第42話 想像以上に大変だったんよ、いや、マジで



 ——はぁ……はぁ、死ぬかと思った……。


 あーしは息つく間もない怒涛ドトウの展開をなんとか切り抜けて、今、よーやく落ち着ける状態じょーたいになったのだった。

 うんうん、マジでキツかった。あーしマジふんばった。

 

 さて、それで……ここはどこなん……??

 ……つーかあーし、どーしよ、こっから。

 とりま落ち着こ……落ち着いて、一つずつ考えて、整理しよ……。

 まずはそう、ここに至るまでの経緯から、確認じゃ。



 ————ここまでのアレを、順に振り返っていくと……


 

 まず、フィールドに入ってから洞窟を進んでたら、魔物モンスターが出てきたワケじゃん。

 んで広いとこに移動して、あーしは最初、横っちょの穴のとこから眺めてたやん。

 したらなんか、水のヘビみたいなニョロニョロしたやつが出てきて、しかもコレがかなり強くて、けっこー苦戦してて……なんか、バリア張ってたあーしらのいるところも攻撃されて、バリア壊れちゃって。

 その頃には、あーしも見てるだけなのにめっちゃヤキモキしてたから、思わず飛び出しちゃったんだよね。


 んでそっからは、あーしも攻撃に参加したんだケド……いくら攻撃してもゼンゼン効かねんだわ、あの水ニョロ。

 つーか体が水だからさ、効くワケねんだわ。でも、ならなんで水が動いてんのってハナシなんだけどさ。んなもん知らねーっつの。

 それでもなんとか暴れてたんだケド、その内あーしもパワー切れしそーになってきて。

 攻撃は効かない上に、剣くんの能力であるパワー回復もなんかチョーシ悪いというか、あんま効かんくてよー。まじジリ貧なってた。後半はもう、逃げ回るしかねーってカンジになってた。


 そんな時によ、なんかいきなり頭ン中に直接声が聞こえるモンだからさ、マジびびった。

 んでもなんか、よく分からんけど攻撃が効くようになるかもってハナシだったから、——マジで? やった!? と思ったジャン。

 その後チャンス来てここぞとばかりに“回転飛剣こーげき”したら、マジで倒せたからね。そんときゃもー、ガッツポーズよ。——うしっ! よっしゃ! ってね。


 とか思ってたら、なんかめっちゃ大量の水来るしさ。

 水来るしでマジ苦しぃでもう来る死だよこれ。最初こそ飛び上がってかわしたケド、すぐに上まで水来たから、あーしフツーに飲み込まれておぼれたし、マジ死ぬかと思った。

 でも、ワリとスグに魔法の助けがきて息できるよーになったから、マジ助かった。


 まあケッキョクそのまま流されたんだケドね。

 

 めっちゃ遠くまで。ひたすら流されてた。

 まあ息は出来たから、溺れることはなかったケド。

 勢いもヤバかったから、あちこちぶつけて怪我しそーだったケド……でもそれもヘーキだった。


 それはなんでかとゆーと、色々とね、魔法の援護をもらってたからね。

 流されてる間も、あの……なんちゃらリンク? とかいう魔法で、あーしとは繋がってたっぽい。

 んでそれ通してバンバン追加の魔法の援護が来てて、それでバリアとか回復とかよく分からんけど色々してもらったから、ジェットコースターもビックリの天然ウォータースライダー(もちろん安全基準の“あ”の字もない)もなんとか乗り切れた。


 そっからよ、そっから。

 ウォータースライダー終わって、なんとか地面に降り立って、ようやくこの足で動けるぞと思ったら、目の前にいたのが大量のアリ

 モチロン、ただのアリなんかじゃナイ。だってデカいからさ、大きさが。ちっさいヤツでもあーしの身長くらいのデカさは軽くあったもん、ソイツら。

 つまりはコイツらも、モンスターってことよ。


 んでそいつらがさ、なんか怒っとんのよね。めっちゃ襲い掛かってくるワケ。一斉いっせーに、大量たいりょーによ。

 なんでやろね? 水浸しになったから? だから怒ってんの? そこ巣のど真ん中みたいだったし?

 いや、そんな言われてもぉ……水はあーしのせいじゃねーし。なんて言っても、モチロン、聞いてくれるワケないし。


 もーしょーがないから、あーしはひたすら襲いかかってくるアリを倒しながら、ガムシャラに逃げ回った。

 もう右を向いても左を向いてもアリ。あっちもこっちもアリ。上も下も壁も天井もアリ。アリアリアリアリ。アリーヴェデルチさよならバイバイ

 マジもう逃げるが勝ちよ、こんなん。相手してられん。数多すぎ。てかフツーにキモいから。アリも虫だし。まあ、ハチとかに比べたらまだマシな部類やけど。


 つーわけであーしは、アリの大群の中を、剣くんを振り回して活路を斬り開きながら突破していった。

 ——もう無我夢中で、ワザもバンバン使って。

 アリの集団がやってくれば、“波動刃撃ブラスターエッジ”で広範囲を薙ぎ払って。

 四方から同時に襲ってきたら、“多段同撃デュアルスラッシュ”で迎え撃って。

 集合したアリが突撃してきたら、“波動衝撃ブレイズブラスター”で吹き飛ばして。

 ギチギチにアリが密集してて、にっちもさっちもいかない時には、“波動刃衝撃エクステンスブレイズ”で一帯をまとめて壊滅させて……。

 

