第44話 某死にゲー的フィールド



 ——ああああああココはオカシイ!!


 そう、ここはおかしい。

 ……いや、確かに、ぱっと見ですでにイロイロおかしーケドね、ここ。

 でもがあるってコトよ。


 

 ——投げつけた光る球が目の前に落ちて……。


 その後、イロイロと試行錯誤しこーさくごをしてみた結果……この場には何やら異常いじょーなチカラが働いているってコトを、あーしは突き止めた。


 結論からゆーと、この場所は、『上昇に制限がかかる』という性質がある。

 決定的な証拠しょーこを掴んだのは、コレまた“鑑定”が役に立ったオカゲだった。


 どうにも上に飛ばそうとするのがムリってのをなんとなく察したあーしは、“魔気球マナバルーン”を使ってみた。

 フツーなら、これは魔力を使って浮かんでいくというアイテムのハズなんだケド……案の定、まったく上に上がらない。

 

 ただ、光の球の時と違って、すぐに下に落ちることもなく、とはいえ上昇していくこともなく、その場で停止していた。

 その状態のバルーンにあーしは“鑑定”を使った。——厳密には、バルーンにではなく、を調べた。


 すると、こんなんが出てきた。


 “空装領域効果フィールドエフェクト”——『上昇不可ライジングロード』——「実体のあるものが、空中で上昇することを阻害する効果」


 ……つまり、そーゆーことらしーよ。


 いやマジ、ジャンプも出来ねーから、ここ。

 ジャンプしても、両足が地面から離れた瞬間に上昇が止まるから、すぐに落ちる。

 最初に試した時は、マジで体の感覚がバグった。ガクーン! なって転びかけた。

 なんなら普通に走るだけでも、じゃっかん違和感イワカンあるからね。


 いやいや、こんな効果がこんな場所にあるのヤバいっしょ。

 周りガケだらけぞ? 足踏み外したら暗闇に真っ逆さまなのに、飛ぶこと出来ねんぞ?

 バルーンの次には剣くんでの浮遊ふゆーも試してみたケド、やっぱり上には上がれなくて、よくて真横に滑空しか出来なかった。

 

 剣くん単体でも(上には)飛ばせないから、あーしの得意技である“回転飛剣ソードブーメラン”もここではめっちゃ使いにくい。マジ超ライナーでしか飛ばせん……。

 “推進剣撃ブレイドスラスター”とか使ってみても、結果は同じ。上には行かん。

 ただ唯一、“飛翔剣撃エアスラッシュ”はフツーに上にも飛ばせた。……コイツは実体が無いからってことなんかね?


 しかしこーなると……ただ動きにくいってだけじゃなくて、戦闘にも大きく影響するやんけ、この効果。

 ……土壇場で気がつくことにならんかったのは、せめてもマシだったか……。


 あーしはその後もイロイロと試してみて、やっとどーにか一つ、活路のようなものを見つけた。

 ここで脚光きゃっこーを浴びたのが、“魔動鋼線マジックワイヤー”という、このアイテム。


 このワイヤーは、あーしの意思通りに、自由自在に動かせる魔法のワイヤーだ。

 けっこーなパワーもあって、あーしの体くらいならフツーに持ち上げることができる。

 ジッサイに、ワイヤーを地面に垂らして支えにして、そんであーしを持ち上げるよーにやってみたら、フツーに出来た。

 そう、このワイヤーを使ったら、上にのぼることが出来たのだ。


 フィールドのナンチャラとかゆー効果は、“空中で上昇できない”効果と言っていた。

 だからまあ、ワイヤーを介して地面に接していれば、上に昇っていくことも出来るってコトなんじゃろ。


 あーしはさらに、空中でワイヤーを伸ばした時のことも試してみた。——その為には、ちょっとメンドーな手順がひつよーだったケド。

 まずあーしは、ワイヤーを使って上昇した位置で、バルーンを使う。

 その場に浮いているバルーンに吊られて状態で、あーしはワイヤーを向けて伸ばしてみる。

 すると、ワイヤーはなんの問題もなく伸ばすことが出来た。


 ……ワイヤーはあーしの体と繋がっているから、ではないってコトなんかね?

