15話 新居生活スタート!!

偽装誘拐計画から3ヶ月後。

 誘惑の森での新生活の朝は早い。うそ。そこまで早くない。


 6時に起きて、魔法と、剣、体術の練習。8時に朝食。その後は、自由に街へ出たり、また鍛錬をしたり、森を探索したり、仕事を見つけに行ったり・・・・・・。


 そう!仕事といえば、私は、薬屋を始めた。と言っても、この森の中に来る人はいないから、売り込みに行くんだけど。前教えたかもしれないけど、まず、回復薬ポーション。これには、精霊女王ファリー様の加護を少し入れているから、普通の傷もだけど、高位回復薬ハイパーポーションは、部位欠損まで治すことができ、しかも、前の状態よりも、ずっともっと良くなっているという、優れものだ!!さすが、精霊女王て感じ。


 次に、熱冷まし。これは私のオリジナル。あ、全部オリジナルだよ?意外とこの世界に熱冷ましとかがなくて、私は前世の記憶をフル活用して作ってみたのだ。で、熱冷ましといえば、冷えピ○。これも作った。というか、これはただ単に、氷の精霊の一部をもらって、入れただけだけど。

 で、あとは・・・・・・。何に使うか全くわからない、呪符。媚薬。毒(即効性があるもの、遅いもの)などなど。


 私はこれを瓶に詰めて、街へ売りに行く。まあ、バレるとやばいから、変装するけどね。変装と言っても、頭巾かぶって、カラコン入れるだけだけど。これらを作るのに、1日、全て10個ずつくらいかな?高位回復薬は流石に1日5個が限界だけど。元々私の魔力じゃなくて、ファリー様の魔力だから、心境は複雑。



 リュカは、なぜか王国騎士団に入った。前は入りません、って言っていたのに。ただ、まあ、さすが王子様で、ザラームを従えているので、即出世している。リュカいわく、「俺が王宮あっちにいれば、情報がたくさん入るし、ソフィアの情報改竄かいざんもできるし、俺も強くなれる」だそうだ。で、リュカが王国騎士団に入るとなると、エイデンもいくよね、っことで、エイデンも王国騎士団に入った。あ、騎士団って、寮ないんだって。だから、朝食、昼食は無理だけど、夕食、休みの日とかは一緒に過ごせる。


 ミアはといえば、私と一緒に街へ行って、情報を集めたり、家事(と言っても洗濯、掃除だけだけど)をしてくれたり、獲物動物を狩ったり。街で調味料とかは買うけど、お金は限られているから、9割自給自足ね。でも、誘惑の森には神聖な動物しかいないから、ちょっと遠くの方の森に行ってるけど。



 そうそう。私たちが失踪した日から、まだラファエルは私たちのことを探しているらしい。国境の警備を厳しくして、街にも警備を置いている。ライフォード家の方は、まあ、ものすごく叱責されて、今は謹慎を命じられているらしい。それだけで済んだ事はすごいよね。


 ヒロイン、セレンの方は、これチャンスじゃん!?ということで、ラファエルにもうアピールをしているらしい。そして、ラファエルはそれを華麗にスルーしているらしい。どうやら、セレンになびく事はないらしい。で、それを理解したか、セレンは、今度は貴族、大臣にアピールし始めた。自分が王妃の方がいいよね?私が王妃になったら、もっといい地位をあげるよ!!って感じで。そして、なぜかリュカを自分の護衛騎士にしたいと言っているそうだ。ただ、リュカは、私の主人は失踪したソフィア様だけです、と言ってるらしいけど。


 あ、あと、リュカが気になるようなこと言っていたのよね。なぜかセレンは私たちのことをよく知っていて、体の黒子ほくろの数とか、弱点、好きな食べ物、嫌いな食べ物、その他諸々、プライベートのことまでほとんど知っていた、って。

 ファンブックとかに書いてあったのかな?それとも、数えたとか?まあ、どちらにしろ、要注意ってことだね。



 「ねえ、シノア」

 「何?リディア」

 そう!!嬉しいことといえば、私に“友達“ができたのだ!!

 私は今、その友達の家にいる。

 本邸にいた頃は、社交界には出なかったし、出ても王太子の婚約者だから、敵意を持った人か、媚を売るためか、私に友達はいなかった。

 

 1ヶ月ほど前、薬を売るために、街をぶらぶらしていたら、私に話しかけてくれたのだ。彼女の名前は、リディアという。流石に私は本名を教える度胸がなかったから、私はシノア、で通している。茶色の髪の三つ編みの子で、女の子らしとても可愛い子だ。家は、小さな旅館。何回か訪れたことがあるが、どっちかというと、民宿のような、でも、リディアの両親はいい人で、すぐに仲良くなれた。


 「聞いた?4年に1度開かれる、サライファル王国騎士最強決定戦!!」

 「何それ」

 「知らないの?3カ国合同で、王国騎士団で、誰が一番強いかを競うのよ。これを機に、出世したり、貴族様に見初められたりするの。他国からもお偉いさんが来るから、引き抜かれたりするの。“王国最強“という称号は、誰もが欲しいものでしょう?しかもね、これは、王国騎士団に入ってない人でも参加していいの。ただ、その前に市民予選があるんだけどね。この予選でトップ3までが出場できるの。さらに!!賞金も出るのよ。なんと1億円!!すごいでしょう?」

 

 え。それ、オリンピックじゃない?普通に。4年に1度とか。完璧にオリンピックじゃん。

 あ、あと補足しておくと、この世界のお金基準は日本と一緒。形が違うだけで。だから、1億円ってめちゃくちゃ高額!!

