第45話 異世界きゃんぷ(暗黒フィールド編)



 あーしはなんとか例の浮島に到達することが出来たので、さっそくイマから野営キャンプの準備を開始するんじゃ。


 え、どーやってここまで来たのかって?

 いやまあ、確かにちょっと大変だったケドね。


 まあまず、フツーにワイヤーの届く高さではなかったから、近くからは行く手段は無かった。

 いちおー試しにワイヤー使って地面から目一杯上まで行ってみたケド、ゼンゼン届かんかった。

 だけどそっから周りを見てみたら、他にもいくつかある浮島が見つかったんよ。

 そいつらは位置も大きさもバラバラだけど、浮いてる高さもバラバラだった。

 なのであーしはまず、一番低い位置にあるヤツを探したワケ。


 んで一番低そうなヤツんとこまで行って、下からワイヤー伸ばしたケド……やっぱり届かんかった。

 しばらくの間、あーしは届かないワイヤーをムダにブラブラさせて……三回目のあくびが出るくらいの頃合いに、よーやくブラブラするよりもいい方法を思いついた。

 

 てかまあ、バルーンの存在を思い出したんよね。

 ——ワイヤー使ってバルーンを限界まで上にやって、そのバルーンとこまでワイヤーで昇って、そっからさらにワイヤーを上に飛ばしたら、ギリギリで浮島に届いた——

 つまりは、ワイヤーの全長×2でギリギリ届く高さだったってコトやね。


 その浮島は、ゆーてちっさかったから、そこにテントを立てるのは無理だった。

 なのであーしは——その浮島から飛ばせる限界の高さに浮かせたバルーンに乗って——そっからさらに別の浮島まで向かった。

 浮いた状態で横に行くだけなら、剣くんを推進力として使って進んで行けたからね。


 そんなカンジで、その後もいくつかの浮島をまるで階段みたいに経由するコトで、ようやくあーしは最初の浮島にたどり着くことが出来たっちゅーワケ。

 この浮島がテント立てるのに一番良さげなカンジの場所だったから、けっきょくココまで行くことになったわ。


 まあ、今回のことで分かったのは……やっぱり人間、眠くなると思考力が落ちてくるってコト。

 だからね、やっぱ夜はしっかり寝て休まないとダメなんすよネ。

 なんかー、もうちょいラクな方法があったんじゃないかと、思わなくもないケド……すでに疲れてネムイあーしにはこれが限界だった。

 ま、いちおーちゃんと到達したんだから、ええやろ、うん。



 さて、それじゃ、まずはテント立てっか。

 今日はマジでイロイロあったなー。マジちょー疲れたワ。

 ショージキ、もうテントを立てる体力も残ってナイ……ってコトはまあ、ないんだケド。——いやぁ、あーし鞘くんのおかげで身体的にそっちは疲れ知らずナンデネ。

 ただやっぱ、精神メンタル的にはかなり疲れてっから。メンドーな作業とかもうムリってカンジ。

 ……だ、け、どぉ〜?


 あーしが買ったテントはコレ。


 “自動組立式天幕オートテント”——スイッチ一つで自動的に組み上がる天幕テント。展開する大きさを三段階で調整可能。完全防水で、内部の環境を快適で過ごしやすく調整する機能付き。


 わーいヽ(´▽`)/

 自動! スイッチ一つ!

 さっすが魔法のテント。ちょー便利。


 せっかくなんで、今回は一番大きいサイズで展開してみる。

 展開前のテントは、なんか一抱えくらいの大きさのブツなんやけども。

 ポーチから取り出したソイツをテキトーな場所に置いて、スイッチを押して、急いで離れる。

 すると——

 みるみるうちに、置いたブツが膨らんでいくように広がっていって——

 大した時間もかからずに、立派なテントがそこには現れたのだった。

 

 さっそく内部に入ってみる。

 マジでけっこー広い。十畳くらいはあるんじゃね……? たぶん。

 床はなんかフカフカしてる。低反発なんちゃらってカンジの柔らかさ。なんかもうそんまま寝れそうなレベル。

 ゆーてテント立てたのはゴツゴツした地面だったケドね。——でも床フカフカ。うーん、いーねー。

 天井もだいぶ高いし。テントっつったらなんか三角形のを思い浮かべるケド、これはフツーに四角形なカンジだから、そーゆう意味でも広いんよ。

 てかもうテントというよりちょっとした小屋だわ、コレ。


 さて、ゆっくり過ごせる場所が出来たところで、次は……メシだな。

 ゆーて今日は朝メシを宿で食った後は、ロクにメシを食べてないし。いやマジ食うヒマなかったしさー。だから今もちょー腹ペコってる。


 食いモンについては、保存食とか携帯食みたいなやつ以外にも、食材としてもイロイロ買ってある。

 だけどあーし、料理はあんまり……得意じゃねーしなー。てかもう今から作るのがメンドイ。

 てなワケなんで、コレを使うか。


 ジャジャーン!

 “即席食インスタントフード”〜〜〜!!


 お馴染み、お湯かけるだけで作れる系のヤツ。こんなんもあったから、あーしはちゃんと買っておいたノダ。

 さて、んじゃさっそく作るとするかね。


 あーしはまず、折りたたみ式の机と椅子を取り出して設置する(とーぜんコレも買ったブツの一つ)。

 それから、鍋と、それを乗せるなんか台みたいなヤツ(※五徳のことである)を、テーブルの上に用意する。

 んでその台の下には、コイツを置く。


 “魔気式焜炉マナコンロ”——魔力によって稼働する焜炉コンロ


 よーは携帯式のコンロだね。これも魔力とかゆーアレで動く魔道具よ。

 コイツを使ってまずはお湯を沸かす。


 さて、それではあーし式かんたんクッキング、開始!

 

 まず、水筒から水を出して、テキトーな量を鍋に入れて、そしてコンロで火をかける。

 お湯が沸いたところで、“即席食”をぶち込む。

 テキトーに混ぜていくと……あーら不思議、シチューのよーなスープが完成だッ!


 うわっ、マジで楽チンじゃんコレ。

 ——へぇ……この“即席食”は、シチューのもとだったみたいね。


 さて、それじゃ、後はパンとか飲み物とかを出して……

 はい、今日の晩メシの準備しゅ〜りょ〜!

 んじゃっ、イタダキマッス!


 あーしの晩ご飯が始まった。

 メンドーなんで、シチューは鍋から直接食べる。

 さてお味の方は……


 ……うん……うん……フツーに、ウマい……うん……。

 つーかあったかいメシってだけで、ジューブン、マンゾク。


 ……ふう、ごちそーさま。

 さて、それじゃ次は……デザートに謎のフルーツでも食うか。


 ——デザートのデザートとしてオヤツまで食ったあーしは、食後の時間をしばらく椅子に座ってボーッとして過ごした。


 

 ……………………っんぁっ!?


 はっ、やべ、ちょっと寝てた……?


 イカンイカン……寝るならちゃんとベッドで寝ないと……。

 てか寝る前には風呂入らないと……って、いや、そーじゃん、今はキャンプ中で、ここはテントの中ジャン。

 風呂なんてあるワケないジャン……。


 ……つーか、風呂、か……。

 いや、こっち来てから、風呂って一回も入ってねーわ、そーいや。

 宿にも風呂とか付いてないし。てか、シャワーすらねーし。

 モイラに浄化じょーかはやってもらってたケド……やっぱ風呂入りてーなぁー。


 ……入るか?

 いや……やってやれないことはないんジャネ?

 ゆーてさ、要はデカいうつわにお湯を張ればいいダケやん。そのくらいなら、あーしの持ってるアイテムでどーにかなるくね……?

 

 …………せやな、アレでまず浴槽バスタブを用意して、んで、水、ってかお湯については、アレとアレであーすれば……

 うん、うんうん、いけそーじゃねー?

 とりま、試してみっか……?


 ——さて。

 コイツを、はたして上手く使えるのかどーか。

 あーしが風呂に入れるかどーかは、コイツにかかっている。

 この、魔道具に……!


 “想造構築機ファンタズマゴーリア”——内蔵された“自在変形物質メタモルマテリアル”を使用して、使用者の想像イメージ通りの物体を形成する。


 つまりは、イメージ通りのモノを創り出す、3Dプリンター的な道具ってコトね。

 ——下手にイロイロと家具的なものを買うよりも、これ一つあればなんでも創り出せるから便利ですよ……!

 たしか、こんなカンジにあの店員さんにおススメされて買ったヤツ。

 

 これがあれば、ベッドも、ソファも、棚も、タンスも……そして浴槽も、なんでも作れるってハナシ。

 しかも再利用可らしーから、必要な時に必要なモノを必要なだけ作れる——とかなんとか。

 

 イメージを形にする道具だから、じゃあ……イメージが貧弱だと、上手く作れないってコトなんかね。

 ……まあ、浴槽なんてゆーてただデカいだけの、水が入る容器でしょ、よーは。

 そのくらいなら、あーしにだって作れる……ハズ。


 つーわけで、あーしはこの魔法の3Dプリンターで浴槽を作ってみた。

 

 そして——。

 

 何度かの失敗を経て……ちゃんと浴槽は完成したのだった。


 ——や……なんとかなったわ……。


 最初は形を変えるのがなかなか難しかったケド、慣れてきたら、ワリとイメージ通りに形を作れた。

 形を作るのはまだカンタンだったケド、形以外にも——硬さとか、質感とか、重さとか……その辺もイメージしていかないといけなくて、そこを同時にやっていくのがなかなか難しかった。

 でも逆に言えば、その辺もマジで自由に変えられるってコトだから……マジでイロイロと作れそーだよね、コレ。


 さて。ちょっと不恰好ぶかっこーだけど、ちゃんと浴槽も出来た。

 んで、お次は……水、とゆうか、お湯を張らないとなんだケド。

 さすがに風呂に入れる量の水を、水筒から出すってワケにはいかない。あれはあくまで飲み水だし。

 では、どうするのかとゆーと……コレを使う。


 “幻水放出管ウォーターフォーサー”——魔素マナより“幻物ファンタズマ”の水を生成・放出する。


 コレはなんか、水道の代わりになる道具ってカンジのヤツ。

 なんかこれから出る水は、フツーとは違う特殊な水で、魔力によって作られた水とかいうアレらしい。

 魔力によって作られた水なので、魔力が無くなると消えてしまうんだと。

 

 なので飲み水としては使えないワケだケド、風呂の水(お湯)としては使えるハズ。

 そんなすぐに消えるとゆーワケでもなく、とゆうかどれくらいのかは、込められた魔力によるっぽいので、ゆっくり風呂に入る間は消えないくらいにも出来る……ハズ。

 初めて使うし、どれくらいの魔力でどれくらいの時間もつのかは分からん。だからまあ、多めにやっておけば間違いなかろ。

 

 あーしは気持ち多めの魔力を込めるよーにしてから、“命名——蛇口くんウォーターフォーサー”を浴槽に向けて水を放出してみた。

 ドバドバッ——と、勢いよく水が出て、浴槽に溜まっていく。

 その水は、見た目も——感触も、まるでフツーにフツーの水だケド……これが、しばらくすると消えてなくなっちまうんか……。

 ……でも考えてみりゃ、そのほーが後始末もラクだし、むしろ助かるカモ?


 けっこうな勢いで水を出したので、そう時間もかからず、浴槽に水が溜まった。

 さて、では次は、この水をお湯にしなきゃなんだケド。

 さすがにこの量を料理に使ったコンロで沸かすのはムリがあるやろーなー。

 そんなら——このアイテムを使ってみよーか。


 “暖気付与機ヒートエフェクター”——対象に暖気を付与し、温度を上げる。


 なんにでも使える電子レンジ的なアイテム——だと思われる。

 これも魔力によってパワーを変更出来るので、たっぷりのパワーでやればなんとか沸かせられんジャネ? ってね。

 

 さっそく試してみた。

 なにやらじゃっかん銃っぽい見た目の“ヒートくん”を、浴槽の水に向けて使用する。けっこうパワー強めで。

 結果——三十秒とかからずにお湯が沸いた。

 

 てか沸かしすぎたカモ……?

 ちょっと指をつけて——あッッッツ!!

 あっつ……! ヤケドするって、コレ……!

 

 ……やべぇ、どーしよ、これじゃすぐに入れんジャン。

 追加の水で薄めようにも……ワリといっぱいだし、あんま足すとあふれっぞ。そもそもここは風呂場じゃねーんだし、溢れたら困る。

 だけど悠長ゆうちょーに冷めるの待つのは時間がムダやし、そもそもチンタラしてたら水が消えるし……。

 ……んなら、これの出番か。


 “冷気付与機コールドエフェクター”——対象に冷気を付与し、温度を下げる。


 もちろんコッチも買ってある。

 さて、今度は様子よーす見ながら、な?


 “コールドくん”を使ったコトで、湯船の温度はちょーどイイくらいになった。

 よし、よし……!

 んなら……入りますか、久々ヒサビサのお風呂に……!



 ——ふうううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………!!


 久しぶりのお風呂は、控えめに言って、サイコーだった。


「んいいいぃぃぃぃぃぃぃぃんあああぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!」


 思わず口から謎のセリフを発してしまったり——しながらもまったりと——湯船に浸かり……

 あーしは存分に、バスタイムを満喫した。


 風呂から上がったあーしは、風呂上がりのケアをしたりなどしつつ、寝るための準備をしていった。

 ——スキンケアして、歯も磨いて、おトイレも済ませて、と……


 ——え、トイレはどーしたって……?


 ……もちろん、そこはね、抜かりねーよ。


 “秘密の花園シークトイレット”——携帯式トイレ。内部は“秘密の花園亜空間”へと繋がっており、そこへいざなわれた“妖精たち排泄物”は、楽園の礎となる分解され土に還る


 ……まあ、なんか上手いこと魔法でアレされるらしーから、問題ナイってことよ。


 そんなこんなで寝る準備も終わったので、寝ようと思うんだケド……

 さて、寝袋的なアイテムもちゃんと買ってはあるんやけど……やっぱベッドで寝たいわなー、出来ればね。

 いやまー、さすがにベッドは買ってないんだケド……それをゆーなら浴槽だって買ってねーし、ナ。

 ……よしっ、出番だゾ、“3Dプリンター的奴”〜〜!


 グニュニュニュニュニュニュッ——っとぉ……。

 

 はいっ——ベッド完☆成!


 ゆーてベッドなんて、土台の上にマットレス置くだけやし、カンタンなもんよ。

 まあ、マットレスの弾力に関してはちょっと手がかかったケドね。やっぱここは寝心地に直結すっから。

 固すぎず、柔らかすぎずのいい塩梅アンバイを模索して、こだわりマシタ。


 掛け布団は無いから……仕方ない、そこは寝袋でいーか。

 ベッドの上で寝袋を使うってのもなんか変なカンジやけど、まあこの寝袋もなかなかの性能のヤツだしナ、その点は問題ナイ。


 それじゃー、寝るとすっか……

 ——っと、そーだ! アレ使うの忘れてた!


 “読取式結界展開装置シールドプレイヤー/カートリッジタイプ”——付属の術式盤カートリッジを読み取ることにより、それぞれの効果の結界を展開する。


 あ、あとコレもな。


 “不審番警鐘ヴィジランスアラート”——所定の範囲に特定の対象が侵入した際に、それを検知して警鐘アラートを鳴らす。


 安心してグッスリと寝るためには、コイツらも使っておいたほーがいーよね。

 さてと、さっさと使ったら寝るぞー。

 

 ——うわ、これ、使い方めっちゃややこしいジャン……


 はよ寝たいのにやり方難しくて、なかなか時間かかった……ケド、安眠のために、あーしはガンバった。

 

 そして、なんとかかんとか二つのアイテムを起動するのに成功したところで、力尽きたあーしは、そっからすぐさまベッドに倒れ込むと、ソッコーで眠りの世界へと旅立ったのだった……。


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