3.謎の石積と壁画

 カイルが木の下に寝転がってしばらくして時間が経って、再び目的の集落に歩き始める。夕暮れ近くになってきたので、夕食の食料と寝床をどこにするか探すことになった。


「食料は俺が獲ってくるから。寝床探しといて」

「私が食料を獲ってきて良い?」


カイルは否定せず、ナナミを見る。


「女性が狩りにいくのは、神の御教えに背くことになるからまずいよ!」


アンは不安な顔でナナミが狩りに行くことを止めようとした。


「この辺は俺たち三人しかいない。ナナミなら大丈夫だろう!」


改めて、狩りはナナミに任せ、自分とアンは近くに寝床になるそうなところを探すことになった。すると、ナナミは背負っていた迷彩柄のリュックから刃が太いサバイバルナイフを取り出す。集落では神の御教えで女性の狩りは禁止されていたが、人目から離れてしまえばそんな縛りもなくなる。そもそも、ナナミにとってこの世界の神など関係なかった。


「いた!」


ナナミは一匹の草食動物が視界に入ると、気づかれないように獲物に近づいていき、そして狩りを始めると、ナナミの雰囲気も変わった。


「逃がさないわぁー!」


気性が激しくなり、逃げる獲物を追いかけ、サバイバルナイフで容赦なく仕留めようとする。ナナミの姿は狩りを楽しんでいる様子だった。


「おわりよぉー!」


ナナミは獲物の急所をサバイバルナイフで刺し斬った。返り血がナナミの着てる服に着くが、ナナミは気にすることなく、絶命した獲物をサバイバルナイフで、躊躇することなく笑みを浮かべた表情で解体していく。


「ナナミ!自分に気をつけないと、に飲み込まれるよ」


カイルが獲物を解体しているナナミの後ろから声をかけ、自我を失わないようにアドバイスした。


「大丈夫!わかってる」


ナナミは落ち着きを取り戻し、リュックに入っている同じ迷彩柄のタンクトップに着替え直した。汚れた服は、近くの川で手作業で洗い、その側で解体した獲物の肉を火打ち石で火を起こし、三人で分けて食べる。


「寝床はここから近いの?」


夕食を食べていると、ナナミは寝床のことをカイルに聞いた。


「大きい石が積み重なっているところにさぁー。人が数人入れる穴を見つけたんだ!」

「そこ大丈夫?崩れない?」


ナナミが珍しく心配を口にする。


「俺がいるから問題ない!心配すんな」


やがて、夕食を食べ終わると三人は寝床のある方に向かった。そこは30分もしない所にある。大きな石積みの穴の中に入り、どんな感じなのか見回ると、ナナミは石の壁に刻まれている絵に気づいた。


「この絵は?」


夕暮れで薄暗く何とかみえる。その絵は赤黒く、円盤のような物体に人間が崇めている姿のようだった。


「円盤!どういう意味なんだろう?」


ナナミはこの円盤に何か引っかかっている様子。


「俺もアンもよくわからないんだ。ナナミはわかるのか?」

「この丸い物体が気になるのよ」

「あのおばさんに聞いてみれば、わかるんじゃないか?」


カイルはシャーウーならこの意味が何なのかわかるかもとアンに言うと、アンはうなずいた。


「この石積みがそもそも何なのか?ってところよ」

「この辺を人が住処にでもしていたんだろう。その時に作られたんじゃないか?」

「でも、今、人がいないってことはこの辺に何かがあっていなくなってしまったってことかも」


カイルの推測に、さらにナナミが推測を発展させる。


「この辺はあまりいい感じがしないの」


アンは少し怯える表情を見せた。


「まぁーな!でも、気にするな。寝れば関係ないよ」


やがて、辺りは暗くなり、夜に入ると三人は寝た。しかし、カイルは二人が寝静まった頃に起き上がり、石積みの上で満天の星空を眺めていた。

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