第36話 ちなみにこの前フリ口上、別に魔法の詠唱でもなんでもないからね



 空飛ぶ船ならマノ森の奥部までもラクショーで行けるのかと思ったら、さすがにそうカンタンには行かなかった。


「て、敵襲です! 左舷さげん前方から“怪鉤鷲グラブイーグル”の群れ、進路はこちら……数は、八! 距離、千六百! ——だそうです!」


 フランツさんが、全員に通るような大声を上げた。


 それぞれの場所で思い思いに過ごしていた面々は、その言葉に瞬時に反応した。

 それまではあーしらとおしゃべりしていたラナも——瞬時に反応すると、どこからともなく取り出した何かを構えた。


 続いてイスタさんが、全体に注意事項を告げた。


「戦闘の前に一つ注意を! ——この“飛空艇フライトセイル”は借り物なので、皆さん、出来るだけ無傷で済むように配慮をお願いします!」

「もちろん! 任せてくれたまえ、イスタ嬢。怪鉤鷲グラブイーグルの八やそこら、このボクにかかればワケないよ。近寄る前に落としてやるさ。——というわけで皆の衆、連中はボクに任せてくれたまえ!」


 そう言ってオシャレな帽子が特徴的な美形の人は、なにやら杖のようなものを船の前方で構えた。

 そして、なんかデカいワシみたいな魔物モンスターがハッキリと視認できる距離まで近寄ってきたところで、攻撃を開始した。


「さあ、生まれでよ、美しくも鋭利なる氷槍たちよ。凍てついた鋭槍はあま翔ける流星となって、優雅な空の旅を邪魔するあの無粋な乱入者共に食らいつくだろう! そしてやつばらの翼を折り、その体の芯までをも凍らせて、遥か地上まで真っ逆さまに叩き落とす、そはまさに、万物にいずれ訪れる運命の具現化約束されし死の抱擁なり! ……では、いざゆかん、陽光を照り返し輝く八振りの氷槍よ、この蒼天に光陰ひるがえして華麗に舞い踊れぇぃ——ッ!」


 やたらと長い口上を終わらせたところで、美形の人は杖を振り上げる。


『“追尾する数多の凍霜なる氷槍マルチホーミング・フローズン・アイシクルランス”』


 すると、構えた杖の先に“氷で出来てるっぽい感じの槍的な形のモノ”がいくつも現れる。それらは勢いよく飛び出して、デカワシに襲いかかっていった。

 デカワシは飛んできた氷の槍をかわそうと回避動作をとった。しかし氷の槍は、

 その結果、ワシは避けきれずに氷槍を食らう。氷槍を受けたワシは一撃で動きが止まり、そのまま地上へ落下していった。

 そうしてすべてのワシが、あっという間に倒されてしまった。


「むぅ……“追尾ホーミング”付きとはいえ、同時に八本もの“氷槍アイシクルランス”をそれぞれ的確に操作してる……しかもただの“氷槍アイシクルランス”じゃなくて、アレはおそらく“凍霜フロスト”の術式コードを加えて強化されているようね……。これが、到達者プロの『魔剣士マギアフェンサー』……。“繚乱”のトランシェトランシェ“ザ・ブリリアントラッシュ”、か。性格は鬱陶うっとうしいけど……実力は本物みたいね」


