第51話 世界の中心で、あーしは×××××と叫ぶ



『“汎用鑑定ノーマルアナライズ”』


 判定……結果——


 “精神世界スピリチュアル・ワールド”——『帯域——夢野チャンネル——ユメノ』——「多次元構造と接続している数多あまたの“心夢幻幽クオリア”を束ねた領域の内の一つ、“夢野衣音ユメノジャスコ”の空想をいしずえとして成り立つ世界」



 これ……。

 やっ、ぜんっぜん、意味が分からねぇ……。。。


 ……、だけど一つだけ、分かったコトがある。


 ——


 ……それだけは、ハッキリと分かった。


 混乱しながらもあーしは、さらに“視点操作コントロールビュー”も使ってみた。

 すると、さらに驚愕きょーがくすることになった。

 上空の限界まで飛ばしたカメラから周囲を見渡すと、あーしのいるところから一定の距離だけ丸く存在していて、それより外には何も存在していなかったのだ。——『


 え、イマあーし、世界の中心にいる?

 いや、あーしこそが世界の中心なんか?


 ——うぇっ、ヴェッ……?!

 

 世界の中心で(混乱のあまり)アイエエ! と叫びそーになっているあーし。


 ——いや落ち着けあーし。叫んでどーする。


 とりま落ち着いて……ちょっと、イロイロ確認してみよ。


 まず、この場所に来たキッカケよ。

 

 ……しょーじき、よく覚えてナイ。

 とりま最後の記憶は……なんかやたら強そーな幽霊ゆーれいのボスのガイコツみたいなヤツと戦ってたってコト。

 相手はかなり強かったケド、あーしの剣くんは相変わらず強かったハズ。

 けっこー向こうを追い詰めてたよーな気もするんだケド……うーん、やっぱり思い出せん。

 

 でもまぁ、やっぱこのガイコツのせいなんやろ。ほぼ間違いなく。

 だってアイツ、たしかあの変な場所を作ったのは自分だっつってたし。

 そー考えたら、アイツにゃあーしを変な場所に閉じ込めたりとか、出来そーな気しかせん。


 まあけっきょく、どーやって来たかよりも、問題は、どーやって出るかよな。

 ……せやな、さっき聞いたばかりのアッキーのアドバイスに従うならば、まずは“暴力ぼーりょく”——つまりは力技を試せってか?

 まーそれで済むなら、確かにソレが一番早いだろーケド……うん、ムリだな。

 まず何に対してどんな力を使えばいーのか、まるで分からんし。


 んならやっぱり、“頭”を使わなきゃなんだケド……。

 ——その前に、も少しイロイロと調べてみっか。


 

 それからあーしは、主に『探索者シーカー』のスキルを駆使して、周囲をイロイロと調査してみた。

 ——『探索者』とゆーだけあり、調べるのになかなか便利なスキルがあるのは助かった。


 まずは“鑑定”を手当たり次第に試す。

 その結果分かったのは、この世界にあるものは、すべてが“まぼろし”らしい、とゆーこと。

 というか、この世界自体がマボロシっつーか。夢の中の世界っつーか。


 それから、“自動地図オートマッピング”も使ってみた。

 さらには“視点操作”も使いながら、ちょっとその辺を移動してみて……。

 結果分かったのは、やっぱりこの世界の中心はあーしらしい、ってコト。


 まず“地図マップ”には、あーしの周囲の狭い丸しか表示されてなかった。

 本来ならこの地図は、すでに行った場所はちゃんと記録された上で、新たに到達した部分もどんどん追加されていくのがフツーなのだケド。

 だけど、この世界では、常にあーしの周囲の丸の分しか映らん。

 

 今日のあーしは学校まで行った。

 なので、本来なら、その分移動した地図が出来ているハズなのだ。そうでないとオカシイ。

 しかし地図はナイ。あーしの周囲しか。

 いや……地図だけでなく、やはり『世界』そのものがあーしの周囲にしか存在していない。


 つまりどーゆうことかとゆーと。

 あーしが家にいる時は、その周囲のごく狭い範囲——それこそ目で見える範囲くらいが

 逆に言えば、それ以外のすべては存在していない。

 

 あーしが学校に向かえば、学校までの道がどんどん、逆に、通り過ぎた部分は、どんどんと

 ……どーもこの世界は、そんな風に出来ているらしい。


 この事から分かるのは……あーしがどれだけ外に向かって進んだとしても、この『世界』から出られるワケではナイ、とゆーこと。

 つまり、単純に移動するダケじゃダメってコトやね。


 ……やっぱり力技じゃどーにもならんわ、ココ。

 だけど……あーしには他に出る方法が……ゼンゼン思いつかん……!