 

 「今年は、ラファエル様も出られるし、しかも、聖女様も出るらしいわよ」

 「セレ、聖女様が!?」

 「そう。ほら。聖女様まだお披露目されていないでしょう?その時にお披露目されるそうよ。戦うってよりかは、どっちかというと見物って感じね」

 「へえ」

 「で、ここからが大切なの」

 「何が?」

 「私たち市民にとっては、これはお祭り。貴族様に自分達の商品や・・・・・・。その他諸々売り込むチャンスよ!!さらに、たくさんの人たちが集まるから、ここ1番の稼ぎ時!!出店を出したり、あと他国からも出たりするから、とても楽しいわよ」

 「だから、みんな最近気合が入っているのね。理解したわ」

 「ええ。シノアも出てみたら?」

 「なんで私?」 

 「だって、シノア万引き犯とか窃盗犯とか、普通に捕まえるじゃない。騎士団よりも早く」

 「あはははは。でもさ、女だから無理でしょ」

 「いや。女の子でも出られるのよ。ほら、そこのチラシ。『年齢、性別、関係なし』って書いてあるから」

 「ふ〜ん」


 へえ。騎士団最強決定戦、かあ。リュカも出るのかしら?


 「注目の人っているの?」

 「そうねえ。まずはラファエル様でしょう?この国の第2皇子様だしねえ。最近の注目は、リュカ様とフアンシド様ね」

 「・・・・・・っ!!」

 フアンシド。本名、フアンシド・オリバー。この人もまた、攻略対象者であり、原作人気投票NO.2の超絶人気イケメンだ。ただ、女遊びが過ぎるのが、玉に瑕たまにきずだ。私はまだみたことないのよね。確か。

 「フアンシド様は安定ね。ただ、最近出てきた新人のリュカ様が今ものすごい人気を誇っているわ。フアンシド様とはまた違った良さが。まあ、イケメンでさらにはとても強い!!しかも女の子に冷たい!!」

 「え。冷たいっていいところなの?」

 「それがいいじゃない。ああいうタイプは、好きな女の子に一途でしょう?溺愛されていいなあ。ほら、聖女様もリュカ様にぞっこんっていう話もあるじゃない。クール系であの目で見つめられるとみんなゾッコンよ」

 「へ、へえ。そういうものなんだ」

 へえ、やっぱりリュカは人気なのね。


 その後はまた世間話をしたりして、リュカ達が帰ってくる時間になったので、リディアと別れた。



 ◇◆◇



 夕食中、リディアの言っていた、騎士最強決定戦について聞いてみた。

 「ねえ。リュカ」

 「どうした?ああ、今日のご飯も美味しいぞ?特にこの生姜焼きの焼き加減がまたぜつみょ・・・・・・」

 「え、ああ、ありがとう。っていやそういうことじゃなくて」

 「どうした?」

 「騎士最強決定戦?だっけ。出るの?」

 「ああ、あの茶番」

 「え、茶番って言っていいの?4年に1度でしょう?」

 「そんなことしている暇があったら、俺はここで寝ておきたい」

 「で、出るの?」

 「ああ。団長がうるさいからな。しかも賞金が出るんだろう?」

 「何か買いたいものがあるの?」

 「ああ。これで休みを買う」

 「何言っているの?」

 「冗談だ」

 全く。冗談を言うなら、笑っていって欲しいものよね。でも、リュカが笑うと、本当に殺されちゃうから。もうそのくらいの破壊力。

 

 「エイデンも出るの?」

 「え。ええ。でも、本当は、ミアちゃんと一緒に出店を回りたかった!!」

 「あ、ああ」

 本当にエイデンはミア一筋よね。

 「ああ、その件なら大丈夫ですよ?」

 「どうして?」

 「私も出るつもりですから」

 「え!!出るの?」

 「はい!!私は強い人と戦いたいんです!!」

 ああ、忘れていた。ミアはバリッバリの戦闘民だった。

 「よし!!じゃあみんながんばってね!!私、応援しに行くから!!」

 「本当ですか?」

 「ええ。カツサンド作って持っていくわ」

 「楽しみにしています!!」


 みんなでそのあと決定戦について話をしていたから気づかなかった。後ろで、ライとリーゼが何か企んでいたことに。

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