第29話 はじめてのおかいもの(ただし支払いはクレジットカード)
お店の従業員のミーシャさんに連れられてあーし(とモイラ)が次に来たのは、服売り場だった。
いや、服というか、まあ服もあるんだけど、それだけじゃなくて
ここは以前に行ったどこぞの中古服店とは違って、服はキレイに並べられているし、店内もちゃんと掃除されてて
「さて、それではユメノ様。どのような服をお求めですか?」
「うーん……とりあえず、イロイロ見てみていーっすか?」
「もちろんでございます。——それでは、何か気になる点などございましたら、お気軽にご質問下さい」
とりまあーしは、自分でイロイロと見てみることにした。
ゆうてあーしは服は基本自分で選びたいタイプだから、まずは自分の目で確認したいんじゃ。
この店なら自分で探すのもやりやすそうだし、色々とキョーミもあるから、むしろ色々見てみたい。
あーしが普段服を選ぶ基準としては、まずはなによりもファッション性、つまり見た目をイチバン重視。よーは自分が気にいるかどーか。
そん次に
今回もまあ、ファッションについても気にするところではあるケド、それと同等なレベルで気にすべき部分もあるのよね。
まあ、服そのものについてというより、服を着るためのアレというかね、まあとにかく……つまりは
ゆーてこの辺りの洗濯
やっぱり
つーわけでその辺りのことは、ミーシャさんに聞くのはちょっとアレなので、モイラに聞いてみっか。
テキトーにモイラと二人で店内を回りながら、あーしはその辺のことをモイラと話す。
その結果、
なんと、冒険者は……そもそも洗濯をしない——?!
モイラに聞いたら、そもそも服を洗濯するという文化自体があまり馴染みがないとか、なんとか……。
まあ普通に洗う人は洗うけど、それこそ冒険者とかはほとんど洗ったりはしないし、洗うとしてもせいぜい下着くらいで、服はフツーに着たまま、ボロくなったら買い替える、みたいな……。
いや、マジかよ……。
「え、そんじゃモイラも服洗濯しないの……?」
「洗濯はしないかな。まあ、私の場合は“
ん? ……あ、そうか、魔法か。
確かに、それがあったなぁ。
聞けばジッサイに、洗濯よりも魔法でキレイにする方が一般的らしい。別に自分で魔法を使えなくても、やってくれる施設とかがあるらしい。まあそこって神殿とか教会関連の施設らしーケド。
ま、冒険者は金をケチってあんま利用せんらしーケドね。
そんな感じのことを話してたら、いつの間にかそばに来てたミーシャさんが、あーしに提案してくる。
「清潔な服がお好みでしたら、“
「えっ……と、なんすか、ソレ?」
「クリアコートとは、“
なんとっ、そんなヤツがあるんか……っ!
「冒険者の方の装備としても、クリアコートは有用です。過酷な野外活動でも汚れることなく、長期間着替えなくても問題なし。むしろ、冒険者の方にこそオススメ出来る装備です」
「な、ナルホドォ……」
「他の特殊効果がすでにある場合などを除けば、どんな服にでも加工は可能ですので、お好きなデザインの服を存分に選ばれて下さい。——すぐに着用なさりたいということでしたら、すでに当加工の施された品もございますが、いかがなさいますか?」
「あー、確かに、できればー、すぐ着替えたいっスね」
「——でしたら、あちらがそのコーナーになりますので、ご案内いたします」
つーわけであーしは、ナゾの便利加工が施された高機能な服を買うことにした。ゆーてそんな便利な服があるなら買うわ。
とりますでにその加工がされてるという服の中から好みのヤツを選んで、さっそく着替えさせてもらう。
ゆーてあーしは、一刻も早く今着てるこの服を脱ぎたかったから。マジで。切実に。
前ん時みたいに個室に入って、服を脱いで着替える。今回は肌着類まで、まとめて例の加工がされたものを着ることにした。
まあここの品はちゃんと着心地も良さげなヤツなんで、肌着でもダイジョーブそうだし。
着替え終わって、鏡で確認する。
ほう……随分マシになったじゃねーの、あーし。
ゆうて今までは、このわりと高級店っぽい場所には相応しくないヤツだったけど、今ならダイジョーブだわ。ちゃんと相応しいよ。
それに着心地についても……ああ、やっとまともな服を着ることが出来たわ。うん、ちゃんとした服ってサイコーだね。
個室から出ると、出待ちしてた二人が、またもやあーしの服を褒めてくれる。
ま、ゆーて今まで着てた服に比べたらなんだってサイコーやろ。
いやー、あの服選んでくれたネズミちゃんには悪いけど、ジッサイそーだから。まあ、デザインについては割とマトモではあったけど、いかんせん質の方はどうともならんかったからサ……。
——ちなみに、それまで着てた服はもう要らなかったので、引き取ってもらった。……コイツもいずれ、どこぞの古着屋に並ぶことになるんだろーか——
それから、今度はここにあるすべての中から、自由に服を選んでいく。
他のところにある服については、まだ例のクリア加工とかされてないから、後でやってもらう。なので引き取りは後になるって。
追加の服もあらかた選び終わった辺りで、もはや恒例になりつつある、ミーシャさんからの提案が。
「ユメノ様、服だけでなく、防具の
「あー、だったらマントが欲しーかもっす」
「マントですね? かしこまりました。それでは向かいましょう。こちらです」
スイスイと進むミーシャさんの後ろについて行きながら、あーしは思う。
ゆーてマントは要る。だって着てたやつボロボロなっちゃってるし。ま、そうじゃなくても、服に合わせて新しいヤツ買うよね、もうさ。
やっぱ剣くんは目立つから、ソレを隠すためにもマントは要る。頭は染めて解決したけど、剣に関してはやっぱ出来るだけ隠しとくわ。んで、それにはやっぱマントなんだわ。
ジッサイ、いつまでも
うん、マントボロボロで剣くん隠せる感じじゃなかったから、この街に入る時辺りから、マントは脱いでそれで剣くんをくるんで隠してたんスよね。
それだとトーゼン腰に吊ることは出来ないから、手で抱えたり、カバンに無理やり入れたり(がっつりはみ出る)してたから、地味に邪魔カッタ。
つーわけで、マントのコーナーに来てからマントを選ぶあーし。
まあ、あーしがマントに求めるのは剣くんを隠せればいいってダケなんだケド、ミーシャさんは色々な
そんでけっきょく、あーしはミーシャさんオススメの一品を選んだ。
ミーシャさんによる、そのマントに関しての説明はどんな感じだったかと言えば——
「こちらの商品は“
マントには様々な用途がありますが、風の加護はそれらと相性が良いので、マントにかける付与としては人気なんです。——例えば、悪天候の際にはマントは雨具としての用途でも使われますが、風の加護を施されているこちらの商品は水を弾きますので、濡れることがございません。例え土砂降りの雨に遭ったとしても、このマントがあれば一切濡れることなく乗り切れることでしょう。——ちゃんとフードもありますから、頭も濡れませんよ。
さらに、風の力が防ぐのは雨だけではありません。過酷な環境——暑さや寒さなども、ある程度防ぐことが出来ます。冒険者の方なら、野営時にマントを寝具代わりに夜を明かすということもあるでしょう。そのような時にも、このマントであれば快適に過ごせること請け合いです。
さらにさらに、風の力はマントを防具として見た場合にも有用です。戦闘時にはマントは矢避けの防具としても活躍しますが、風の力はより高い効果を生み出します。そこらの矢弾程度なら、十分に防ぐことが可能です。——さすがに呪文攻撃に対してはそこまでの期待は出来ませんが、それでもある程度の呪文すら防ぐことも不可能ではないでしょう。
そして、極めつきは、このマントを着用した際の
防具としてだけでなく、移動・戦闘・悪天候……様々な場面や状況に対して有用な機能のついたこちら、大変おススメの一品ですので、ぜひご検討の
……あ、ちなみに、このマントは風の力によって汚れが付かないようになっておりますので、クリアコートと同様の機能を持っていることになります。ですので、汚れの心配もありませんよ」
……ね? これ程の熱弁をされてしまえば……よ? もう買わざるを得ないってもんデショ。
特に最後の部分が良かったヨネ。やっぱ一番外に着るモンだからさー、汚れないってのはデケーわ。
まあ普通に雨にも強いってのは便利だし。ジッサイ、森で寝泊まりした時もマントは寝る時に役に立ったし。これなら余計に良さげだよね。
つーわけであーしはこの風のマントってやつも買うことにして、つーかもうその場ですぐに着用した。