 チョットは考えてみたよ? 頭使ってみたケドよぉ……


 いや分かんねーよ!

 

 せめてヒントとかねーの……?

 不親切過ぎるべ、この脱出ゲーム。


 夢から覚める方法——とか、スマホで調べてみよーとしてみたケド。

 ——ネット繋がってねーんだわ。

 なぜか電話は出来たケド……ネットはムリだった。はー、このポンコツ、使えねぇ……。


 ……いやでも、電話は出来るんよな?

 電話で誰かに相談すっか……?

 あーし一人では、もうどーにもならん。

 アッキーも言ってたな、“頭数”って。つまりはこれ、他人に頼れってコトやろ?

 ——いや、そー考えると、アイツの言ってるコト、意外イガイとちゃんとしたアドバイスじゃね……?


 つーかそのアッキー自体、電話で話したワケだしナ。

 やっぱりスマホはキーアイテムなんか? ポンコツは言いすぎた?

 ——や、すまねぇ。「ネットに繋がらないスマホ」なんて「カネの入ってないサイフ」だろ——とか思ったのは、ナイショにしといてナ。


 しっかしココって、ゆーてあーしの……夢の世界的なヤツなんじゃろ……?

 んなら、電話でつながる相手も、あーしの夢が創り出した——つまりは妄想の産物なんじゃ……?

 だとしたらソレ……ゆーて特殊な自問自答でしかないのデハ……?


 ……にしてはリアルだったケドね、ミラぽよとか、アッキーとか。

 ゆーてアイツらと今日話した会話トークの内容は、かなりリアルだった。——まるで本人だった。

 あーしが創り出した妄想の相手というには……ちょっとリアル過ぎねーか、アイツら。

 

 ミラぽよの——あの“ギリギリのラインを攻めてくるキレキレの基本ディスな喋り”とか……ゆーてマネできねーよ、あーしには。

 さらにはアッキーの——あの“イカれ世紀末せーきまつな脳内パターン”とか……長い付き合いだケド、あーしにはまったく理解できねーから。……理解する気もねーし。

 

 ……やっぱコイツら本物ダロ。

 

 ……えっ、だとしたらコイツら、なんで勝手にあーしの夢ん中に入って来てんの?

 アポもらってないケド?


 それとも、あーしが勝手に招待してんか、コレ? ……んなコト出来んの?


 ……うーん……?


 ——まあ、とにかく。

 電話は繋がるっぽいし、誰かにかけてみっか?


 しっかし、誰にかけりゃあいいんかね。

 ——コレコレこんな状況なんで、ヘルプっす!

 とか言われても、フツーに誰でもお手上げじゃろ。まず意味不明だし。

 そもそも魔法的なアレなんて、あーしら地球人にはまるで馴染みがナイんよ……


 ……んなら専門家に聞けよ。

 

 ——せや、『ラナ』だ! ラナに聞けばイイ……!

 

 ……いやでも、アイツ持ってないよな? たぶん……ゼッタイ……スマホを。

 ……いやソコ関係あるんか?

 

 …………さあ?


 これもうアレか? あーしの連絡先に入ってる相手しか繋がらんってコト?

 だとしたらもう……ムリじゃね……?

 ゆーてそこそこ交友関係は広いし、連絡先はけっこーたくさんあるケドも……そいつら全員地球人だし。

 さすがのあーしも、魔法に詳しい知り合いの連絡先とかねーわ。——まずそんなコト言ってるヤツ居たら、即スルーが安パイだかんな。地球の常識だとよ。

 

 ……ワンチャン、オカルト趣味の友達とか、居なかったカナ〜……?


 ——とりま、ざっと連絡先確認してみっか……。


 あーしはもはや祈るよーな気持ちで、——なんかマジで少しでも相談できそーなヤツ居てくれぇ……てか出てこい!——と念じながら、スマホの連絡先を確認していった。

 しかし、連絡先を上からしらみ潰しに探してみても、こんなキテレツな相談を受け止めてくれそーな相手はいなかった……。


 あーしは諦め悪く、今度はSNSなんかのネット上オンリーの付き合いの中からも探してみる。

 したら、ダメ元で探してたその中の——

 “もしかして、友達かも?”みたいな、知り合いかも知れないヤツを表示する場所に——

 なぜだか、その人の名前があった。


 本名は知らないから、例のハンドルネームみたいなやつで——『シルバーマム』という、その名前が。


 …………えっ、なんでこの人いんの……?

