12話 ヒロイン登場

 星流から3日後。私は、机と睨めっこしながら、作戦を考えていた。

 まず、家で計画を実行するにあたって、私がしなければいけないこと。

 

 ①どうやって家出するか

 ②誘惑の森のどこに家を建てるか。どう建てるか。

 ③何を持っていくか。

 ④これからの稼ぎはどうするか


 まあ、大まかにはこの4つかな。

 ②は、ファリー様が作ってくれているそうだ。だから、残りの3つ。

 

 ①の場合、もし私が、探さないでください、とか置き手紙を置いていったら、絶対にラファエルが探しにくるだろう。だから、何も言わないで家出を!!と思ったら、まず、家を出る前にバレる気がする。大荷物を持って家を出たら、絶対に怪しまれるだろうから。

 そこで私が思いついた作戦!!そう、『偽装誘拐作戦』!!まず、私たちは許可を取って、護衛騎士リュカたちをつけて、外出する。そこで、私は誘拐されてしまうのだ!!擬人化したライとリーゼの手によって!!その後、私たちは誘惑の森に入る。リュカたちは、一回家へ帰ってもらい、私が誘拐されたことを報告してもらう。で、このあとはみんなのの腕にかかっているわ。両親とラファエルに私が攫われたこと、私を守れなかったことを後悔し、責任をとって、やめると言い出す。そのあと、いろいろな荷物を持ってきてもらって、堂々と家を出る。そして、誘惑の森へ入る。

 ああ、なんて完璧な作戦なんだろう。私ったら、天才?


 ③は、まあ、まずは衣服ね。そのあとは、料理器具や武器、本とか。家具はファリー様が空間魔法で、運んでくれるそうだ。もし足りないものがあったら、その時に考えよう。


 ④は、自給自足でどうにかなるけれど、やっぱり、何かあった時のために欲しいよね。お金は。

 そう言うことで、私は、ザラームや、デューク、ファリー様、それと、前世の記憶、本で薬の作り方を学んだ。これを売ろうかと思うのだ。

 私が作れるのは、回復薬、超回復薬、眠り薬、熱さまし、あとは、惚れ薬、媚薬、呪薬。呪薬というのは、じゅやく、と読む。私が作ったのだ。ザラームにもらった加護とか、ファリー様の加護とかを合わせて。それを、ちょうどリュカを馬鹿にしやがった妹、アイティラで試したのだが、それがもうすごい効き目だったのだ。アイティラはクマを作って、美少女から、ニートに変わってしまったくらい。

 だから、さりげなく噂を流してもらって、そしたら、誰か来てくれるかな?みたいな。


 

 コンコン

 ドアを叩く音が聞こえた。

 「ソフィア様。ラファエル様より、王宮へ呼び出しがかかりました。至急、王宮へ、とのことでございます」

 「え。マジで?」

 ラファエルからの王宮呼び出し。これは、まさかのまさか!!ヒロインに会わせてくれるのでは?

 

 私はものすごいスピードでドレスに着替え、リュカとエイデン、ミアを収集し、馬車に乗り込む。あ、この馬車、エンジン付きね。私が作ったのだ。私専用に。前世の本で解剖図?解体図?をみたことがあったから。

 おかげで、5時間かかるところを、超短縮、1時間でついた。

 空間魔法が使えれば、一発なんだけどね。

 

 相変わらず、でっかい城のこと。

 「ソフィア・ライトフォード様でございますね?国王様方がお待ちでございます」

 着いた瞬間、メイドさんに応接間に案内される。

 その場にいたのは、立派な髭の、強面おじさん。この人が、何を隠そうこの国の王様なのだ。その隣にいる、可愛い人が、王妃様。まさに、美女と野獣。

 私は、ドレスの裾をつまみ、例を取る。

 「この星の元に生まれてきた子よ。名を名乗ることを星花王の何おいて、許そう」

 「ありがとうございます」

 この星の元に生まれてきた子よ、というのは王が使う決まり文句のようなものだ。この世界にとっての、“星”というのはとても大切なものだ。

 「すまんな。呼び出したのは私たちだというのに」

 「いえいえ。それよりも、至急の要件というのは?」

 期待している顔を隠して、王様に聞く。

 王が口を開こうとした瞬間、バタンッ、と扉を開く音が聞こえた。

 「ソフィ!!」

 「ラファエル様!?」

 げっ、て顔してないよね?私。

 「ごめんね。呼び出しちゃって」

 「いえ。大丈夫です」

 「実はね・・・・・・」

 「ラファエル様!!」

 これもまた、バタンッ、という乱暴に扉を開く音が聞こえたと思うと、茶色のショートカットの女の子が飛び出してきて、ラファエルに抱きついた。

 「私も連れていってくださいって言いましたよね?ひどいっ!!」

 「離れろ。セレン」

 彼女は、セレンというのか。多分、日本人だろう。ラファエルが、聞いたこともないような冷たい声で、突き放すが、彼女は余裕な顔をして、笑っている。

 「いいじゃないですかぁ〜。どうせ、私がのちの王妃でしょう?だって、私、星の巫女だし?そこにいる、ソフィア悪役令嬢もどうせ退場するし」

 やっぱり。彼女は、日本人で、巫女戦を知っている。

 「ごめんね。ソフィ。これが君に会いたいって聞かなくて」

 これ、って、言いますか?王子様が!

 なんか、私の中のラファエル像が崩れていっているような気がする。

 「いえ。初めまして。セレン様。私、ソフィア・ライトフォードと申します」

 「へえ。あなたが。ソフィア様なのね。私はセレンよ」

 私の額に青筋がピキッと浮き出たのは気のせいだろう。

 あまりにマナーがなっていない。まあ、こっちにきて3日あまり、というとこだからな。うん。ここは、大人の威厳を。

 「ねえ。ソフィア様。私に、ラファエル様を譲ってくれない?」

 何を言い出すのだろうか。この子は。

 「本当ですか!?」

 あ、しまった。私、つい本音が・・・・・・。

 ほら。王様やラファエル様、ましてやセレンまでびっくりしているじゃない。

 「「「・・・・・・・・・」」」

 沈黙が、沈黙がつらい!!

 「あー。ラファエル様。ご用件はこれだけでしょうか?」

 「あ。ああ。ソフィを紹介したかっただけなのでね。僕にはこんなに愛らしい婚約者がいるのだと。君が入る余地はないよ、と」

 「へ、へえ。そうなんですか。へえ」

 私、見せびらかされただけ?

 

 「ソフィア嬢。彼女は星の巫女だ。そして、ソフィア嬢はこの国の王妃。どうか、2人で協力して、この国を繁栄させていってほしい」

 うん。無理だと思うよ。

 「わかりました」

 ここで、無理ですとは言えない。流石に。

 「失礼致します」

 

 私、ここで退散。

 廊下で待機していたリュカに駆け寄る。

 「リュカ!!」

 「どうした?」

 「帰ったら、作戦会議ね」

 「ああ。わかった。巫女はどういう人だった?」

 へえ。リュカも気になっていたのか。

 「う〜ん。可愛い系であざとい系で、まあ、あれが本気で堕としにかかったらやばいかもね」

 「へえ。そんなにか」

 「あ。リュカは引っかからないでよね」

 「う〜ん。ソフィアよりも魅力があったら、ひっかるかもな」

 ギャーギャー言いながら、帰ろうとしていると、なぜかセレンが話しかけてきた。

 「ちょっと!!」

 私は、令嬢スマイルを貼り付けて振り返る。

 「あら。セレン様。どうかいたしましたか?」

 「なんで、なんで、悪役令嬢あなたが、リュカ様のそばにいるの?」

 リュカ?

 「彼は、私の専属護衛騎士ですよ?」

 「っ。違う!!リュカ様は、私によって、呪いが解けて、救われて、私と結婚するのはずなのに!!」

 え。つい10分くらい前は、ラファエルと結婚する、的なこと言っていたよね?

 「セレン様、と言いましたか?」

 あら。リュカが前に出るなんて。結構頭に来ちゃったかな?

 「リュカ様!!そんな女と一緒にいるのではなくて、私と来てください!!」

 展開はや!!

 「申し訳ありませんが、私は卑しい身分から、ソフィア様に救われました。この忠誠心いのちはソフィア様だけに尽くすと決めているのです」

 リュカはそう言って、私の手をとって、手の甲にキスを落とす。

 「え。そんな。卑しい身分?どういうこと?彼は、闇落ち王子のはずよ?」

 彼女は、ずっとぶつぶつ言っていたので、私たちは即逃げました。

 



 それから4日後。私は、作戦を実行する。私の、幸せになる計画のための、また1歩を、踏み出すために。

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