第25話 こんにちわ、ぼくボンドラえも——(自主規制)



「こいつは……“殺颯蟷螂キラーマンティス”、こいつは……“双頭の猟犬ツインヘッドハウンド”、こいつは……“鋼装蜥蜴メタリックリザード”、かな。——なんてこった。どいつも危険度Lvデンジャーレベル30を越える大物だ。いやぁ、本当に、こりゃあとんでもないことだ……!」


 ボンドルドさんが、あーしの倒した魔物モンスターの死骸を見て回りながら、その詳細を確認している。


「全部がLv30を越えるような連中なんですか……だとしたら、外の連中も凄いことになってそうだ」

「……凄いなんてもんじゃなかったぜ。化け物どものガチの殺し合いさ。あれが“魔の森”の日常だと思うと、湧き上がる恐れを禁じ得ないぜ。——まあ、中でも一番のバケモノがユメノって駆け出しルーキーだったわけだが」

「まさか、今の今まで“練気功夫オーラライズ”も“波動装甲ブラストアーマー”も使ってなかったとは、な……」

「なんで基本技を使っただけで魔の森で無双してんだよ、このルーキーはよ……」


 フランツさんとローグがそれに続きながら、そんな会話をしている。

 洞窟の中だけでも何体かのモンスターがいるけど、外にはもっとたくさんのモンスター(の死体)が転がっていた。



 洞窟内に侵入した三体のモンスターを瞬殺してから——

 

 ——あれから、あーしは洞窟の外に出ると、洞窟の入り口付近に陣取ってモンスターが内部に侵入するのを防ぎつつ、近くのヤツから手当たり次第にボコしていった。

 

 モイラの魔法によって強化きょーかされたあーしの戦いぶりは、まさに無双むそーといった感じで——近寄るモンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げ……寄らば斬る、寄らぬでも“飛翔剣撃斬る”……もはやすべてをKILLキル

 ——といったカンジで、気がついた時には、周りの動くモノはあーしを除いて全滅していたのダッタ。


 とはいえ、全部のモンスターをあーしが直接倒したワケではナイ。

 モンスターどもは別に全員が連携してあーしを殺しにきたというワケでもなく、なんならお互いに戦ってるヤツらも相当いた。

 その様子は、まさにバトルロワイヤル周りのすべては敵といったカンジだった。

 あーしはその中で最後まで生き残った、とゆーことだ。


 あーしが生き残れたのはモチロン剣くんのお陰だけど、その剣くんに“とある能力のーりょく”があるよーだということに、あーしは今回気がついた。

 その能力とは、“なんか剣で直接攻撃することで、剣技ワザを使う時とかに使えるエネルギーというかパワー的なヤツを、回収というか、吸収というか、なんか出来るっぽい”——とゆーカンジのヤツ。

 この能力のお陰で、あーしは剣くんで直接相手を攻撃こーげきすることでパワーを回復させることが出来て、そして回復したパワーを使えば、ワザもバンバン使えるとゆーコトなのデス。


 どうもあーしの不思議な剣くんといえども、ワザとかを使うにはなんらかのパワーを消耗しょーもーするよーで、無制限むせーげんに使いまくれるとゆーワケでもないみたいってことが分かった。

 この洞窟どーくつに入る前の段階ですでにけっこー使ってたから、ヘビと戦った時点でたいぶ消耗してて——もう次ワザ使えないカモ……ってくらいまでいってたけど、ヘビに剣くんブッ刺したらなんかパワー回復したっぽいカンジのアレだったから——アレこれ剣くんそーゆう能力ある感じなの? って気がついたみたいな。

 

 そうと分かってからは、ワザばかり使わずに剣くんでの直接攻撃も使っていくことで、ガス欠することなく戦い続けることが出来た。

 どーも鞘くんの能力もそのパワーを使うみたいだったケド、剣くんでそーやって回復していけば鞘くんもダイショーブみたいで、戦闘中はあーしの体力スタミナも回復してくれてたから、あーしは疲れることなく一人で戦い続けられたとゆーワケ。