 あーしの隣でトランシェさんの魔法を見ていたラナが、何やら真剣な顔で呟いていた。


「……いや、すごくね? 今の。アイツら一瞬でやられちゃったし……」

「まあ、プロクラスにもなる魔術使いメイジクラフターなら、あれくらいできて当然よ。……ていうか、わたしもあれくらいは普通に出来るし」

「え、マジ?」

「当たり前でしょ。わたしを誰だと思ってんの?」

「マジで……? ラナってけっこーすごいヤツだったの?」

「いまさらナニ言ってんのよアンタ! すごいに決まってんでしょ! わたしは天才なんだから……!」

「自分で言うん、ソレ?」

「事実を言って何が悪いっての?」

「あ……そっすかぁ」


 ゆうてあーしはラナにそう言われても半信半疑なカンジだったんだケド……それからすぐに全信無疑に変わるコトになった。


 さっきのデカワシを皮切りに、そっからも空を飛ぶモンスターが色々と襲いかかってきた。

 だけどそいつらは全員、船に近づく前にトランシェさんが魔法で迎撃していった。


 しかし、襲いくるモンスターの数は次第にどんどん増えていった。

 何度目かの襲撃を、またもやトランシェさんが一人で撃退した辺りで、イスタさんがトランシェさんに忠告の言葉をかける。


「トランシェさん、一人で出しゃばりすぎですよ。他の人とも分担してください。魔力切れになりますよ」

「心配ご無用、この程度で魔力が切れたりはしないさ。——だけど、そうだね、いくらボクが美しく目立ってしまうからといって、みんなの出番を奪ってしまうのも忍びない、か……ああ、了解だ、イスタ嬢。なんとかボクも、この身より湧き上がるスター性を抑えてみ——」

「ラナさん、貴方も迎撃に参加してもらえますか?」

「言われなくても、そのつもりだったわよ」

「はい、それではお願いします」


 そうしてラナも、攻撃に参加するようになった。

 すると、すぐに次の敵がやってくる。


「敵出現! 左舷後方より接近中、“切々蜻蛉フライングリッパー”複数……数は十二! 距離、千八百!」


 フランツさんの号令に合わせて、マストの上にある乗り場に陣取ったラナは、言われた方向に向けて、手に持った武器を構えた。


『“貫く光の熱線レイライト・ブラスター”』


 すると、その銃のような形の武器から光る線がほとばしり、まだ遠くのモンスターに向けて空を一直線に通り抜けた。

 続けざまに、いくつもの光線を撃ち込むラナ。

 そうこうするうちに、モンスターは姿が分かる距離に近づいてきていた。しかし、その頃には大幅にその数を減らしており、そのデカいトンボのようなモンスターは、けっきょく船までたどり着く前にそのすべてがラナの射撃によって落とされた。


 これは……魔法なんか? いや、どっちかってーと、コレ、光線銃じゃね?

 でもスゲーつえぇやん。狙いも正確セイカクやし……や、ラナってけっこーやるじゃねーの。言うだけのコトはあるんか。


 その後もモンスターは襲ってきたケド、トランシェさんとラナの二人体制で迎撃することで、問題なく対処されていた。


 それからもこの二人だけで、モンスターを撃退して順調に進んでいたケド……フランツさんが悲鳴のような声で強敵の来訪を告げたことで、事態が動いた。


「て、敵出現! あ、相手は、グ——“鷲獅子グリフィン”です! 数はイチ! 方位は右舷前方、距離、四千! こちらはすでに補足されています!」


 フランツさんの言葉によって、その場に動揺がはしった。

 言われた方向に視線を向けながら、イスタさんが少しけわしい顔で誰にともなく呟く。


「グリフィン……大物が出ましたね」


 すると、その呟きにポールさんが反応した。

 

「あ、姉御あねご、どーすんだ? 空中でグリフィンと戦うなんて、さすがに分が悪いだろっ?!」

「そうですね……だいぶ目的地にも近づいたので、すぐに地上に下りて後は歩きに——いえ、しかし、グリフィンがこちらに到達するまでに、船の下降が果たして間に合うかどうか……」


 内心の迷いを表すようなイスタさんの煮え切らない感じの呟きに、その時、横から力強いハッキリとした声が割り込んだ——ランスリータさんだ。

 

「——もう地上へ下りるというのなら、牽引はここまででいいな? では、ヤツの相手はわれと“雷翼ウィントール”が引き受けよう」

「ランスリータさん……お任せしてもよろしいんですか? 相手はグリフィンですが……」

「愚問だな、イスタ。“空の王者”と空戦による一騎討ち……フン、相手にとって不足はない。“飛竜”と“鷲獅子”、どちらが本当の空の王者か、白黒はっきりつけてやるとしよう」

「……そうですか、分かりました。では、ご武運をお祈りします。——あ、それでは、別行動になりますから、出撃の前に“同調の契りリンクス・コネクト”をしておきましょう」そこでイスタさんは、あの魔女っぽい人の方を向いた。「オリビアさん、そういうわけなので、お手を貸してもらえますか?」