 まあ、そーゆうことなら、あーしがウッカリこの足場から落っこちても、ワイヤーが届く範囲ならギリ復帰できるってコトじゃんな。

 んならこのワイヤーは、この場所では必須装備ってことデスナ。

 まあ、バルーンとかもアンガイ使えるカモだから、装備しとくかー。


 あーしはとりま、すぐに使えるよーにワイヤーとバルーンをベルトに装着して身につける。

 ——ちなこのベルトも、あの店で新たに買ったやつで、強盗からパクったやつからはアップデートされてる。

 コイツはハーネスみたいに体に固定するような感じのベルトなので、ワイヤーやバルーンを装着してぶら下がるのにも便利そーな系のやつなのだ。

 

 ちな、ワイヤーの先っちょには、“魔動固定具マジックアンカー”という付属のアイテムが装着されてる。

 コイツの効果は、単純に「どんな面にも引っ付けることができて、外れない」とゆうもの。

 コイツの操作もあーしの意思一つで切り替えられるから、なかなか便利。

 

 コンパスについては、いったんポーチにしまっておく。壊れたら困るかんね。確認のたびに取り出すのはメンドーだけど、しゃーない。

 ま、ここから見える範囲ではただの一本道だから、使うよーになるのはまだ先になりそーだケド。


 

 準備も出来たので、あーしはついにその場からの移動を開始して、一本道を先に進んで行った。

 気持ち的には慎重に進みながらも、あーしはここでの動きを確認していった。

 だって、軽くジャンプしただけで影響が出るワケだからね。走るにも違和感ある。だからその辺を慣らしておかねーと、と思って。

 だってこの先、何が出てくっかも分かんねーんだし。


 いくらか進んだ辺りで、一本道は終了した。

 なにやら地面の幅が広がって、道とゆーより平原ってカンジの場所に出てきた。

 相変わらず空を含めた何もかもが真っ暗だけど、広がった地面の先に、なにやらモノっぽいのが存在しているのがかすかに見える。

 アレは……なんなんだろーか。木? 岩? それとも、建物……?

 ま、いいや。とりま近寄ってみよ。


 近寄ってみたその物体は、岩か何かのようでもあり、あるいは、崩れ去ってボロボロになった建物の残骸みたいでもあった。


 とか思ってたら、その建物の陰からにゅっ、って誰かが出てきた。

 えっ、人?! ——と、一瞬思ったケド、出てきたのはタダのガイコツだった。


 ——なんだ、人かと思ったのに、ただのホネじゃん……って、ホネ? いやてか、なんかコイツ動いてね?


 なんか理科室にある人体骨格的な、まんまガイコツってカンジのヤツが、フツーに歩いてコッチに寄ってきた。

 しかも両手に剣と盾をそれぞれ持ってるし。


「え、なんなんオマエ?」


 あーしの問いに対して、ガイコツはとーぜんのよーに返事をすることはなく、そのままあーしの近くまで来ると、右手の剣を振りかぶって——


 うおっ、アブ——マジあぶァッッ!!


 とっさに後ろに飛びのこうとして——ガクンなって飛べず——ギリギリで倒れ込むよーに地面を転がってかわした。

 あっぶぁ! あっぶぁ……!

 せやった……! ここ飛べねーんだった! 回避ミスったマジ危ねっ……!


 あーしは転がりながら距離を取ると素早く起き上がって、剣を抜いた。


「おうコラ! オメーいきなり襲いかかるとはいい度胸どきょーしてんな! ふざけやがってよぉ、んのドタマかち割んぞ、あぁん!?」


 ミスって死にかけたのにマジでビビったあーしは——ショックで弱気になりそうな内心をごまかすよーに——あえて暴言を吐いて気持ちを立て直す。

 しかし、とーぜんのよーに、ホネはそんなあーしの繊細センサイな乙女心になど構うことなく、ズイズイと間合いを詰めてくる。


 目の前に迫ったホネが、あーしに向けてまたもや剣を振りかぶって——


 遅いッ——!