 アリはいくらでもいたから、逆に言えば、パワーも回復し放題だった。

 だから残りパワーを気にすることなくブッパしまくれたンデ、なんとかなったってカンジ。


 あーしはホント、ただひたすらにアリを倒し続けて、とにかくその場から移動し続けて……

 気がついた時には、ここに来てた。

 ここまで来て、よーやくアリの襲撃が無くなったから、あーしはついに立ち止まって落ち着くことが出来たのだ……。


 ——まあ、そんなワケだから、ここがどこなのかがまったくワカランのよね。


 ……さて、それで、あーしはこれから、いったいどーすればいーのか、ってコトなんだケド。

 ソッコーで流されたあーしは、こうして一人になって、みんなとはぐれちゃってる。

 じゃあ他のみんなはどーしてるんだろー……? ってゆーのは……ある程度は


 というのは、アレよ、なんか“念話テレパス”とかゆーやつ。コレ。

 あのなんちゃらリンクの“繋がり”があれば、コレで話が出来るとゆうね。離れててもね。

 だから、あーしが水に流されてる間や、その後のアリと戦ってる間にも、これで他のみんなの状況が伝わってきてた。

 あーしは頭の中に直接聞こえるその話を、まるでラジオみたいに流し聞いて——そのおかげで、みんなの状況を把握できたのだった。

 コレ、こっちからは話せないから一方通行なんよね。あーし“念話コレ”で話すやり方知らねーから。


 それで聞いた話によれば、あの水によってみんなも流されたんだケド、なんとかみんな無事っぽいってカンジだった。

 

 とりま一番心配だったフランツさん達は、あのバリアとか張ってた横穴にいたからすぐに流されることはなくて、その後も上手いこと魔法とかを駆使したことで、なんとか水を乗り切れたみたいだった。

 まあそれでもけっきょく流されちゃってはいるみたいなんだケド。でもやっぱバリアのお陰で、怪我もなく無事に乗り切れてるっぽい。

 

 んでこの横穴にいたメンバーが、フランツさん達のパーティーの四人と、ラナとエリーゼさんの魔法使い組の二人。……あ、いや、三人か、あの魔女の人もいたわ。

 それとイスタさんとポールさんと影の人(たぶんいたハズ)のサポート組の三人。そして最後に、鎧の人もここに合流してるっぽかった。

 このグループは人数も多いし魔法使いもたくさん居るしで、まあこのメンツなら大丈夫っしょ、って思うところ。


 んで問題は残りの三人なんだケド、トランシェさんと猫の人は、合流して二人組になってるよーだ。

 この二人もどっかに流されてるんだけど、まあこの二人なら大丈夫そーかな、と思う。

 なんやかんやこの二人は連携も上手いし。トランシェさんの方は、魔法も使えるもんね。


 んで最後の一人、ランスリータさんなんだけど……なんとこの人、あの後一人で敵の本体のところまで行って、それで倒しちゃったらしい(どうも、本体はまだ生き残ってたってことらしーわ)。

 あの激流の中をどーやって移動したんよ?! ってなるんだけど……聞いたハナシだと、どーにも泳ぎの得意な海竜とかゆーのを呼び出して、それに乗って水ん中進んで行ったとか、なんとか。

 ……確かにこの人、あの宙に浮いた船を引かせるのになんか竜を呼び出したりとかしてたケド……どーもあの時呼んだヤツ以外にもいるみたいでね、しかも泳ぎの得意なヤツが。


 その海竜とかゆーのも、やっぱりモンスターの一種みたいなんだケド……どうやらこのランスリータさんとゆー人は、モンスターを手懐てなずけて従わせることが出来るジョブとゆーか——スキルとゆーか、そんなんを持ってるらしーんよね。