 つーかこれってつまり、あーし剣くん使ってる限り疲れることなくずっと戦い続けられるってことじゃね? いや、やべーな、ソレ。


 まあそんなカンジで、あーしは集まってた大量のモンスターも全滅させたってワケ。

 なので今は、その倒したモンスターについて確認していくタイムになってる。

 このレベルのモンスターの素材はやっぱ貴重ってんで、まあ回収するための確認ってやつね。

 案の定、あーしは休んでていいって言われたんで、とりまその辺をブラブラとしながら、確認していってるボンドさんたちを横から眺めてる。


 ショージキ、この量のモンスターの素材とか、どーやって運ぶん? って思うやん? つーかまずデカさがヤバいし、解体バラしたとしてもやろ、って。

 てな感じの疑問をすでに聞いてみたんだケド、したら——ボンドさんが手伝ってくれるから、かなりの量運べるだろう——って言われた。

 ……? いや、あの馬車(?)に積み込むとしても、ゆーてそんな入らんやろ……って思ったんすケド、どうもそんなレベルの話ではないっぽい。


 詳しく話を聞いてみたら、ボンドさんもジョブを持ってて、そのジョブのスキルを使うことで大量に運ぶことが出来る——とゆーことらしい。

 ボンドさんのジョブは『商人マーチャント』とかいうので、このジョブはまさに商人の活動に相応しいスキルがあるんだと。


 まずはあの馬車——の荷台。アレが浮いてんのも、実はボンドさんの「商人」のスキルの効果こーかなんだという。

 重いモノでも楽に運べるように浮かせるスキル、だって。……マジすか。


 他にもなんか、モノを小さくするスキルとか、収納系のスキルってので、とにかくたくさん運べるよーになるらしい。

 ショージキ、聞いただけじゃゼンゼン良く分からんかったケド、まあそーゆうことならボンドさんに任せるわ、あーしは。

 ま、そーは言っても、出来るだけ解体して必要な部位だけ剥ぎ取って小さくしたほーがいいってことで、これから順次、解体作業をしていくみたいだけどね。

 ……うん、ま、ソレはみなさんで、頑張ってクダサイ。


 と、あーしは参加したくないので、その作業を見学(ホントは見学すらしたくないくらいだケド)だけしていたかったんだケド——どーもソレではいけないフインキが……?


「くっ——!? ……やっぱりダメだ。このメタリックリザードは、解体用のナイフじゃ刃が立たない……!」

「いや、コイツの皮を剥ぐなんて専用の道具でもないと無理だろ……」

「やっぱりそうかい……うーん、しかし、さすがにコイツの死骸を丸ごと運ぶのは厳しいんだよね」

「それは分かりますけど、実際のところ、刃が通らないんじゃどうしようもないですよ……」

「つーかよフランツ、コイツの皮は普通の刃物じゃ無理だって。そもそもコイツって、普通は魔法の——それも雷属性使わないと倒せないんだろ? 剣で倒す相手じゃねーんだよ」

「らしいね。コイツの皮は物理はもちろん、魔法にもかなりの耐性がある。その分、素材としてかなりの価値を持つんだが、唯一の弱点が雷属性だよ。むしろ、それ以外では倒せないと言っていい」

「まあ、誰かさんはそれを剣で倒してんだよなぁ。……しかも一撃で」

「……待てよ、それならその剣を使ったら、コイツの皮も剥げるんじゃないのか?」

「おおっと、確かに……!」


 フランツさんとローグがこっちを見てくる。

 ……まあ、あーしの剣くんならイケるだろーケド……あーし解体とかやりたくねーんだけど。


「——というわけで、ユメノ、悪いんだが、とりあえずコイツの解体だけでも手伝ってくれないか……?」

「……悪いんだケド、あーし解体は、チョット……」

「そ、そうか……まあ、無理強いは、出来ないよな……」

「——そ、そんな、メタリックリザードの皮はすごい価値があるのに! 売ったら相当な値がつくんだよ……!」

「ボンドさん、本人が嫌がるのを無理にはさせられませんよ。……そもそも、倒した本人もユメノなんだし」

「ぐぬっ、ぬぅ……!」

「“自分でやりたくはない——が、そちらでやってくれるなら、素材は好きにしていい”」

「……いや、そう言われても、コイツの皮が——」

「あー、だったら……この剣貸すンデー、それでフランツさんが自分でやるってコトで……どーすか?」


 そう言ってあーしは、鞘より剣くんを引き抜く。

 ……ま、フランツさんなら、信頼してるし、渡してもダイジョーブだと思ってる。

 つーかまず、あーしは解体の仕方なんてナンも分からんから、任せられても困るし。


「い、いいのか? これを、オレが、借りても……?」

「“光栄に思いたまえ。貴重な体験だぞ”」

「……ああ、そうだな。正直、この剣にはすごく興味があったんだよね。ちょっと感激、かも……」


 あーしはフランツさんに剣くんを渡す。

 少しソワソワした様子で剣くんを受け取ったフランツさん。ワクワクした様子で剣くんを握って、嬉しそうな表情をしたと思ったら——一転、


「————!!?? おっ、お、お、重っ!!」


 を持ったかのようにその表情は歪み、さらにはリアルに持ちきれないとばかりに剣くんを持った腕は下に落ちていき、そのまま剣を地面に置くことになった——っえ?

 ……え、何コレ?


「ゆ、ユメノ、君はこんな重い剣をあんなに軽々と振り回していたのか……なるほど、どうりでアレだけの強さなワケだ……」

「いやいや、ちょっと待って、ゼンゼン重くないって、まるで羽根ハネだから、コレ! スッゲー軽いよ?!」

「……へ? な、なんだって……?」


 いやマジで羽根ぞ? 小指と薬指で挟んで持てるかんな? しかも持ち手の先っぽんとこで。

 あーしが剣くんをジッサイにそーやって持ってプラプラさせてるのを見たフランツさんは、この世の終わりみたいな顔をする。

 すると一連の様子を見ていたボンドさんが「もしかして……」と呟いて、それから話し始めた。


「ユメノ君のその剣は、“専用装備パーソナルアームズ”なんじゃないかな?」

「え、ボンドさん、なんですか、それは?」

「特別な武器などの中には、認められた所有者以外には使えないというものがあるらしい。それが“専用装備”だ。そういうアイテムは、他人が使おうとしても、触れることが叶わなかったり、持ち上げられないくらい重くなったりするという。もちろん、所有者本人が使うときはそんな事はない。——これはまさに、今のフランツくんとユメノ君の間に起こった出来事のようだと思ってね」

