第34話 真相を確かめるため、我々ドリームチームは、魔の森の奥地へと向かった……



 朝イチでなんかギルドの人が来て、なんか依頼を持ってきたとか言うので、さっそく占いで言ってたのが来たジャンと思ったあーしは、自分も参加することにした。

 

 なんかギルドに行って今回の依頼で同行するメンバーを紹介されて(たくさんの人をいっぺんに紹介されたから、ほとんど覚えられなかったケド)、そしてなんかフランツさんがリーダーになってた。


 それからすぐにギルドから出発して、今はもう街の外に出てきたところ。

 街から少し離れた場所に来たところで、トカゲの人——ポールさん(覚えやすいのでこの人は覚えた)がギルドの人に声をかけていた。


「それでー、イスタのあねさんよぉ、今回使う“足”ってのはなんなのよー? なんかアテがあるって言ってたけどよー」

「そうですね、なるだけ移動時間は短縮したいので……コレを使います」


 そう言ってイスタさんが取り出したのは……ビン

 や、なんか中に入ってるっぽいケド、なんだろ?


「ん? それ、なんだにゃ?」

「すぐに分かりますよ……。皆さん、危ないので少し離れていてくださいね——では、それっ」


 イスタさんは、あーしらから少し離れた場所に移動すると、ビンのフタを開けた。

 すると、ビンの中から何かが出てきて——

 それは、どんどんと大きくなっていって——

 気がつくと目の前には、巨大な船が空中に浮かんでいたのだった。


 ……………………えっ?????


「にゃんと! これ、もしかして、“飛空艇フライトセイル”かにゃ?」

「マジかよ、姐御あねご! いやスゲー、これで空飛んで行くなら、“魔の森”の奥部だろーが一直線じゃんよ!」

「いやはや! 魔の森へのクエストがまさか、飛空艇での優雅な空の旅となるとは……さすがはイスタ嬢、参ったね、してやられたよ。このボクを、ここまで驚かせてくれるとは……ね☆」

「ほう、これは中々……いきな計らいではないか、イスタ。こいつがあれば、地上を二本の足で遅々ちちと進む——なんてことはないな。いや、そうなっても致し方ないかと思っていたのだが……杞憂だったなら、なによりだ」

「あー、いえ、それなんですが、ランスリータさん……ちょっと貴方あなたに頼みたいことがあるんです」

「なんだ?」

「いえ、これは確かに飛空艇なんですけど、実はワケありでして。……ぶっちゃけていうと、故障してるんです。浮遊系は無事なんですが、航行系が機能していなくて……要は、浮くだけなんですよ、これ」

「……なに?」

「なので、このままでは進まないんです」

「……では、われにどうしろと?」

「いえ、ですので、ランスリータさんのに、牽引してもらえないかな、と」

「……イスタ、貴様、我が騎竜に、輓獣ばんじゅうの真似事をしろと言うのか?」

「他の方法を使うよりも、ランスリータさんの力を借りるのが一番効率的ですので……。ランスリータさんとしても、一人だけ飛んでいくわけにもいかないでしょう? なんとか、お願いできませんか……?」

「……」

「貴方にしか頼めないんです。お願いします、ランスリータさん。——さあフランツさん、リーダーの貴方からも言ってやってください」

「……えっ、オレ? ——いや、ちょ、ええっ?!」

「……貴様、フランツ、と言ったか」

「あ、は、はいっ……」

「貴様の命令ならば、従おう。曲がりなりにも、この一行の旗手リーダーは貴様なのだから」

「——だそうですよ、フランツさん。さあ、リーダーとして、彼女にビシッと命令してやってください」

「えええぇぇ……? ——あ、や、じゃあ、その……ランスリータさん、どうか、そのぉ、ぉ、お願いできませんか……?」

「……了解した、リーダー。フン……我が騎竜の翼にかかれば、この程度の船を引くなど、造作もない」


 あーしがデケー船がいきなり出てきたコトに驚いている間にも、何やら話が進んでおり、どうもあのコエーオネーさんがなんかしてくれるみたいな流れになったっぽい。

 や、なんかあの人、自己紹介ん時にめっちゃパネェ威圧感ビンビンさせてたから、あーしもめっちゃビビったし。ちょっとコエーんだわ、あの人。

 でもリーダーのフランツさんの言うことはちゃんと聞いてくれるみたいなのは、ちょっと意外というか……まあ、よかったわ。

 とりまあーしはフランツさんと一緒にいればね、大丈夫ってことだよね。


 フランツさんにお願いされた当のランスリータさんは、フトコロから何か結晶のようなものを取り出すと、それを宙に放り投げた。


『“宿魔解放ドゥエルリベレイション”』


 すると、投げたブツが光を発して……

 光が晴れる頃には、これまた巨大な——って何コイツッッッ!!??


「こ、これは……ッ!?」

「うっひゃあ、生で見るとやべぇにゃ……」

「うぉう……オレっちもちょっとブルってきたぁ……」

「おお、これはまたなんと壮大で美しい! ……それにしても、よもや“雷光の飛亜竜ライトニングワイバーン”の牽引する飛空艇に乗ることになるとは、思ってもみなかったね」

「ほう、“繚乱”。貴様、女性にょしょう以外も褒めることが出来たのだな」

「もちろん。美しい女性がとりわけ好きなのは事実だけど、なにもボクが褒めるのはそれだけではないさ。ボクはすべての美しいものをでる美の伝導者だからね。だからこそ、たとえそれが魔物モンスターであったとしても、美しいと感じたならば、それを褒めることになんら躊躇ちゅうちょすることはないのさ」

「フン……。この竜こそが、我が騎竜である“雷光の飛亜竜”——その名を『雷翼ウィントール』と言う」

「なんと、名前まで美しいじゃないか」

「……フ、フンっ! 貴様というヤツは、調子のいいヤツだな、まったく……」


 ゆうて褒められてまんざらでもなさそーだけど——って、いやいや、そーじゃねーだろ。

 

 いや……なんだよコイツ。

 ……つーかフツーにモンスターって言った? いや、言ったよな? 言ったわ。言ったぞ。

 

 めっちゃデケーの出てきたぞ、おい。

 竜って言った? いや、マジ竜だからコレ。

 トカゲっつーか、ワニっつーか、恐竜っつーか、顔はそんな感じで、前足に翼がついてて、尻尾も生えてて、鱗に覆われた体で……あと、とにかくデカい。

 出てきた浮いてる船がまずかなりデケーんだけど、それと比べても遜色ソンショクないくらいデカい。

 

 まあ、確かにコイツなら、このデケー船もフツーに引っ張っていけそーだけど……

 いやいや、つーかマジコイツなんなの?!

 どーみても顔がワルモノなんだけど! 襲ってこねーんか、コイツ……? ダイジョーブなんかー?


 あーしが衝撃に固まっている間に、なんか作業は終わったようで、気づいた時には竜と船が結ばれて出航の準備が完了していた。


「では皆さん、すみやかに乗り込んで下さい。すぐに出発しますよ」


 イスタさんの発言を聞くやいなや、みんなは次々と宙に浮いた船に乗り込んでいった。ワケだケド……

 船はそんなに高いところに浮いているわけではなかったケド、それでも船自体がデケーから、乗り込めって言われても……や、フツーに届かねーんよ。

 だけど他の連中は、当たり前みたいにピョンって跳び乗るワケよ。ジャンプでさ、十メートル以上は軽く跳び上がってさ。

 あるいは、あーしと同年代くらいの——確か魔法が使えるとか言ってたと思う——女の子に至っては、跳ぶじゃなくて“飛ぶ”だったしね。……いやマジで、フツーに空飛んでた。

 

 すると地上に取り残されたのは、あーし、とフランツさん達。——や、なんかもう一人居るわ。

 この人は……確か最後に紹介されてた人だ。いかにも魔女って感じの見た目の、ちょっと影薄い人。


「ちょっと待って下さいね、今、梯子はしごを下ろしますから」


 そう言ってイスタさんは、船の上から縄の梯子を下ろしてくれる。——つーかこの人もフツーに跳び乗ってたよな、さっき……。

 

 だけど、なんとなーく——なんかハシゴ使うのもシャクだな……と思ったあーしは、ちょっと試してみることにした。

 ……いや、あーしだって覚えてる二つのスキルを使えば、それくらい出来るハズなのだ。

 

 “練気功夫オーラライズ”と“波動装甲ブラストアーマー”——面倒ダナ、これ一つにまとめるかー。

 ……よし、決めた。オマエの技名は——


『“機動装甲パワーアーマー”』


 スキルを発動した瞬間、あーしの体は一気に強化され、見えない骨格のように体はナニかで覆われる。

 そして、あーしは強化されたパワーによって、宙に浮いた船に向かって、跳ぶ。


 ——って、コレ、跳びすぎっ!?


 なんか体が軽くて思った以上に跳び上がってしまったあーしは、危うく船を飛び越しそうになった。でも、跳んだ方向にちょうど船のマストがあったので、それにひっつかまる事でなんとか無事に収まった。


 ——これは……アレか、マントか……?


 思った以上に体が軽かったのは、タブンそれマントが原因と思う。

 日常生活ではあまり実感無かったけど、こうして派手に動くとかなり軽くなってるってのが分かった。

 うぉう、さすがは魔法のマントじゃん。


 あーしはマストから船の甲板に飛び降りる。

 今度の着地についても、ズシンとはいかずストンという感じ。——いやこれ、このマントがあればめっちゃ高いところから飛び降りてもへーきっぽい感じゾ。


「——きゃっ! ……って、ちょっと! 何よアンタ! なんで上から降ってくるの!? ビックリするじゃない!」

「あ、ゴメン」


 着地したところのすぐ横にいた、例の魔法使いの子が、ビクったよーであーしに文句をぶつけてきた。


「ゴメン——って……アンタねぇ。自己紹介聞いたなら知ってるわよね。わたしのランクは熟達者ベテランなのよ? ……アンタのランクは? 中級者ミドルなんだっけ?」

「え、いや、違うけど」

「へえ? もっと上なの?」

「いや、タブン下っていうか、一番下っていうか……始めたばかりとゆーか」

「はぁ? アンタ駆け出しルーキーなの? なんでルーキーがこの依頼クエストに参加してるのよ?」

「なんでとか言われても……いちおー、あーしもフランツさんのパーティーの補欠的なやつだから?」

「……あっそ。んじゃ、新人のアンタに教えといてあげるわ。冒険者にとって、ランクは絶対の指標なの。だからね、ランクが低い冒険者は、ランクの高い冒険者に敬意を払わないといけないの。分かる? つまりアンタルーキーは、わたしベテランに対してはまるで舎弟しゃていごとく平身低頭に——」

「でも歳いっしょくらいだよね? あーしら」

「——って、はぁ? 歳? 歳がどーしたってのよ?」

「あーしは十七だけど、そっちは?」

「……フン、なんでアンタに教えないといけないの」

「……」


 コイツさては年下だな……?

 ——あ、そーだ、アレ使えば調べられるじゃん。


『“汎用鑑定ノーマルアナライズ”』


「——ッ!」


 判定……結果——


 名前——『“颯唱”のラナラナ“ザ・スキップチャント”

 種族——『源人オリジン

 性別——『女性』

 年齢——『十七』

 職能ジョブ——『術式詠師コードトーカー


 年下じゃなかった。なんだ、タメか。

 あ、そうそう、この子の名前、ラナだったね。


「なんだ、ラナってあーしとタメじゃん」

「アンタっ、勝手にわたしに“鑑定”使ったでしょ! マナー違反よ、それ! ——てか、呼び捨てっ?! 歳が同じだからなんだっての?!」

「や、タメならタメ口でしょ」

「はあ? さん付けよ! 敬語を使いなさい!」

「え、ヤだけど」

「なんでよ!」

「あんさー、知ってる? 敬語ってね、敬意けーいを持ってる相手に使うんだよ」

「は、こ、この……!」


 ラナはプルプルと震えながら、あーしを睨みつけてきて——


『“汎用鑑定ノーマルアナライズ”』


 ——ッ!


 何やらあーしの体にも一瞬、探られたかのような感覚がした。


「——何よアンタ、変な名前……あ、いや、もしかしてこれ、家名なの? ……まさかアンタって、貴族……?」

「え、貴族? そう見える?」

「ッ……」

「や、ジョーダンだから、貴族とかじゃねーケド」

「な、なによ、違ったのね。……はぁ、なんか、アンタって変わってるわね。ジャスコ」

「その名であーしを呼ぶな」

「うぇっ?」

「……ユメノって呼んで」

「わ、分かったわ……ユメノ」


 おう、それでいーんだよ。

 しかし下の名前を言われたってことは、つまりさっきの感覚は——

 

「ラナも“鑑定”使えたんだね」

「……フン、そのくらい当たり前でしょ。わたしは魔法職メイガスなのよ?」

「ふうん? ——ねえ、さっき船乗る時さ、なんか飛んでたよね? ラナって空飛べんの?」

「だから、わたしは魔法職の、しかも“三系統使いトライアングラー”なのよ? あの程度のこと、呪文の内にも入らないわ」

「へぇー、トライアングラー、ね。……んで、それナニ?」

「はぁ……ルーキーってホントなにも知らないんだから。いい、“三系統使い”ってのはね、……いや、そうね、そもそも、魔法には系統があって——」


 そのままラナと色々話している間に、気がつけば船は動き始めていた。


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