第2話 動く宿

2人はモンスタウンの外れへとやってきた。

「ここら辺はまだ被害が及んでいないようだな」

小鳥や虫が飛んでいて、どう見ても平和だ。ロックは言った。

「もう夜だろ。俺の友人が宿屋をやってんだ。今回はそこで泊まろう」

「ねぇロック。モンスタウンってどんなところなの?」

「ああそうか。モコローは初めて来たのか。モンスタウンは、ここ、モンスターの中心地。半径10kmの、めちゃくちゃ広い地域で、自然と文明が混ざりまくってる、なんか中途半端な場所だ」

「へぇそうなんだ。なんかすごそう」

「全然すごくねぇよ。自然はまぁまぁ多いけど、特に神秘的な場所はねぇし。街はめちゃくちゃデカいが、観光地は今んところない」

「なんで?観光地がないのに、なんでそんなに人が集まるの?」

「ただ単に住民が多いからじゃねぇの?特にモンスタウンがある場所は、なにかと古代の文明が残っていたらしくて、それを流用したおかげで、発達が他の国よりも早かったらしいんだ。多分それが理由。キャッスルタウンはどんな場所なの?行ったことがなくてさ」

「キャッスルタウンは街全体が城なんだ!……………」

「…………それだけ??????」

「それだけ」

「……………………」

ロックは息を吸った。

「ハァァァァァァァァァ?お前何年住んでるんだよ!!!!!!だいたい大学受験は歴史や地理の勉強も必要じゃねえの?」←高卒

「ごめん。大学受験でテレビ見てる暇なかったんだ」

「めちゃくちゃ便利だな。大学受験って言葉。大学目指しておけばよかった………」

「……あ、あの建物?もしかして」

森の奥に広がる草原に、立派なペンションがあった。看板にはINNと書かれていた。

「こんな誰もいない、だだっ広い草原に、ぽつんと一軒家並みにペンションとか、あんの??????」

「失礼な!結構人気らしいんだぞ!まぁ中は意外と広いし。安心しろ」

ロックはドアをノックした。

「韻を踏んでいるね」

「やかましいわ」

ドアは開くと、中からナメクジが出てきた。

「あ、ロックじゃん。久しぶり」

「よ、カラーノ!久しぶりだな!」

「…おや、そちらの方は?」

「モコローです。よろしく」

「こいつモンスタウン初体験なんだ。で、なんかいつのまにかファイアロンの元へ行くことになった。何故かは知らん」

「物語の動機知らんのこの小説だけだぞ絶対」

カラーノはお入りと言い、2人を案内した。中は暖炉が灯るリビングと、2階へ続く階段があった。奥には食堂がある。

「すんばらしいでしょ?このペンション、めちゃくちゃ広いから意外と客来るんだぞ。この見た目で。ぼろっちいのに。ちなみにもう27年目」

罵倒ばとうしてんのか褒めてんのかはっきりしろよ」

「ねぇ。聞きたいことがあるんだけど、なんでこんななんもない草原にあんの?」

モコローが疑問に思ったことを聞いた。カラーノは呆れた顔で答えた。

「フフフフフフフフ、まだ分からんようだな。この宿の凄さを。この宿はなぁ…聞いて驚け見て騒げ。な、なんとこの宿!!!!!!ジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャガジャン!動かせるんです!!!!!!」

「………………………………………」

「(あのモコローが沈黙した⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎)」

「……ごめんどゆこと??????」

「俺はこう見えてもカタツムリ!この宿を背負って移動することができるんだ!この移動能力を駆使して、俺は旅人が集まる場所へ出稼ぎに行って、泊めてやってるんだ」

「…………マジ?」

「マジ」

「( ゚д゚)」

「まぁ、最初はそうなるよな」

「……とにかく寝ろ。ファイアロンとこ行くんだろ?」

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