これで剣くんも普通に身につけることが出来る。
うん、見た目もいい感じじゃね? それに……確かになんか、体が軽くなってるよーな気がするよーな、気もしなくもないというか。
でもジッサイ、このマントはかなりいー感じだと思う。着心地とか、すごい快適。ゆーてめっちゃ軽いし。着てる感覚ないくらいやし。
マントを買ったあーしに対して、ミーシャさんは他の防具についても薦めてくる。
ゆうてあーしは、マントは必要だから買ったので、他の防具については特に必要とも思わないンデ、別に薦められたからといってなんでも買うわけではナイけどね。
まあブーツとグローブは買ったけど。
いや……ゆーてこれはフツーに必要だし。
この二つについても、なんか色々と良さげな効果とかついてるヤツを買うことになった。
まああーしとしては、防御力とかゆーのより使い心地重視だから、普通の革のブーツとグローブって感じのやつにした。
ただこれも魔法がかかってっから、その辺の金属製品よりも普通に頑丈って言ってた。そしてトーゼン金属よりは軽くてラクなのは言うまでもナイ、と。
じっさいコイツも、履き替えたらスゲーいい感じで歩くのラクなったし、買って正解っすわ。
まあ防具についてはそれくらいで終わりよ。他にも魔法のネックレスとか腕輪とか薦められたケド、さすがに買わなかったから。……ちょっとキョーミは惹かれたケド。
ま、これであーしの装備はバッチリってカンジ? 主に着心地の面でね。やっぱたけー服は違うわ。
とりま装備はこれでいいってことにしたので、次に来たのは雑貨類のコーナーだ。
や、なぜか分からんけど、気がついた時にはここに来てたわ。フツーにミーシャさんと話してたら、自然な流れで次はここに来てたよね。
つーわけでここでも、ミーシャさんにオススメされた品とか、あーしが欲しいと思った品とか、ミーシャさんにオススメされた品とかを買っていく。
ミーシャさんはどうも、あーしのことをキレイ好きだと思ったよーで(まあ間違いではナイ)、それ系のアイテムをバンバン
なんか拭くだけで汚れがキレイに落ちる魔法の布巾とか、似たような効果のついた歯ブラシとか、ヘアブラシとかも。
あとは美容品関連も、バンバン買っていった。これについては、どー考えても絶対に必要だもんね。そりゃね。
それから——冒険者にとって役立つアイテムも色々ありますよ——と言われたので、それ関連も見ていく。
野営道具——テントとか、寝袋とか、モンスター避けに使える道具とか、なんか安眠グッズみたいなんとか、他にも色々。
食関係——水筒、携帯食料、調理道具類など。
魔法薬——ポーション(?)とかいうのとか、他にも色々。
魔道具——便利な魔法の道具たち。
冒険用品——冒険者なら買って損はない品々。サバイバル用品的なヤツ。
消耗品系——なんか使い切りの便利グッズみたいなヤツとか。
中には魔法のかかった道具のやつもあって、かなり便利でスゴイ効果のヤツも色々あった。
あーしはそれらの効果にいちいち驚きながら、次々に商品を物色していった。
——とまあ、そんなカンジで……
一通りを買い終わった時には、すでに日も傾きかけてきていた。
さて、それじゃさすがに今日の買い物はそろそろお開きっすかね。
ゆうて買いたいモノはだいたい買えたし。あーしも満足。
それじゃ、そろそろ帰るとするかー。
お買い物の締めくくりとして、あーしは最初からずっと付き合ってくれたモイラにお礼を言っておく。
「モイラ、今日は付き合ってくれてありがとね。あとゴメン、なんかけっこー時間かかっちゃったよね」
「あ、ううん、気にしないで。私も楽しかったから」
「そういやモイラは何も買ってなかったケド、よかったの? なんか買いたいなら今度はあーしが付き合うから、エンリョしないでいーよ?」
「あ、いや、私は別に。……私の手持ちじゃ、ここで色々買うのは厳しいから。——その、ユメノは随分たくさん買ってたけど、だ、大丈夫……?」
「ん? 何が?」
「いや、だから、お金足りるのかなって——」
「ユメノ様、本日のお買い物は以上ということで、よろしかったでしょうか?」
「——あ、ハイ。オッケーっす」
「でしたら、後はお持ち帰りについてなのですが……」
持ち帰り……ああ、そうか、それがあったね。……いや待って、あーしあの量をどうやって持ち帰るん?
