第46話 いやその名前……新幹線かなんかだろ
目覚めたあーしは目を開けた。
しかし、視界は真っ暗で、何も映らなかった。
——なんだ、まだ夜中か……。
そう思ったあーしは、再び寝ようと目を閉じかけたケド、いちおー時間を確認しておこうと、枕元の時計を探して……
なにやらオカシイことに気がついた。
…………あー、そうか、
………………(記憶再生中)……。
……そういや、ここって元から真っ暗じゃね? 昼も夜もない系の場所だったくね?
その事を思い出したあーしは、とりま二度寝はやめて、もう起きることにした。
しかし、テントの中は自分の手すら見えない暗闇で……
——やべぇ、明かりが無いとなんも見えん。ダケド、まず明かりがどこか分からん……
どうやら……暗視の魔法の効果は、さすがにもう切れてしまっているよーだった。
——マズった……! 昨日のうちから明かりを用意しておくんだった……
あーしは焦りながら、手探りで必死に明かりとなるモノを探し始める。
……しかし、昨日立てたばかりの慣れないテントの中を手探りで探し回るのは、かなりの難易度だった。
ベッドのそばに置いていたポーチは、すぐに見つけられた。
んで、ポーチの中には例の魔法のランタンが入ってるんだケド……手
……つーかあのランタン、まだ一回も使ったことナイし、見つけても使えんくね?
つーかもう見つけるのムリじゃね?
さっきから“鑑定”も試してるケド、ゼンゼン発動せん。
どーもこのスキル、しっかり目で見たものにしか使えないっぽい……。
つまり、真っ暗な今は使えナイ……。
つーかマジで……ここって朝になれば明るくなるワケでもないとしたら——そもそも今がもう朝なのかもしれないし——いくら待っても周囲が明るくなることはナイってコトじゃん……?
いやコレまじで……明かりが見つからなくて終わったんジャネ……?
マジで完全な闇だからココ。もはや失明したんかってくらい何も見えん。
……いやマジで、ここヤバいわ。暗いこととか、ゼンゼン気にしてなかったケド——いや完全にそこ甘く見てたダロ。。。
いやマジで、暗視の魔法切れたら終わりじゃんココ……
……ヤバいぞ、マジで……ええぇ……マジ……?!
寝起きからいきなり危機が降りかかったコトで(さらには何も見えないという状況もかなりヤバい、フツーに恐怖)、あーしはかなり焦った。
さすがにこの焦りよーはマズいと思って、あーしは無理やりにでも気持ちを落ち着けようとする。——ステイ、ステイだぞグッボーイ……。
落ち着くためにまずは水でも飲もうと——寝起きでめっちゃ喉乾いてっし——昨日出したままの水筒をテーブルの上から手探りで取り上げて……と、そこであーしは思い出した。
——ッ……! あのコンロ! あれも机の上に置いたままのハズ!
あーしは手探りで、机の上のコンロを探り当てる。
——昨日使ったばかりだから……手探りでも使い方は分かる!
カチ——という音と同時にコンロに火が灯り、真っ暗な部屋の中を暖かい明かりが照らし出した。
……ふぅ、片付けずに昨日そんままにしてて、ホント良かった……。
ズボラばんざい! 「明日やろう」もたまには役に立つ……!
周囲が見えるよーになったあーしは、ようやく落ち着いて朝の支度をすることが出来るよーになった。
まずはランタンを取り出して、天井から吊るしてしっかりとした明かりを確保して。
それからあーしは、顔洗ったり、着替えたり、朝ごはん食べたりと、出発の準備をしていく。
昨日作ってそのままにしていた
水道の代わりに“
朝は昨日の鍋の残りを食べた。
けっこーな量あったから、けっきょく昨日は食べ切れなくて——だから残りは明日の朝食おうと、そのままにしておいたのよね、
いやぁ、マジそれグッジョブ。ホント助かったゾ〜。
メシ食ってひと心地ついたところで——あーしはなんか、自分のカラダになにやら変な感覚が生まれていることに気がついた。
あーしはその感覚を探っていくことで……そのことを理解したのだった。
——『
——なんか新しいスキルも……二つ、覚えてるジャン……!!