 ——振り下ろす前に、飛び込んだあーしの攻撃により頭部を粉砕された。


 頭を砕かれたホネは、なおもしばらくカタカタ震えていたケド、すぐに倒れて動かなくなった。


「なんなんコイツ……?」


 なんでホネが動いてんの? つーか襲ってきたし、コイツも魔物モンスターなんか……?

 あ、そーだ、“鑑定”、してみっか。


 あーしは転がっているホネに向けて“鑑定”を使ってみる。


 判定……結果——『幽骨人の遺骨スケルトンボーン


 とか出た。


 うーん、とりま、コイツはモンスターってことで間違いないっぽい。

 んでこの骨は、コイツの素材ということになるんかな……?

 いや、要らねぇケドね、骨とか。拾いたくねぇし。


 と、思ったんだケド、骨の他にも何かがあったので、ソイツも鑑定してみると——『魔石』だった。


 あ、これは知ってる。

 この“魔石”ってやつ、今までにも解体した時に出てきてたヤツなんだケド、なんかモンスターからはこれが取れるらしーんよ。

 んでこれはフツーに売れるヤツだから、とりま拾っとけってカンジなんよ。


 というワケで、この石は拾っておくとすっか。

 石以外にはもう拾うモノはねーかな……って、あ、剣と盾があった。

 ……これもいちおー拾っとくか。

 あーしには剣くんあるし、使うつもりはゼンゼンねーケド、売ればカネになるかもだし。


 さて、それじゃ拾うモンも拾ったし、先に進むとすっか。

 やー、だけどここ、モンスターいるジャンよ。

 うーん、いちいち戦うのもメンドーだし、出来れば避けていきたいところだケド……。

 そーだ、んなら、アレを使ってみよーかな。


 あーしはポーチからコンパスを取り出すと、「敵」のカードをセットして使ってみる。

 するとすぐに、針がどこぞの方向で止まった。


 フム……やっぱりまだ他にもいるナ。

 んなら、この針の指してるところは避けて進も。


 

 つーわけで、あーしはコンパスが敵を示す方を避けながら、先へと進んで行った。

 

 進んでいくと、針の向きがグルッと変化する時がある。

 どうもこのコンパスが示す対象たいしょーは一番近いヤツになるっぽいので、相手とあーしの位置によってはそーゆー風に切り替わるワケ。

 ま、どっちにしろあーしは、針の指す方を注意して避けていけばいいだけだケドね。


 あーしはそーやって敵を避けつつも、敵ってのがどんなヤツなのかをちょくちょくは確認してみてた。

 あんま近づき過ぎるとアレだから、遠くから観察してみたりして。

 そこで役に立ったのが“双眼鏡”。——あ、ハイ、実はこんなんもフツーに買ってマシタ。

 まあこれは魔法の道具じゃなくて、フツーの双眼鏡なんだケド。でも倍率も変更できて、けっこー遠くまで見える。


 んでこの双眼鏡を使って観察してみて、さらには“鑑定”も一緒に使ってみたことで、あーしはこの辺にいるモンスターの種類をある程度てーど把握はーくすることができた。

 例えば、今まさにあーしが双眼鏡越しに確認している

 アイツに鑑定を使ってみると、どー出るかとゆーと——


『“汎用鑑定ノーマルアナライズ”』


 判定……結果——


 Lvレベル——『8』

 名称——『彷徨える亡者アストゥレイ・ホロウ

 族種——『不死族アンデッド

 属性——『闇』

 特性——『毒無効ヴェノム・インバリッド


 と、こんなカンジのことが判明する。


 イロイロ見てみた結果、この辺にいるモンスターは主に三種類だと分かった。

 

