13話 ランナウェイ 第1幕

 「よし。実行するわよ!!」

 「本気でする気か」

 「ええ。もちろんよ。リュカ。ずっと前から言っていたもの」

 今日は、星流からちょうど1週間後。私たちの家出ランナウェイの実行日。

 私は、6年間過ごしたこの屋敷を出る。


 「ライア」

 「なんでしょう?」

 ライアの態度は、最初とまるで変わらず。彼女はこの6年間一度も、を抜いてくれなかった。

 「街へ出掛けてくるわね」

 「護衛は?」

 「ミアとリュカとエイデンを連れて行くわ」

 「左様で」

 ほうら。彼女は一言しか喋らないからな。もうちょっと心を開いてくれてもよかったのに。


 廊下を歩いていると、義妹、アイティラに遭遇した。

 「あら。お姉様。どちらへ?」

 「アイティラ。ええ。ちょっと街の方へね」

 「あら。不吉なお姉様にはお似合いですわね。もう2度と戻ってこなくてもよろしくてよ」

 姉に対しての言葉遣いは全く変わらず。元々美少女だったのだが、性格の悪い、がつくようになったわね。

 誰のせいかしら?

 それはもちろん、両親のおかげね。 

 「ええ。そのつもりよ。さようなら」

 私なりに、けじめをつけたつもり。



 「6年間、ありがとうございました」

 玄関で、一応6年間過ごした家に向かって、お礼を言う。

 まあ、いいことってあまりなかったけど。

 あ。そういえば、私、義母あの人に虐待受けてないわね。どうしてかしら?しかも、この6年間、ほとんど会っていない気がする。

 まあ、いっか。

 後からミアに聞いた話だが、私を虐めたりすることがあったら、お家没落だよ、とラファエルに脅されていたらしい。うわ〜。ラファエル怖っ。黒っ。




 

 ◇◆◇




 「よし。いいわよ。ライ、リーゼ。思いっきりやっちゃって!!」

 そう。私が今からしようとしているのは、偽装誘拐作戦。

 ライとリーゼに人型になってもらい、私を誘拐してもらうのだ。

 その時、ミアとリュカ、エイデンは私を助けることができなかった、と言う設定にしようと思ったのだが、3人とも今や腕の立つ騎士だ。流石さすがにメイクとか、わざと殴ってつけた跡では、誤魔化ごまかせないかな、と思ったので、ライとリーゼに本気で相手してもらうことになったのだ!!神獣って強いから、ミア達には負けないよね?って感じで。だから、ミア、リュカ、エイデン。頑張ってね!!死なないように!!

 

 

 よし。じゃあ、始めよう。私はわざと人通りの少ない路地へ入る。

 「キャーー!!誰かーー!!」

 そして、叫ぶ!!証人を作るためにめちゃくちゃでかい声で。

 リーゼに羽交い締めはがいじめされながら。

 ライはミア、リュカ、エイデンと戦うために戦闘体制に入っている。

 「はっはっはっはっはっ。ソフィア様はいただいたぞ!!」

 え。何そのダサいセリフ。しかも、ソフィアって言ってるし!!

 「ちょっと!!リーゼ!!何そのクソダサいセリフ!!」

 私は羽交い締めされたまま、リーゼに超小声で話しかける。

 リーゼはショックを受けたような顔をして、「あれは、2人で1週間寝る間も惜しんで考えたんですが」とのこと。私は、もう、あ、ごめんね状態。


 「ソフィア様を離せ!!」

 リュカは、すっかり役に入ってくれていて、剣を抜き、ものすごい量の魔力を放出している。それに気づかない人はいないだろう。なんだなんだ?とギャラリーが増えてきた。


 「はっはっはっはっは。かかってきなさい。リュカ!!」

 本当にライのあのキャラはどこからきたんだろう。

 しかも、本気マジで戦っている。

 

 ゴロゴロゴロゴロゴロ

 その瞬間、晴れていて、雲ひとつなかった空に、雨雲が差し掛かるり、雷が落ちた。ライの力だ。ライは、天候さえ操ってしまう。さすが、神獣。

 リュカも、ミアも、エイデンも、もちろんギャラリーもびっくりしている。

 「久しぶりだな。この力を使うのは」

 「お前っ、隠していたのか!!」

 「もちろんだ。とっておきは、最後にとっておくものだからな」

 「じゃあ、もうとっておきはないんだな?」

 「・・・・・・リュカ!!行くぞ!!」

 目に追えない速度で、火花がバチバチなっている。

 

 「リーゼ、リーゼ!!」

 リーゼの腕をトントンと叩き、合図を送る。

 「ソフィア様はいただきましたわ!!」

 いや、だからそのセリフ!!しかもまた「様」つけてる!!

 「お待ちなさい。ソフィア様はあなたごときがふれられるお方ではありません」

 「ミア!!助けて!!」

 「もちろんです」

 今思ったんだけどさ、私たち、めっちゃ寒いことしてない?今、めっちゃ恥ずかしくなったんだけど。

 「では行きますよ?」

 ミアは、私がいるにもかかわらず、リーゼに風の刃を放つ。

 「え」

 私は困惑。普通、私に害のないように戦うんじゃないのかな?

 しかし、リーゼは余裕でその風の刃を避ける。というか、風の刃が、リーゼを避けた?

 あ。そうか。リーゼも属性は【風】ミアも【風】だから、勝負は五分五分?違う。リーゼは神獣だから、やっぱりリーゼの方が強いのか。

 

 「今です!!エイデン!!」

 「オーケー!ミアちゃん!!」

 エイデンが、後ろから剣を振りかぶって飛んでいた。

 さっきのミアの攻撃は、ブラフだったのだ。

 「ナイス!!エイデン!!」

 「ありがとー!!ソフィア様!!」

 他の騎士とかなら引っかかったかもしれないが、ここでの作戦は、ミア達が『怪我をすること』だから、リーゼは引っかからない。

 「分かっていましたよ?」

 リーゼはミアよりも威力のある風の刃を放った。お陰でエイデンは切り傷だらけ。

 ミアはその隙にリーゼの出した分身にやられてしまっている。

 リュカは、ザラームは封印しているらしく、これもまた存分にやられてしまっている。


 「リーゼ、そろそろいいわよ?」

 「わかりました。あっはははははは!!さあ。そろそろ小芝居はやめましょう。ソフィア様はもらっていきます!!ライ!!」 

 「分かった!!」

 だから、そのセリフ(以下省略)

 ライが、ものすごく大きな雷を落とした。その間に、ものすごく速いスピードで、リーゼトライが駆け出していく。 

 見る見るうちに、リュカ達の姿が見えなくなっていく。


 あとは頼むわよ。リュカ、ミア、エイデン。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る