第35話 テイル、リーパー……??
竜が船を引っ張って空を飛んでいく。
少しずつ高度と速度を上げていった船は、今や中々の高さを中々の速度で飛んでいた。
「うおおぉぉぉぉ……!!」
あーしが甲板の
空飛ぶ船はすでに、マノ森の上空を飛んでいた。
「まったく、ユメノったら、まるで子供みたいね。あんなにはしゃいじゃって」
「わ、私も、内心はかなりドキドキしてるよ。なんせ、“
「い、いや、乗ったことは無いけど……まあ、わたしの場合は、やろうと思えば自力で飛べるし、別にこんな景色、珍しくもないというか……」
「へぇー! やっぱり凄いね! ——そうだよね、私と同い年でもう“
「べ、別に、わたしが特別に天才なだけで、その歳で
「いやぁ、私がここまでこれたのは、一から十までフランツさん達に助けられたお陰だから……」
「——いいじゃない」
「えっ?」
「……つまり、パーティーメンバーに恵まれたってことでしょ。それって、幸運なことよ」
「うん……! ウチのパーティーのメンバーはみんな私に良くしてくれるし、私、本当にいい人たちに巡り会えたと思う」
「……そ、よかったわね」
近くではモイラとラナがだいぶ仲良くなっていて、二人でなにやら話していた。
出航後もラナと色々話していたら、そこにモイラもやって来て、三人で話している内にあーしらはけっこー仲良くなっていた。
最初はモイラはランクが上のラナに遠慮してて、ラナはラナで
まあ元々あーしら同い年だから、ランクとか気にしなければフツーに仲良くなれるっしょ、って感じにあーしは思ってたし。
なんなら二人とも魔法使いだから、さっきまではそれの話題で盛り上がってたりしてたし。
あーしは魔法についてはなんもワカランチンなので、こうして景色を見ることにしたとゆーワケよ。
と、そんなあーしに話しかけてくる人がいた——イスタさんだ。
「えっと、
「あ、ハイ、そーっすけど」
「少し、お話いいですか?」
「いーっすよ」
イスタさんはあーしの隣に来ると、あーしに
「貴方については、一応、例の護衛依頼の報告書には目を通しました。……それで、確認なんですけど、その護衛依頼の際に討伐されたモンスターの素材ということで、ギルドには強力なモンスターの珍しい素材などがたくさん持ち込まれていたようですが……あれらを倒した張本人がユメノさんだというのは、これは本当ですか?」
「んーと、タブン、そーだと思いマス。あの、メタルトカゲとかのやつっすよね?」
「……えっと、“
「あ、ハイ、そーっす」
「そうですね、それもですけど……では、他のものたちは?」
「他って、どれのことっすか? ——あー、いや、あーし、名前とかゼンゼン覚えてなくてー」
「そうですね……では、“
「……」
「
「……」
「滅多に討伐されないモンスターなので、ギルドも色めき立ってましたよ。特に、連中の鎌については、希少な素材ですからね。——まあ、一つは破壊されていたようですが。
しかも、一気に二体もですからね……ええ、そこも驚きました。連中は特に群れを作るモンスターではありませんが、別に単独行動しかしないというわけでもないようですので……一度に二体が現れることも、そうあり得ないことではない」
「……」
「ですが、連中を
「……」
「だけど、彼らは嘘を言ってはいなかった。……少なくとも、本人は事実だと信じていることを話していた。
……さて、ギルド職員としては、偽りのない真実を知る必要があるんです。——まあ、個人的な興味もありますが。それに、ユメノさん、これは貴方の査定にも関わってくることですから。
なので、教えてくれませんか? 実際のところ、“死鎌の尾鞭獣”はどうやって倒されたのか」
「……」
「どうしても、何かしらの理由があるというのでしたら、黙秘するという選択肢もあるでしょう。ですが、それにしても、最低限、黙秘の理由くらいは話してもら——」
「や、すんません、チョット思い出せないっすわ……」
「……そうですか。あくまで、とぼけるつもりなんですね……?」
「ん? や、テイルなんとかって、どんなヤツでしたっけー? なんかデカい虫みたいなヤツ……?」
「は? ……あ、いや、アレです、尻尾が鎌になってる、小型の、えーっと、とにかく素早くて——」
「あ、アレ!? あのクッソはえーやつね、あー、分かった分かった。あー、うんうん、アイツはマジで強かったわ。うん、一番強かった、マジで」
「……えっと」
「んで、え? コレをどーやって倒したかっすか? ……いや、どーやっても何も、フツーに斬っただけっすケドね」
「……えっと、普通に、とは?」
「いや、だから、フツーに、ヒュッてくんのをガッ——ってやって、んでズバ! ズバ! ……みたいな?」
「…………はあ、なるほど。……えっと、つまり、ユメノさん、
「そーっすね」
「二体目は、どうやって出てきたんですか?」
「二体目っつーか、ほぼ同時に来たよね。んで同時に倒したって感じ?」
「ほぼ連戦だったと?」
「連戦ってか、まあそっからはデカサソリとかデカい木とか、ゆーて連戦だったケド」
「サソリ? いえ、リーパーについては……」
「ソイツはだから、二匹同時に来たから、二匹同時に倒したよ」
「同時に、ですか……?」
「うん」
「近接戦で……?」
「うん」
「………………なるほど」
それからイスタさんは、何やら黙ってしばらく考えこんでいた。
んであーしが——えーっと、もー話は終わったんかな、コレ……って思い始めたところで、彼女がまた口を開いた。
「……分かりました。とりあえず、貴方の言葉を信じることにします。……そのですね、ユメノさん。実のところ、今回の依頼に貴方も同行してもらったのは——その許可が出たのは——依頼を通して貴方の力量を見定めるという、そういうギルドの
「はあ、そーだったんすか」
「ええ。……まあ、そういうことなので、もしかしたら、貴方には道中、何らかの指示をすることになるかもしれません。その際は、よろしくお願いしてもいいですか?」
「……えーっと、指示って、どんな感じのやつなんすか?」
「そうですね……貴方の実力を確認するために、何度か戦闘に参加してもらうとか、まあ、その程度ですよ」
「そんくらいなら、別にいいっすよ」
「ありがとうございます。——まあ、本来ならユメノさんも『
「うぃっす」
「それでは、質問は以上ということで……よろしいですか? 他には何もないですか?」
「んー……あっ、それなら、一個聞きたいことあったんすケド」
「なんでしょうか」
「いや、イスタさんに名前と顔が似てる人に、あーし、なんか会ったことがあったよーな気がしてて……」
「……それって、もしかして、ゾウルの冒険者ギルドで、ですか?」
「ゾウ、ル……? あ、ハイ、そ、そーっす」
「それは、アスタというギルド職員のことですか……?」
「あ、ハイ! そっす、その人っす」
「なるほど……そのアスタという人物は、私の実の姉です。なのでまあ、似ているのは当然ですね」
「へぇー! オネーさんだったんすねー」
「……ユメノさんは、姉と依頼のやり取りをしたんですか?」
「
「登録、ですか」
「ハイ、あの護衛依頼受ける前に、初めてギルドで話しかけたのが、あの人だったんで」
「……え、登録して最初に受けたのが、
「そっすね」
「……」
なんかイスタさんが、なんとも言えない顔してこっち見てくる。
「……な、なんスか?」
「いえ……そうですね、なんだか私、ユメノさんにより一層興味が出てきました」
「は、はぁ……??」
「あの、ユメノさん、もう少しお話聞かせていただいても構いませんか?」
「うーん、ま、少しなら」
というわけで、あーしはイスタさんとも少しばかり親睦を深めたのだった。
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