なんかあーしのジョブがランクアップしてた。
ランクアップについてはスゲー気になったケド、とりまあーしは先にテントの片付けを終わらせた。
——使った調理器具や浴槽は、いったん外出してから水洗いして、乾かして。
——あの二つの防犯装置的なアレも、スイッチ切って片付けて。
——机と椅子もしまって、それからベッドと浴槽も元に戻して。
——その他もろもろ、出したブツを全部ポーチにしまっていって。
最後に、テントを小さく戻して、これもポーチに収めてしまえば——不思議なモンね、あれだけの居心地良かった空間が、まるっと消えちゃうんだからサ。
んであーしの腰には、小さなポーチ一つ……と。改めて思うわ、魔法の道具ってマジ便利。
外に出るにあたっては、“
——まぶたの上に薬を塗ると……ちゃんと見えるよーになった。
いやー、これマジここでは必需品だわ。買っといてヨカッタ。
さて、片付けも終わったンデ……そんじゃ、ランクアップについて確認じゃ。
その二つのスキルの効果については、ざっとこんなカンジ。
“
“
……んー、ナルホド。
なかなか、便利そーではある。
しっかし……アレだ。
もうちょい早くにこのスキルが使えるよーになってれば……と、思わなくもナイ。
したらイロイロと、今までの行動ももうちょいマシな結果になったかもしれん。——特にマップのヤツは、これがアレば迷うコトも無くなるだろーし……。
……ま、終わったコトをアレコレ言ってもしゃーねーナ。
むしろ喜ぶべきっしょ。これからの探索にもゼッタイ役に立つハズだし。
つーかそー考えると、ランクアップのタイミングはむしろ早くね? とも思う。
ゆーてジョブゲットしたのもかなり最近やし。
そもそもランクアップはけっこー時間かかるって聞いてたし、だからもっと先のハナシになると思ってた。
まー、ゆーて最近のあーしって、マジでハードな冒険してるし。……そー考えれば、むしろランク上がんのもトーゼンな気がしてきたわ。
さーて、それじゃ準備も終わったし、スキルの確認も出来たし、出発すっか。
んじゃ、まずはこの浮島から下に降りないとだケド……
……や、待てよ?
いや、別に……降りなくてもいいんじゃね?
てかさ……この高さをそんまま飛んで行けば、敵とか無視して一気に進めるくね?
——それだわ。
……さて、それじゃ、問題はどーやって飛んでいくか、なんだケド。
とりま“
んでも、コイツをベルトなんかにつけてぶら下がるってのは……ジッサイやってみるとね、なかなかダルい。
短時間ならともかく、長時間はカンベンなんよ。股が裂ける。
……んならよ、フツーの気球みたいに、なんか乗るトコのあの
もちろん、そんな都合よく、人が乗り込めるほどデカいカゴなんてなぁ持ってねーよ?
んでも〜〜? 無いなら作ればいーじゃナ〜イ♪
てなわけであーしは、あのなんでも作れるアイテム(名前が分かりにくいので、とりまこれは“デコ丸”な。——ちなデコ丸とは、デコレーションする丸いの、の意)——“デコ丸”によって、気球につけるカゴを作成した。
カゴといいつつ、要はただの「上の空いてる四角い箱」だケド。しっかりくつろげるよーに広めに作ってはある。
コイツとバルーンを繋げたら、即席の気球が完成した。
さて、即席の気球とゆーか、飛行船とゆーか、それは完成したけども。
もちろんコイツはただ浮くだけなので、そのままでは前に進めん。
——あーしがランスリータさんだったのなら、竜にでも引かせればいいんだろーケド。
あーしにあるのは竜じゃなくて……そう、剣くんさ。
剣くんに引っ張ってもらう……しかねーか。
——あ、なら剣くんをセットする台も付けとかなきゃ……。
——さあ、今度こそ完成した。
気球——いや、自分で進むんだから、これは飛行船だ。
名前……よし、おめぇの名前は「
高速の1.5倍で飛べッ!
いくぞ——ッ!
あーしの好きな映画の宇宙船からもじった名前を付けたら、なんかテンション上がってきたので、その勢いのままあーしは“プレミアムファルコン”——略して“プレルコン”、いや、まだ長いナ……“プレコ”で——に乗り込むと、すぐさま
なかなかの速度が出てる。んで障害物とか無視して一直線に進めるから、かなり速いんじゃねーかと思う。
少なくとも、地上を歩いて進むよりかはそーとー速いのは間違いナイ。
飛びながらあーしは、新たに覚えた二つのスキルをイロイロ試していった。
“
あーしの通った場所が——それも、あーしからそれなりの距離までを円形に——地図化して表示される。
なので脳内の地図は今のところ、ただ真っ直ぐに続く一直線の道のカタチだ。
その地図に描かれている内容は……大したことない。てかほぼ空白。
まあ、この辺は建物とかもゼンゼン無いから、そもそも地図に描けるモノが何も無いんかも……と思う。
ショージキ、この場で試してもあんま意味ないなコレ、ってカンジ。
“
例えるならこの能力は、意思による操作で自由に動かせるカメラ付きのドローン——的なのを操る能力ってカンジ。
——まあ、ジッサイにドローンみたいな実物が存在するわけではなくて、完全に感覚のハナシなんだケド。なんかそーゆうのを作り出して操るって能力ではナイ。意識だけ飛ばすみたいなカンジ。
カメラを動かすのはなかなか難しい。なんせ自分の目で見てる映像と、カメラから見る映像の二つがあるから、頭ん中でごっちゃになる。
目をつぶってやった方が、カメラの操作は安定するカナ。
——んー、どうかなー、コレ、慣れたら同時にできるよーにもなるかなぁ……?
あともう一つ、映像をズームにすることもできる。
ちなこれは、カメラの方だけじゃなくて、あーしの肉眼の方でも使える。
まあアレだ、これがあれば、もう双眼鏡は要らんってコトやね……。
……そういや、“視点操作”のカメラでもフツーに見えるケド、コレってどーゆうことなんだろ。
あ、いや、アレよ。ここってフツーは真っ暗だから、見えないハズじゃん? でも見えるワケ。
いや、あの暗視の薬を使ってるから、見えるようにはなってるんだけども……
……まあ、よく分からんケド、見えるならいいか。たぶん、このスキルにも薬の効果が効いてるってコトなんかな? ゆーて魔法の薬だし、そーなんじゃね? 知らんけど。
まあそーゆーワケで、あーしは“視点操作”を使って、地上の様子や、行く先の様子を確認したりしながら進んでいった。
ここでは空を飛ぶことは(普通は)出来ないので、敵が出ることもなく悠々と快調な空の旅になるのかと思ったんだケド——なんかフツーに敵出てきた。この
とりま前方を“視点操作”のスキルによるズームで見ていたあーしは、なんか浮いてる変なのを見つけた。
——ん? と思ったので、あーしはズームした視点のまま“鑑定”も使ってみた。
なんかボンヤリとした浮いてるソレに“鑑定”をかけると——
判定……結果——
名称——『
族種——『
属性——『霊』
特性——『
とか出てきた。
——え……何コイツ、……ゴースト? オバケ? いや、
ソイツの見た目は、マジで人魂ってゆーか、ボンヤリと光る火の玉がフヨフヨと浮いてる的なカンジだった。
——え、てかコイツ、フツーに浮いてるってか……
そのヒトダマは、空中をフヨフヨと自在に動き回っていた。とーぜんのよーに
——え、なんで? ここって上には行けねー場所のはずダロ……?
あーしはもしや、例の謎の上行けない効果がここには無いんかと思って、バルーンに鑑定をかけて確かめてみた。
だけど以前に見た時と同じやつがまた出てきた。
——いや、やっぱあるじゃん。じゃあなんで……
と、その鑑定の説明をもう一度よく見たことで、あーしは気がついた。
——まさか、
どーもそうっぽかった。
……や、マジかよ。いや、それ……ズルくね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます