第30話 ジョブの仕様って、中々面倒臭いんだよね……(汗
翌朝、目覚めは
——昨日、アレから宿に帰ってみても、フランツさん達はまだギルドから戻って来ていなかった。
なのであーしはモイラと宿の一階でご飯食べて——だけど、その間にもフランツさん達は戻らなかったので——あーしら二人は先に部屋に戻って寝た。
寝る時にはさっそく、あの店で買ったパジャマに着替えた(ちなこれもクリアなんたら加工のヤツ)。
お陰で寝心地はバッチリ。ゆーて今までは他に着るもんなかったし、あの服着たまま寝てたから、睡眠が地獄だったのよね……。
他にも、寝る前には買ってきた道具で色々とお手入れとかもできたし。したらあーし、ようやく自分のこと文明人だって思い出したカンジ。
結論——
お陰でよーやく、あーしの
そんなカンジに、ぐっすり眠るコトができて迎えた今日。
起きて、着替えたり身だしなみ整えたりとして(それが出来るのも買ったアレコレがあるおかげ)、それが終わるとモイラと一緒に下に降りて、とりま朝ごはん。
宿の一階に降りて、注文したご飯が出来るのをテーブルで待ってたら、フランツさん達三人が降りてきた。
昨日のコトとか聞こうと思ったから、一緒に食べよーって声かけようとしたら、あーしの
「あ、フランツさん、ここココ、一緒食べよ——」
「——ッ!? お、お前、ユメノかっ!? マジかよっ?! お前……ちゃんと女だったんだなっ……!?」
「はぁ?? ローグ、アンタ——」
「ユメノお前、
「ちょぉ! 胡散臭いってなんなの!? 何ソレ! つーかあーしはエルフとかゆーのじゃねーし」
「あ、やっぱり? ——いや、悪い悪い、いきなり素顔
「そうだな……ユメノ、あのいつも被ってた
「……ま、イメチェンだよ、イメチェン」
「えぇ……? なんだ、そんな軽いノリのやつだったのか、アレ……」
「まーまー、それはいーからさ、とりまご飯食べよーよ。んで昨日の話とか聞かせてよ」
「ああ、そうだな。まずは飯だな」
それからフランツさん達は注文を済ませてからテーブルに座ると、昨日のことを話し始めた。
その話を要約すると——
昨日、あーしらと別れてから、フランツさん達はギルドに依頼中に見つけたナントカについて報告して……けっきょく、それが夜遅くになるまで終わらなかった、——のだと。
「まったくよぉ。最終的には“
「予想はしていたが、中々の扱いだったな……。ボンドさんが居なかったら、どうなっていたことか」
「むしろ、あの人が居なかったら、普通に門前払いだったんじゃねーの」
「ま、あれだけやったんだから、向こうもある程度は信じたと思いたいな。——さて、どうあれ例の件についても終わったわけだ。これで、護衛依頼に関する事後処理もすべて終了、だな」
話している間にご飯も食べ終わっており、今のあーしらは食後のひと休みといったところ。
それもいい頃合いなので、そろそろ出るとしよーかな、とあーしが思い始めたところで、フランツさんがあーしに問いかけてきた。
「そういえば、ユメノはこれからどうするつもりなんだ?」
「あーし? あーしはこれから神殿に行くつもり。あーしもジョブってヤツをゲットしてみようと思って」
「ああ……なるほど。神殿に、か。一人で行くのか?」
「うーん、そーね……」
やっぱ誰かと一緒に行ったほーがいーんだろーか。なんとなーく、教会とか神殿とか、その辺に一人で行くのは軽くトラウマ的なアレあるよーな気も……また変なことにならんかっていう……。
「それなら、よかったらオレ達と一緒に行かないか?」
「あれ、フランツさん達も神殿行くの?」
「なんだフランツ、今日は神殿に行くことにしたのか?」
「ああ。まあ、いい機会だし、そろそろオレ達も自分のジョブの習熟度を確認しておくべきかと思ったんだけど、どうだ?」
「まあ、確かに……そろそろいいかもな。——うん、確かに、金も入ったし、俺らもそろそろ、新しいジョブを考える時期かもな」
「ユメノは初めてだろうから、オレ達もいれば色々と教えてやれるし。どうだ、ユメノ?」
「あーしはもちろんいーよ」
「よし、それなら一緒に行こうか。ユメノはいつ頃出るつもりだ?」
「あーしはいつでも。なんならすぐでもいーケド」
「分かった。それなら準備でき次第行くか」
「あーしの準備はもうできてっから」
「……そういやお前、昨日のボロに比べたら、服もやたらと良さげなのに変わってんな」
「そりゃね、カネ入ったんだし、着替えるに決まってんじゃん」
「……ま、別にいいけどよ。——一体いくら使ったんだ、コイツ……」
つーわけであーしは、フランツさん達と一緒に神殿に行くことになった。
すぐに準備したフランツさん達と一緒に、あーしは神殿に向かった。
とりまフランツさん達は、最初にあーしがジョブもらうのを手伝ってくれるらしいので、お言葉に甘えて先にやらせてもらう。
神殿に向かう間に、あーしはジョブを貰うまでの流れを軽くレクチャーしてもらった。
ジョブを貰う手順を簡単に言えば——
・まず最初に、自分の“素質”を調べてもらう。
・今の自分がつけるジョブの候補が出るので、その中からつきたいジョブを選ぶ。
・金を払い、ジョブゲットのヤツをしてもらって、完了!
——って感じ。
つっても、まず最初の調べた時点で候補のジョブが何もない場合とかも普通にあるらしい。その場合はトーゼン、ジョブにつくことは出来ない。
どんなジョブが候補に出るのかは本人の素質によって変わって、才能とか、今までの経験や経歴、性格なんかで変わってくるものなんだとか。
あーしの場合は、フランツさんは『
そんな感じの話をしているうちに神殿についたあーしは、フランツさん達の案内もあって手続きもすんなり進んで、あっさりと問題なく最初の手順のとこまで進んだ。
あーしは専用の部屋に通されて、今からここで自分の“素質”を調べてもらう。
……ちな、この調べるヤツをするために、まず一万くらい払う必要があった。
椅子に座ったあーしの前に、神殿の聖職者の人ってのが居て、この人が使うなんかのスキルで素質が分かるというハナシ。
えーっと、この人が例の『
なんとなく、以前の教会でのことを思い出す。状況としては確かに似ている。
まあ今回は大丈夫……だよね?
祭司の人は、あーしに向けてゆっくりとした調子で語りかけてくる。
「それではこれから、
『“
すると、あーしの体が何やら
剣くんは少し反応したケド、特に行動を起こすことはなかった。
「ふむ……貴方の名前は『ユメノジャスコ』、年齢は『十七歳』、種族は『
……“
——!? この人、聞いてもないのにあーしのフルネーム言い当てた……? ……あと後半については、何のことだかまったく分からん……!
「それでは、次は貴方の選択可能な
——六つ……。とりあえず一つも無いってコトはなかったカ。ふぅ、よかった。
「一つ目……『
「…………えっと、
「ふむ……おそらく、この二つのジョブは“
「……えーっと、その詳細について調べてもらうコトはー」
「現時点で分かるのは、四番目の不明ジョブの“
「……???」
「貴方の“霊杯器”は“
「…………えーっと、ちょっと
「ええ、どうぞ。——では、先程のジョブ内容を書いた写しの発行は、希望なさいますか?」
「あ、はい、貰いまっす」
「では、
「……ハイ、じゃあ、コレ——」
「どうも。——それでは、こちらが貴方の素性に関する写しで、こちらがジョブに関する方です。お間違えのないように。では、“貴方に神々のご加護があらんことを”……」
「……」
「……」
「……」
「……どうぞ、退出なさって構いませんよ」
——あ、なんだ、もういーのか。
あーしは個室の部屋から出ると、外で待っててくれてたフランツさん達の元へ向かった。
フランツさん達がいるラウンジ的なところまで行くと——あーしが来たことに気がついたフランツさんが、声をかけてくる。
「お、ユメノ! どうだった?」
「……よく分からん」
「えっ? ジョブは、出たんだよな? まさか、出なかったのか?」
「……よく分からん」
「ええ……??」
もうマジでよく分からんので、とりまフランツさん達に色々聞かないと。
あーしはジョブの紙を取り出して、それを見てもらいながら、フランツさん達に話を聞いていく。
四人全員が一通り内容を確認し終わったところで、相談タイムの開始だ。
「それでさー、あーしどれ選んだらいーのかなー? つーかまず『
「最初から六つもジョブの候補が出る時点からして、普通よりかなり多い方だが……不明なジョブとは、これまた珍しいな」
「まあ、数はともかく、不明以外の内約はわりと普通かー? いや、初っ端から“
「まあ、“霊杯器”は“
「さすがのユメノも、そっちも最初から“
「……あんさー、もーちょいあーしにも分かるよーに話してくれん?」
「——ああ、悪い悪い。えーっと、それじゃどっから話せばいいかな……」
「最初から、全部、オネガイ」
「……だな。それじゃまず、“
それから、フランツさんはジョブについてのアレコレをあーしに
あーしはそれを聞いて……半分以上は理解を
逆に言えば三割くらいは理解したとゆーことだから、あーしはとても奮闘したと思う。
「——という感じなんだが、ユメノ、理解出来たか? 出来てないな……?」
「……とりま今のあーしが選べるのは、『剣豪』ってのと最後の『
「ああ、まあ、そういうことだから、その中から選べばいい。……まあ、その他のことは、おいおい理解していけばいいだろう」
そうそう、いっぺんに色々言われても理解できるワケねーんだから。
さて、それじゃあーしが選べるのは『剣士』か『戦士』か『探索者』か『
つーわけで、今度は具体的にどのジョブを選べばいいのかを相談していく。
「そうだな……まず、この『
「ま、さすがにな。……気にはなるけどな」
「なら後は『剣士』と『戦士』と『探索者』の三つだが……結論から言わせてもらえば、オレのオススメは『探索者』かな」
「ほう?」
「えっ、フランツさん、どうして『探索者』がオススメなんですか?」
「そうだな、理由は色々ある。まず、ユメノはすでに高い——いや、
「まあ、確かにな……。じゃあ、『探索者』はただの消去法か? でも、『戦士』の方はユメノにもそれなりに使えるスキルを覚えるんじゃねーか? なんせコイツ、“
「まあな。だが、戦闘における基本スキルの二つ“
「……まあな。“魔の森”の奥部でも余裕で通用するから、そりゃ十分だろ。十分過ぎるわ」
「そういう意味では、むしろ今のユメノに必要なスキルは『探索者』のスキルだと思う。戦闘に関しても基本は覚えられるし、それに、『探索者』は“
「……あっ、そうか! それがあれば、ユメノも文字が読めるようになりますね!」
「ああ、なるほど。そーいやコイツ、文盲だったな」
「他にも『探索者』は、上位ランクになると結構便利なスキルを覚えるしな。冒険者としてやってくなら、あの辺のスキルはあって損はないだろう」
「そうだな。特に
「えっ、ちょっ、マジ? テレポート出来るスキルとかあんの?」
「まあな。かなり
うっそ、マジで?! そんなんあんの!? マジ?
めっちゃやべーじゃん。そんなんあったら便利どころの話じゃなくねー?!
……え、でも待って、だったらさ……
「……え、でもそんなんあんなら、なんでボンドさんはわざわざ森を抜けたりとかしたん?」
ってなるやん?
「そりゃあ、まずもってそんなスキルを持ってる奴が少ねぇから、都合よく見つかりはしねぇし——実際見つからなかったし。それに、転移と言ってもなんの制限もなく使えるわけじゃないからな。むしろ制限だらけだから。そう上手いことボンドさん連れてゾウルからギンザまで
「はぁ、そう。……ん、ゾウル? なにゾウルって」
「は? あの街の名前だろ、そっからギンザまで来たんだろうが。何言ってん……いや、お前、もしかして街の名前も知ら——」
「——あー! っね、ゾウルね、いや、なんか別のに聞こえたんだわ、アハハ、うんうんゾウルゾウル、街の名前だよね、あそこのね」
「……」
ローグがジト目でこっち見てくる〜……
……はえぇ、あそこゾウルって名前の街だったのかー、初めて知ったわ。
ちょっと気まずいので
「え、てか、『探索者』なったら文字も読めるしテレポートも出来るようになるってコト? なの?」
「まあ、そうだな。……ああ、さっきは言い忘れたけど、ジョブについたらすぐに全部のスキルを覚えられるわけじゃないぞ。ジョブにはランクがあって、ランクが上がるごとにその
「へぇ、なんだ、そーなん。じゃー、ランクってどーやって上がんの?」
「ジョブに応じた経験を積むこと——つまりは熟練度を上げればランクが上がる。『剣士』なら剣を使った戦闘、『探索者』なら冒険稼業全般ってところか。まあ、普通に冒険者をやっていれば、『探索者』の熟練度は自然と上がっていくだろう」
ほぉーん、ナルホド。
んなら、あーしのジョブは『探索者』で決まりじゃね?
文字も読めるよーになるし、戦闘に関しても——あの森でモイラに強化してもらった時くらいには——強くなるっぽいし。なにより、いずれはテレポートまで使えるよーになるとかヤバすぎるし。
「んじゃあーし、『
あーしのジョブが決まった。
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