あーしは今まで色々買ってたケド、それって別にカートに入れてるワケではなくて、その場に置いたままなのよね。その場で着たり使ったりしたヤツ以外は。
ゆうてかなりの量だと思うんスけど、どーすんの……?
「お買い上げいただいた品については、すでにお持ち帰りの手配自体は完了しておりますが、量が量ですので……もし、ユメノ様が何か収納系のスキルなどお持ちでいらっしゃるのでしたら、問題ないかと思いますが……」
「あ、いや、あーしそーゆーのは、ナイっすね」
「そうですか——」
ゆーてあーしには、ボンドさんの便利能力みたいなのはナイ。あんな能力があれば、確かに問題ナイんだケド……
「——でしたら、最後にオススメの品がございます。こちらなんですが……」
そう言ってミーシャさんが取り出したのは、ポーチってくらいのサイズ感の
……? いや、そんなサイズのカバンをいまさら買ったところで——
「こちら、収納具の定番、“
もちろん、それだけではございません。他にもオススメ出来る様々な機能が搭載されています。
まず、マジックバッグの鬼門といえば間口の大きさでございますが……ご安心下さい、この商品は間口が可変式になっておりますので、このサイズでも相当の大きさの物までを収納可能となっております。
さらに、この商品の目玉はなんと言っても、用途別に分けられた
次に、食品などの保存に適した『保存部』です。収納した食品類の鮮度を保つような効果がかかっておりますので、かなりの期間でも腐らせずに保存出来ます。
次は、壊れ物を扱う『固定部』です。内部に入れた物が壊れないように、この収納部は内部に衝撃の類いが伝わらないようになっています。そして、たとえ鞄をひっくり返したとしても、こちらの内部の物は常に
お次は、貴重品用の『貴品部』です。——元よりこの鞄には、所有者登録により持ち主以外には使えないようになる機能が搭載されています。ですが、なんらかの
それでは、次が最後ですね。こちらは特に造りが頑丈になっている『耐久部』です。武器類を筆頭に、危険物の類いはこちらにしまうようになさって下さい。こちらの収納部の耐久性はまさに群を抜いておりまして、たとえ爆発物のようなものが内部で炸裂したとしても平気な造りとなっておりますので、強力な魔法の品や不安定な素材などはこちらを使うといいでしょう。
……はい、それでは商品の説明は以上になります。こちらの最新式の多機能型“
「………………買いマス!!」
「ありがとうございます!」
「えっ、ちょっ、ユメノ——!?」
なんて便利なカバンなん……こんなん買うしかナイっしょ……!!
「ゆ、ユメノっ、こ、これ、絶対高いって! いくらユメノでも、これまで買っちゃったら——」
「それでは、早速ですが、こちらのマジックバッグの所有者登録をお願いいたします。それが終わり次第、使い方のレクチャーを兼ねて、お買い上げいただいたお品物を詰めるのをお手伝いさせていただきますね」
「あ、ハイ。助かりマス。——いやー、ナニからナニまで……ミーシャさん、今日は付き添い、ありがとーございました」
「いえいえ。ユメノ様の接客を任せていただいて、私にとっても光栄な体験でした。こちらこそ、ありがとうございました」
「——ゆっ、うっ……わ、私、知らないから……!」
こうしてあーしは、最後に素晴らしいオススメ品を買ったことによって、今日買った分全部をまるっと小さなポーチ一つの中に収めることが出来たのだった。
マジで、レクチャーされてみたら言ったとーりの性能だったし、マジスゲーわこのポーチ。いやー、今日はいい買い
あーしは気分良く——そして体も軽く——店を後にした。
こうしてあーしは——なぜかここに来てまたしてもキョドったカンジになってたモイラと一緒に——ルンルンと上機嫌に宿へと帰っていったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます