第9話 封印の慰霊碑

「お察しの通り、魔獣王バルバトスこそが我ら機械が作り出した人類滅亡のための尖兵! 彼こそ人類を駆逐する役目を担う魔獣をうみだすためのゆりかご! そしてあらゆる遺伝子情報を持つ究極のキメラ合成装置なのです!」


 逆転の魔導士はゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


「ま、まて……」


 伸ばした手を振り払われ、逆転の魔導士は悠然とモニュメントに近づいていく。

 フードの中は陰っていたが、肩まで伸びた真っ白い髪と三日月のように歪んだ口元だけが見えた。


「さあ、いまこそ四大守護獣の封印を解きいまいちど世界に混沌を呼び寄せるとき! 人類の滅亡に乾杯!」


 魔導士がモニュメントに杖をぶつけると、モニュメントに白い亀裂が走り音を立てて崩れた。


「……ふむ。やはり全ての封印を解かなければならないようですね」


 逆転の魔導士はそういうと、左手を俺たちに向けた。

 思わず身構えるも攻撃はこない。

 その代わり、魔導士の後ろに黒い渦のようなものが出現した。


「転移魔法……か……」


 ガブが火傷した右腕を庇いながら呟いた。


「ワープゲート、といっていただきたいものですね。それではお二人とも。魔獣王の復活は目前ですので、せいぜい余生を楽しんでください。魔獣に食い散らかされるその日まで、ね」


 魔導士はそう言い残して渦の中へと入っていった。


「おの……れ……」

「ガブ!」


 あまりにも弱弱しい姿になってしまった友を抱きかかえ、崩壊したモニュメントに顔を向けた。


 モニュメントは、さらさらと砂に代わり、気まぐれな風にのって空へと登っていくところだった。

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