 “亡者ホロウ”とかゆー、ガリガリに痩せてて肌がめっちゃ白い、ガイコツに皮がついただけみたいな人型のやつ。

 “幽骨人スケルトン”とかゆー、動くガイコツ。

 “動死体ゾンビ”とかゆー、動く死体。


 コイツらはゼンブ“不死族アンデッド”とかゆー種類のモンスターだった。

 とりまこのアンデッドとかゆーのは、要はホラーに出てくる系のヤツらってコト。

 ホロウは貞子さだこ的なお化けだし、スケルトンはホネだし、ゾンビはマジで死体がまんま動いてるってカンジ。


 今んとこは避けて通れてるから、最初のホネ以降は戦いになることはなかった。

 しかしこの辺りは……マジでリアルにホラーゾーンってカンジじゃねーかよ。

 あーしホラーは苦手ってワケではないケド……別に得意でも好きでもねーし。

 つーか一人になっちゃた先で出てきたモンスターが、よりにもよってのホラー系ってゆう……つーかその前は虫系のアリだしよ……


 戦いにはなってないケド、敵を避けながら進むダケでもワリと神経使うんだわ。

 こうして一人になると、仲間がいてくれるのがマジで心強いってのが分かる。

 中でもローグとか影の人スニィクさんがやってくれてた索敵、これがマジで頼もしいってのが、無くなったらよく分かる。

 マジで自分で敵を気にしながら進むの、スッゲー神経使うし疲れる……。


 んならもう、いっそ気にしないで手当たり次第に出てくるモンスター倒せばいいやん、なんても思わなくもナイ。

 でも、やっぱりそれはナイ。

 いやね……だってさ、ここのモンスターって、人型ヒトガタなんよ。ぜんぶ。

 

 ホネはまだいいよ、ゆーてホネだから、生き物ってカンジはせん。

 だけどホロウとかゾンビは、明らかにモンスターなのは分かるんだけど、それでもまだビミョーに人のカタチが残ってるワケ。

 それをぶちのめすってのは……相手がモンスターだとしても、あーしもできればエンリョしたいとこよ。

 まあゾンビとか、そもそもにおいとかヤバそうだし、まず近寄りたくねーし。


 

 それからも、コンパスを頼りに敵を避けながら進んでいたあーし。

 

 だけども、すでに時刻が夜に近づいていることに気がついたので、今日はもう休むことにした。

 この暗闇一辺倒の場所だと昼も夜も分かったもんじゃないケド、コンパスには時計的なやつもついてるから、それで大体の時間帯は分かるんよね。

 さっきふと確認したら、もう夜に近かった。……じっさい、体感的にも疲れが溜まって眠気もあるカンジあるし。


 寝床については、テントとかの野営道具がイロイロあるから、それも問題ナイ。

 問題は、そのテントやらをどこに設置すればいーのかってコト。


 あーしはしばしの間、疲れた頭でボーッと考えていたケド……ハッと気がついてコンパスを取り出した。

 そして、「安全地帯」のカードをセットして起動する。


 すると針がグルグルと回って……上を向いた。


 ——え、上……?


 針の先を確認してみたら、なんかそこには、一軒家がギリギリ収まるレベルの広さの大地が浮いていた。

 

 そーいや今までにも、いくつかこんな浮島があるのを見てた。まるで意識してなかったから、完全に背景だと認識してたケド。

 だいたい、浮いてるコト自体が——この変なとこ来てすぐの道だって浮いてたから——いまさら驚くことでもなかったし。


 ——んー、ナルホド……上か。


 確かに、そこなら敵は来れないし安全ジャン。

 うんうん、いーじゃん、あそこ。ちょうどいい大きさで、眺めも良さそーやんなぁ?

 

 まあ、それで、問題は……どーやってあそこまで行くんかってコトなんだケドね。


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