「——へ? ……あ、は、はいぃ、わ、私、あ、わ、分かりましたぁ……!」


 それから、手早く出撃の準備を済ませたランスリータさんは、綱を外した竜の背に飛び乗ると、グリフィンのいる方へ向けて飛び立っていった。

 彼女を見送ると、すぐにイスタさんが次の指示を出していく。


「さて……ランスリータさんの騎竜が無くては、どっちにしろこの船は進めません。ですので、当船はこれより下降を開始します。——まあ、目的地はもう目前に迫ってきていますので、あとは歩きでもそうはかからないでしょう。ですがそれは、ここからが本番だということでもあります。なにせ、目的地が近いということは、ここはすでに“魔の森”の奥部であるということですから。皆さん、下に降りてからも十分に気をつけて——」

「て、敵襲です! 大型の怪鳥——“焔炎の怪大鷲フレアベルグ”ですッ!! 左舷後方より一体、接近中! 距離は三千六百、ほど、だと……」


 しかしそれも途中で、フランツさんの発言にさえぎられた。

 

「なっ——!? ……言ったそばから新手ですか。しかも、相手はこれまた大物のフレアベルグ……」


 イスタさんは眉間にシワを寄せると、フランツさんに追加で確認する。


「相手はすでにこちらを補足しているんですか?」

「えっと、それは——」

「……ヤツはあの竜が去るのを見計らって襲ってきている。当然、もう捕捉されている」


 ボソリとそう呟いたのは、あの魔女の人とは違う意味で存在感の薄い、仮面みたいなの被ってる正体不明の人、名前は覚えてない。

 そういやこの人、普段はどこいるのか分からないんだケド、フランツさんが敵襲を告げる時にはなんか毎回その後ろにいるんだよね。

 つかそうか、この人がフランツさんに教えていたワケか。そうだ、確かローグと同じ役割だってなんか言ってたっけ。


「スニィクさん……ということは、もっと早い段階からフレアベルグの存在に気がついていたんですね……?」

「……」

「なぜ最初に補足した段階で、すぐに教えてくれなかったんです……?」

「……襲ってこないヤツまでわざわざ報告する必要はない——との判断だ。……そうでなければ、魔の森の奥部に入ってからは、ひっきりなしに報告する羽目になっているところだ。……そもそも、“竜嵐”の騎竜が露払いしていなければ、など飛行できたものではない。そんなことは、アンタも分かっているはずだろう……?」

「それはそうですが……いえ、そうだとしても、それは相手にもよると思います。フレアベルグほどの相手になれば、さすがに話が変わってくるのでは?」

「……状況にもよるだろう。騎竜がいる間は脅威では無かったし、騎竜がいなくなって襲ってくる兆候が見えた時点で、こうして報告している」

「……分かりました。しかし、次からはもう少し細かい情報共有をお願いしてもいいですか」

「……それがリーダーの決定なら、オレもそうするとしよう。だが、一介のギルド職員であるアンタに、現場のことをとやかく言われる筋合いはない。……例えその人物が、退、だ」

「……なるほど、でしたらフランツさ——」

「ちょっといいかい? 今はその辺の話よりも、間近に迫る脅威に対処する方が先決だとボクは思うんだけれど」

「そだにゃ。今は先にヤツを倒しちまうべきだにゃ。つーかこのままボヘッとしてたら、この船ぶっ壊されちゃうにゃ。それはイスタだって困るにゃ?」

「それは、まあ、確かにそうですけど」

「んにゃら、先にそっちを片付けるにゃ。——んじゃまー、あちしが出て引きつけるから、他の連中は攻撃よろしくにゃ。あ、あと行く前には魔法の支援をありったけ頼むにゃ。特に炎耐性にゃ」

「もちろんっ、ボクも出るけどねっ! ま、ボクは自力で出来なくもないけど、やっぱりここは本職に支援してもらうとしようかな。——というわけで、エリーゼ嬢、ボクにも支援、よろしく☆」