 いや、まあ、知り合いではあるケド……??


 いや……でっ、出るんか……ッ?

 この不思議な場所で謎のスマホなら、“あっち”で知り合った連中も、知り合いのアレに出てくるんかッ……?!


 そう思って、もっと探してみたケド——けっきょく、向こうで会った人でそこに出てきてたのは、マムさんだけだった。


 ——マムさんだけか……いや、マジで……なんでこの人だけ???


 ……でも、まあ、うん。

 むしろ、一番相談に適してるヤツ出てきたクネ? これサ。

 そりゃもう、“迷った”時に頼る相手として、“占い師”ほど相応しい相手は、ほかにおるめぇよ……!!


 んならさっそくポチッとな。


 あーしはソッコーでマムさんを“友達登録”すると、その勢いのまま通話要請を発信した。


 ——タノムッ! 出てクレ……!!


 あーしの願いが5Gファイブジーの神に通じたのか——


 それなりの間、呼び出し音が続いたあと……明らかに困惑した様子よーすの声で『——は、はい、も、もしもし……??』と、応じるマムさんの声がスマホより聞こえてきた。



 あーしはマムさんに、サクッと要点よーてんをまとめて現在の状況を説明した。


「——んでそのぉ、あーしマジどーやってこっから出たらいーのか分からんくて……マムさんの“占い”で、なんとかならんすか?」

『……えっ、私の疑問は全スルーでいく感じですか?』

「や、スンマセン……あーしもゼンゼンよく分かってナイし、それに——」

『……それに?』

「……ぶっちゃけ説明するのがメンドーだし」

『……そ、そんな、ご無体な……』


 いや、あーしからの電話に出たマムさんだったケド、なんかすっげー困惑してたんよ。——いやまあ、今もしてるケド。

 マジで——

 ——え、何これ? どういうこと……? てゆうか貴方あなたは誰……? えっ、夢野ユメノさん? 夢野さんって——あっ、はい、ギンザで会った……そ、そうですよね。……えっ、夢野さん、いつの間に私への連絡手段を手に入れていたんですか? とゆうかどうやって……? え、分からない……? ——いや、そ、そもそもはなんなんです? ……は? 夢野ゆめの世界……? ダジャレですか? え、違う? ——ワケでも、ナイ……? ……はあ???

 ——ってなカンジで、とにかく混乱してた。


 あーしは——これはイカン……! と思って、マムさんを雑になだめると、すぐに本題を切り出したノダ——。

 ——いや、だって、そーするしかねーダロ。


「——つーかその辺も全部含めて、占いで調べるコトって出来ないんすか?」

『め、めちゃくちゃ言いますね、貴方……』

「えっ、じゃあ、ムリなんすか……?」

『いえ、ムリとは言いませんが……。しかし、占いといえども万能ではないですし……そもそも、こんな状況で、いきなり占いをやれだなんて……』

「あっ、報酬はちゃんと、次会った時に払うんで」

『別に、報酬の問題ではないんですけど……。——はぁ、まあ、いいですよ。私としても、色々と気になることですし。ひとまず、できる限りのことをやってみるとしましょう』

「マジすか! やった! あざます!」

『まあ、貴方を導くと言ったのは私ですから。……こんな意味不明な場所で迷っていられても、私も困りますしね』

「スンマセン、あざまっす……! ——やー、でも……考えてみたら、そもそもここに来たの自体が、キッカケとしてはマムさんの占いの助言に従ったからってカンジじゃあ、ないっすか……?」

『——さ、さて、それではさっそく、占いを始めましょう……!』


 ……。

 ……いや、まあ、いーけどさ。


『……さて、それでは、水晶玉を——と言いたいところですが、それは無理なので……とりあえず、私を呼び出したアイテムを、しっかりと握っておいてください』

「うっす」

『では、いきます……』

「頼んます……!」

『………………ふむ、どうやらここは、現実ではない……“精神世界”のようなところですね』

「ああ、ぽいっすねー」

『……。ええ、ソレで、貴方がここに来た経緯ですが——黒い影が視えます。しかもこの相手は、とても強力な力を持っていますね。これは……禁忌の鎖にとらわれし者——不死者アンデッドですね。それも、かなり高位の……。——ええっと、夢野さん、どうしてこんなモノに手を出したんですか……?』

「え? いや、たぶん……なりゆき?」

『……、そうですか。まあ、過ぎたことを言っても仕方ありませんね。——さて、とはいえ。原因が高位アンデッドともなれば、そう簡単にことは運びません。のろいによりこの場に縛られているのであれば、生半可な方法では脱出することは出来ないでしょう……』

「ま、マジすか……」

『先に忠告しておきますが、この世界の中では寝てはいけません。というより、意識を失ってはいけません。そうすれば、貴方は完全にこの世界に囚われてしまい、永遠に出ることは叶わなくなります』

「うぉう……それってつまり、『絶対に寝てはいけない脱出ゲームin〜夢の世界ドリームワールド〜』ってコトっすか……?!」

『……私は真面目な話をしているんですが?』

「……ハイ、スミマセン」

『……uuン(咳払い)。——いわばそれが、“制限時間タイムリミット”だということです。この世界でも体——というより精神は、時間と共に疲弊ひへいしていきます。眠らずにいられるのは、そう長い間ではないでしょう』

「な、ナルホド……」

『それから、“普通の行動”をとってもいけません。普通の行動とは、「もう遅いから家に帰る」だとか、「夜だから寝る」といった行動です。そういう日常動作ルーティーンのっとった行動を取るほどに、この世界に染まっていきます。そうすると貴方は、が過ごしているはずの世界のことを、忘れていってしまいます。現にこれまでも、貴方はでの日常を過ごして、の記憶は忘れていたはずです』

「……確かに、そうっすね……」

『ですので、貴方はこれから——普段通りの行動は避けながら、意識を失う限界までに、この世界を脱出する方法を見つけないといけません』

「……ううぅ、難易度が……」

『それで……、具体的な、その“方法”なんですが……』

「——はいっ、ソレッ、お願いします……ッ!」

『ちょっと……難しいかもしれません。私の占いでも』

「えっ——?」

『以前にも申したと思いますが……私の占いでも、を見つけ出すことは不可能なんです。私の占いはあくまで——ありえる可能性の糸を解きほぐし、その結果を手繰り寄せるだけ……。糸そのものが存在しなければ、なにも引き寄せようがないんです』

「そ、そんな……?!」

『ですのでそこは、夢野さん、頼りになります。——あくまで運命を切り開くのは、貴方自身の“意志”と、その身に宿す“運命力ディスティム”にゆだねられています』

「あーしの意志と、ディス……?」

『それでは……これより、“解決の糸口”を探求します。——では、夢野さん。望んでください。強く——ひたすらに強く。この場から解き放たれる自身の姿を、強く思い浮かべてください。貴方ほどの強い波動の持ち主なら……きっと、見つけられるはずです——』


 ——あーしの望みが、結果を引き寄せる……。


 ……そーよな、ここがあーしの夢の世界だとゆーなら、フツーはあーしの思いどーりになるハズっしょ?

 んなら、あーしが脱出する方法だって、きっと存在する……いや、……!

 ——んだぁ! ないなら創ればいいんだよぉ! そう、“デコ丸”でなぁ!


 その時、唐突にあーしの手の中に、マジで“デコ丸”がポンと現れた。


 ——ゔえ゙っ゙?!!


『——視えましたっ! やりましたよ夢野さん! 見つかりました! 方法は存在します!』

「あっ、わっ……!?」

『……? どうしました? 夢野さ……ああ、なるほど、嬉しくて言葉も出ませんか』

「やっ、あっ、その……!」

『……さて、それでは、脱出のための具体的な方法ですが……、——おや、……ふむ……んん? ……えっと、そうですね……。——その、詳しくは分からないんですが、どうやら貴方のもとへ、助っ人がやって来てくれるようです』

「——えっ、助っ人? ……え、誰?」

『誰かと言われると……すみません、よく分かりません。ですが、その人に会って手を貸してもらえば、貴方は無事にここから外に出られるみたいです』

「……はあ。そりゃー、よかったっすケド。……んで、具体的には、どーやってその人に会えばいいんすか?」

『それは、ですね——ええと、はい、聞いてください』

「はっ? ——えっ? どゆこと??」

『スミマセン……どうやら私の案内は、ここまでのようです。私も、ちょっと、実は、色々立て込んでいるもので……いきなりで悪いのですが、この辺で失礼させていただきます』

「えっ、ちょっ、ま、待って! あーしこの後どーすりゃいーの?!」

『大丈夫です。すぐに向こうから、コンタクトがあるみたいなので。——では、失礼します』

「あっ、ちょっ、マムさ——」


 しかしそこで電話は切れたのだった。


 あーしはスマホ片手に、とほーに暮れる……


 ……ことはナカッタ。


 なぜなら、その時——


 ♪♪♪♪♪♪♪♪〜〜〜


 聞き慣れた音がしたので、思わずに目がいく——

 するとやっぱり——あーしのが入って来ていたのだった。


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