立ち上がる。


「役立たずの家畜がぁー!よくも余に恥をかかせてくれたぁー。死ぬがいい!」


飼い主の男は発狂し倒れている家畜に銃を向けてレーザーを撃った。家畜の男の前に立ちはだかり、避けることも、弾くこともせずに身代わりになりレーザー光線の直撃を受ける。少しして当たった所から血が流れ出てきた。それを見た飼い主の男は表情をニヤッとする。


「ちょうどいい!」


集落の民に鞭を振い続けている妹に声をかける。


「この獣でお前の儀式を終わらせてしまうんだ!」

「はい!あにさま」


自分の兄の言ったことに、妹は笑みを浮かべた。と、その時に銃声が聞こえると妹に一発の銃弾が飛んでくる。それに気づき、後ろに控えていた従者の女は自分の剣を鞘からすばやく抜き、剣を盾にすると飛んできた銃弾は潰れて、ポトンっと地面に落ちた。すると、すぐに銃弾が放たれた場所を特定し、斬り殺しに行こうとすると、再び銃声と共にもう一発の銃弾がこちらに飛んでくる。従者の女が一発目と同じように止めようとすると、血を流しているカイルによってすばやく弾かれた。

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