「あちしにも頼むにゃ」

「……ええ、もちろん、お任せください。皆さんを支援することが、わたくしの役目でございますので……」

「ふむ、奇跡による支援をご所望なら、我が輩にも可能であるが——」

「ボクは遠慮しておくよ」

「マスケは船の防衛だにゃ。ま、おめぇは今回は温存しておけにゃ」

「ふむ、あいわかった。この船のことは、我が輩に任せるといいのである」

「……出るのはトランシェさんと、サーヴァルさんのお二人ですか。でしたら、とりあえずお二人にも“同調の契りリンクス・コネクト”をしておきましょう。——オリビアさん、そちらもお願いします」

「……あ、は、はいぃ、りょ、了解ですぅ!」

「さて、空中戦となると、“浮遊の羽衣フェザーローブ”辺りを使っておこうかな。——どうだい、子猫ちゃん、君も必要かな? 必要なら、ボクが使ってあげるけど?」

「ウザい呼び方すんにゃにゃ。……あちしはラナに頼むからいいにゃ。——つーわけでラナ、頼んでいいかにゃ?」

「も、もちろん、構わないわよっ!」

「そうか、それならボクも、ラナちゃんにやってもらうとしようかな」

「オメーは自分で出来んだろ、自分でしろにゃ」

「いやいや、どうせなら美少女にやってもらう方がいいに決まってるじゃないか。そんなの当たり前のことだろう?」

「マジキモいにゃ。オメーのそういうところ……マジキモイと思うにゃ」

「二回も言う必要あるかい?」

「何回でも言わせろにゃ」


 それから慌ただしく準備を整えた二人は、モンスターを撃退するために船を飛び出して行った。

 空中にある船から飛び出したら、そこはとーぜん空中なワケだけど、二人は当たり前のように敵の元へ向かって行った。


 そして、あーしらの乗った船はといえば、少しずつ高度を落として地表にある森へと近づいていった。

 下へ降りていく間も、ラナはトランシェさん達が戦いに行ったモンスターへ船から援護射撃を行っていた。

 さっき使っていたビームの氷版みたいなヤツを撃ってるっぽくて、水色の光線が定期的に空にほとばしる。

 

 まだまだ遠くにいるモンスターに対してちゃんと効いているのかは、あーしには分からない。

 と思ったら、まるで返事をするようにそちらから飛んで来るものが……


 ——ってコレ、火の玉ッ!? ヤバッ、当たんぞコレッ!


 と、水色の光線が火の玉を迎撃——しかし火の玉はじゃっかん勢いを減らしつつも健在だった。——オイオイオイオイヤバいってコレッ!


「ちっ——! ダメか……」


 いやラナ! 「ダメか……」じゃねーんだケド?!

 火の玉はもう船の目前まで迫って来て——


「ぬうんっ——!」


 すると、全身鎧の人が火の玉に向かって何かを投げた。


『“聖鏡反射盾撃セインツシールドリフレクター”』


 光を発しながら飛んでいった何かは火の玉に激突し——船へと迫っていたそいつの軌道をあさっての方向に変えた。

 火の玉に当たって跳ね返ってきたものをキャッチする鎧の人——コレは、盾? 盾を投げつけて火の玉を打ち返したっぽい……?


「防衛は我が輩に任せて、ラナ殿は攻撃に専念するのである! 心配しなくとも、この船への攻撃はすべて我が輩が弾き返してやるのである」

「——ッ、わ、分かったわ!」


 ラナは言われた通りに、それからは攻撃に専念する。

 その後も相手からの反撃は何度か船を狙って来たケド、それらは鎧の人がゼンブ防いでくれていた。

 

 そうこうしているうちに、迎撃に出ていた二人の姿が確認出来るようになった。——それはつまり、モンスターが徐々にこの船に近寄って来ているということだった。

 見える距離までやって来たそのモンスターの見た目は——めっちゃデカい鳥、だった。特徴としては、首がすごい長い。あとはそう、炎を吹いてる。

 遠目に見ているから正確な大きさは分からんケド、そのそばで戦ってる二人の人間のサイズと比較すれば、その本来の大きさもなんとなく分かる。


 そして、そのデカい鳥と比べたらまるっきり小人なレベルの二人は、デカ鳥の周りを縦横無尽に飛び回って戦闘を繰り広げていた。

 トランシェさんは、基本的に付かず離れずの距離を保ちながら、氷の魔法っぽいのを撃ち込んでいる。

 もう一人の猫の人は、もっと近い距離でデカ鳥にまとわりつくようにして戦っていた。なんならデカ鳥の体にしがみついたりもしている。


 デカ鳥もデカ鳥で、多彩な攻撃でもって二人を迎えうっていた。

 口から火を吹いたり、クチバシで突いたり、鉤爪で掴みかかったり。んでたまに、こっちにも火の玉を飛ばしてきたり。

 さらには体に炎をまとわせたりなんかもして、あげくにはそのまま周辺全方位に向けて炎の熱波のようなものを発する攻撃に繋げたりとかして。

 

 しかし対する二人も上手いもので、トランシェさんは火炎放射なんかも魔法の盾みたいなので防いじゃうし。猫の人はとにかく素早く動いて攻撃をひたすら躱しちゃう。熱波の攻撃だって、予備動作を見極めて確実に距離を取ってしのいでいる。

 ううむ……スゲェ。なんというか、これまでの経験の積み重ねを感じさせる動きだ。クソデカい火を吹く鳥と空中戦するとかいう、マジでワケ分かんない状況じょーきょーなのに……なんかこの二人、手慣れてる。

 確かに、そんな様子を見れば、これはマジでプロだわ。モンスター退治のプロ。

 

 そんな歴戦の二人に加えてもう一人、その活躍を忘れてはいけないのがラナだ。

 いや、ひたすら撃ち込んでるからね、氷のビームみたいなやつ。なんの遠慮もないから、コレ。

 デカ鳥もいよいよ鬱陶ウットウしくなったのか、火の玉をこっちに飛ばしてくる頻度が増えた。でもそれも、ゼンブ鎧の人に弾かれる。

 

 戦況せんきょーはわりと安定してる感ある。んで、デカ鳥もけっこう弱ってきてる感あるし。

 だけど案外アンガイ、この戦いにはタイムリミットがあるのかもしれない。それはつまり、このデカ鳥が船に辿り着くまでに倒さなければいけない、という。

 二人によってデカ鳥はこちらに来るのを邪魔されているケド、少しずつ近寄ってきている。

 

 ジッサイんとこ、火の玉くらいならともかく、デカ鳥が船にたどり着いて直接攻撃してきたらヤバいっしょ。んなら、そうなる前に倒さないといけないってコトやん。

 あーしもいよいよとなったら、自分も剣くんを引き抜くつもりでいたケド——けっきょくその必要は無かった。


 けっこう船も近いし、さらにだいぶデカ鳥も弱っているようだとみたのか、トランシェさんたちは攻勢に出た。

 猫の人がことさら激しく攻撃してデカ鳥を釘付けにしている間に、準備をしていたらしいトランシェさんから飛び出したのは、冷気を発する長くつらなった魔法のくさりだった。

 ほの青く光る鎖により体をグルグルに巻き取られたデカ鳥は、その体の動きを止められる。

 

 そのタイミングを見計らったかのように襲いかかったのは、ラナの撃ち出した特大の威力の冷凍ビームだった。

 ビームはデカ鳥の胸に命中し、その巨体を貫通して背中から抜けていった。

 そして、それが致命傷となった。


 

 戦闘終了と時を同じくして、船は下降しきり、森の木々のすぐ上付近にまで到達していた。


 船では木が邪魔でこれ以上降りれないので、あーしらはそこで船から降りて地上へ向かった。

 ギリギリまで下りたといっても、木々の下の地面にまではまだまだ距離があった。

 普通に飛び降りるワケにもいかなかったケド、ラナが魔法で手助けしてくれたので、みんな無事に降りることが出来た。

 なんか落下速度がゆっくりになる魔法みたいなの使ってくれてね。まあけっきょく、それ使ってもらってから飛び降りたワケだけど。


 ……ちな、船はちゃんとイスタさんが回収した。なんかフツーに、今度はちっちゃくなってまたあの瓶に収まってた。

 やー、サラッと出てきたけど、マジその船なんなんって……


 まーそんなワケで、あーしは数日ぶりに、マノ森の奥部の土を踏んだのだった。


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