 それでさ、なんとね……

 あーしらを襲ってきてたあの水を操るモンスター。名前は……なんだったっけ。まあ、あの水ニョロ。

 なんかさ、アイツも倒すついでに、そのスキル使って仲間にしちゃったらしい。

 なんかそーとー弱ってたから、意外なほどすんなり成功したって言ってた。


 ……まあ、そんなカンジだから、この人についてはなんも心配する必要はなさそーだわ。


 てなワケで、他のみんなもそれぞれいくつかのグループに分かれてバラバラになっちゃってるってコトなんスよね。今の状況じょーきょーはね。


 ……まあ、それを踏まえて、んじゃあーしこれからどーすんだよってことよ。

 まずもっての問題が、例のリンク、あれがなんか切れちゃってんのよ、今。

 アリと戦ってた時はまだラジオが流れてたから、その頃はまだ繋がってたはずなんだケド……ここに落ち着いた時にはもう切れてた。

 まあ、元々モトモトこっちからの発信は出来なかったんだケド、今は受信も出来なくなったってコトだから、他のみんなの様子もそれ以降は分からんワケ。


 とりま通信が切れる前に出てた話の中では、「まずは全員が合流することを目標に」ってコトになってた。ま、とーぜんあーしもそれを目指すつもりではあるんだケド。

 でも例のリンクが切れちゃったから、今はみんなの場所も感じ取れないんで、さーて、どっちに進めばいいのか……ってなってる。


 ただ、それについては一つ、あーしにはアテがある。

 リンクは切れてしまったケド、別の手がかりがあーしの体には残っているらしーんよ。——ラナのかけてくれた魔法が。

 通信が切れる前に、本人があーし宛に言ってたんだケド、なんか、はぐれた時にもまたえるようになる“おまじない”(?)みたいなのをかけてくれたらしい。

 リンクがあれば問題ないんだけど、もしそれが無くなってしまった場合にも、なんとかなるようにって。

 リンクはほっといたら効果切れるし、なんかの拍子に切れちゃうこともあるからって。いや、まさに今がそーなんよね。

 この“おまじない”については、そう簡単に消えることはないし、長持ちするから、もしもの時のために……ってね。


 んでこの“おまじない”、効果としては——「かけた人術者」と「かけられた人被術者」が、お互いに相手に逢いたいと想ったら、引きあわされるように相手に逢える——って、そーゆうやつらしい。

 今のあーしにはこんなんがあるらしーので、ラナに逢うコトを考えていれば、とりまテキトーにやっててもいずれはラナに逢えるってことだから、まー、ダイジョーブなんじゃね? ってコト。

 あるいは、ラナの方があーしのコトを見つけてくれるカモしれないってことでしょ? つーか、むしろそっちの可能性の方がデカいやろ。なんせ向こうは魔法使いだし。

 そんならもう、細かいコトは気にせんとやってええってことジャン。


 まーさすがのあーしもね、こんなよー分からん所で一人になったら、ちょっと不安になる部分はあるよ……?

 だけどあーしは、いうほど心配はしていなかったりする。

 なんせ今のあーしは——ひろった剣くん以外には何も持ってなかった、あの最初の森の時や、一文無しで挑んだあの護衛依頼の時なんかとは、ゼンゼン違ってっから。

 あの時にはなくて、今のあーしにあるモノ……それはつまり、この腰に付けているポーチよ。


 あの店で買ったアレやコレが……このちっこいポーチの中には、これでもかと入ってんのダ……!

 なんなら、買った便利グッズのアレコレを試せるって、少しワクワクしてるくらいだかんね。

 なんせ魔法の道具のやつとか、不思議で便利な道具たちを、これでもかと買っておりマスから、あーし。

 制服一つで着の身着のままで他には何もなかった——あの頃のあーしとは違うんよ……!


 さて、それじゃ、ジッとしてるのはしょーに合わないンで、テキトーに進んでみるとすっかね。

 んならまあ、来た方とは別の方に行くとすっかな。

 いやー、みんなとの合流を目指すなら戻るべきなんカモだけど、それってさ、またあのアリの中を進んで行かなきゃいけねーワケじゃん? やー、イヤっす。

 

 つーかまず、どっから来たのかとかもう分かんねーから。必死に走って逃げ回ってたし、道とかゼンゼン覚えてない。

 てかそもそも覚えようともしてないし。あそこマジでやたら入り組んでたし。マジでアリの巣ってカンジに、縦にも横にもぐちゃぐちゃだったから。

 むしろもっかい入ったら、今度こそ出てこれないかもしれない。マジで、今こーしてアリの巣の外に出られたことが、コレもう奇跡なんよ。そして、奇跡は二度は起こらんから奇跡とゆーのだ。


 というわけで、あーしは来た道には戻らずに先へ進むことにした。

 

 改めて、この周囲と、それから進む先についてを確認してみる。

 相変わらず、場所としては地下だ。一切の光のない真っ暗な洞窟の中である。

 今は魔法の効果が残ってるからそれでも見えるケド、これも切れたら、なんも見えなくなるやろね……。


 さっきまでのアリの巣の場所は、まさに自然の洞窟といったカンジだった。

 だけどこの辺りからは、どうもフインキが変わってくる。

 広さがまず広くなってるし、地面も平らになって続いてる。全体的に整然せーぜんとした印象を受ける系なアレ。

 いや、もしかしたらこの先……人の手が入ってるんじゃね? ってなんか、そんな気配を感じなくもないとゆーか……。

 まあそれもあるから、やっぱ向かうとしたらこっちなんかなって。


 ——まあ、いつまでもここにいたってしょーがないし、進むとすっか。


 てなわけで、あーしは一人、——特に深く考えることもなく——どことも知れぬ場所から、これまたどことも知れぬ場所へ、突き進むべく一歩を踏み出したのだった。





 ——まるで、何かに誘い込まれているかのように——。


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