「はぁ……そんな装備品があるんですか」

「そうだね。それに、“専用装備”はおしなべて強力な力を持つものが多い。まさに、彼女の持つあの剣のように……」

「なるほど……」

「それってつまり、あーし以外にはこの剣を使えナイってコトっすか?」

「ああ、そうなるね」

「……それってつまり、あーしにしかあのトカゲの皮を剥ぐことは出来ない——ってコトっすか……?」

「……まあ、そうなるね」


 ええぇー、……マジ?

 

「皮……イリマス?」

「……出来れば、是非とも欲しい」


 ……えーヤダー。

 剣くんがあーし専用ってのはウレシくもあるけど、不便っちゃ不便なのカナァ……?

 なんて思ってたら、剣くんから反応が。——あ、ゴメン! さんざん助けになっておきながら、エラソーなこと言ってスンマセン!

 ——って、違う?

 ——え、あ、マジ?

 

 ……剣くん、キミってマジ……最高かよ。


 あーしはメタリックなトカゲの前まで行くと、剣くんを掲げる——そして手を放す。

 ヒュンヒュンヒュンヒュン——!

 すると、剣くんはひとりでに飛び回り、トカゲにその身を突き立てていく。トーゼン、その刃はすんなりとトカゲの皮を切り裂いていき——

 ものの一分とかからず、トカゲの皮がキレイに剥がれた状態に加工された。

 ——まさか剥ぎ取りまでオートでやってくれるトワ……スマートすぎるっしょ剣くん。イケケンが過ぎるんよ。マジで。


「……舐めるなよ、もう何が起きても俺は驚かねぇって決めたんだよ」

「……これ欲しいな、便利すぎる」


 一部始終を見ていたローグはよく分からない謎の対抗心を出してきて、フランツさんはフツーにうらやましそうだった。——まあ、気持ちはワカル。



 そして、一連の出来事を踏まえた結果的に……他のモンスターも全部あーしが解体することになった。

 ……ま、そーなるわな。


 ゆーて剣くんにやって貰うだけだし、あーしは別に何も大変ではないからいーけど。つーかジッサイそれが一番早いし。

 そもそもは——全部のモンスターを解体する時間はさすがにないよねぇ——って話だったんだケド……フツーに全部解体できそーなんだわ。外のモンスターも含めて、マジで全部。

 

 解体できちゃうなら、せっかくだから全部回収しちゃおうってことで、ボンドさんも張り切ってた。

 そんでその、回収するところを見せてもらったんだけど——


「うーん……とりあえず、“二番箱セカンダリー”に入るだけ入れるとするかなぁ」


 なんて呟いて、ボンドさんは前方に向けて手をかざして——


『“亜空間庫インベントリ”』


 空中が何やら一瞬と思ったら、どこからともなくデカい箱が現れていた。

 

 ………………は?


「コイツは僕の持つ収納具の中では、二番目に拡張率の高い物だ。とりあえずコイツに入るだけ入れてくれ。——ああ、汚れそうなモノはまず……この袋に収めてから入れるようにしてくれ」


 出現した箱から早速デカい袋を取り出しながら、ボンドさんはそんな風に指示を出していった。


「まずは近場のヤツからどんどん入れていってくれ。あまりにデカいヤツとかについては、僕が追加で“物品縮小ライトスモール”や“浮遊運搬フロートブリング”のスキルを使うから、後回しでいいよ」

「了解です、ボンドさん。——あ、ちなみに、この箱ってどれくらい入るんですか? ……もしかして、これ一つでここらの素材がすべて入るくらいの容量あるんですか?」

「うーん、全部は厳しいかもね……。でも、そうだね、七割がたは入るんじゃないかな」

「七割……!? それでも凄いですね! え、でもコレで二番目なんですよね? じゃあ一番目ってのは……?」

「ああ、それはアレだよ。馬車の荷台」

「あ、なるほど」

「あの大きさだと、さすがに“亜空間庫インベントリ”にも入らないからね。……まあ、あっちはすでにいっぱいだから使えないけど、“二番箱”に入らない分は、さらに“三番”を出すから大丈夫だよ」

「分かりました」


 とりあえず、手の空いている人は全員が素材の回収に取り掛かった。

 あーしは解体した(というか現在進行形で今もしている。……剣くんが)のでこの作業は免除された。なので見学している。——ってかさ、いや、さっきの……


 フランツさんが、メタルトカゲの皮を例の箱まで運ぶと、袋を被せてから、その中に入れていく。

 ゆーて皮もけっこーデカいので、ショージキその一個であの箱とか一杯になりそーってか、長さ的にすでにソレ収まらなくね……?

 なんて思ってたら、あーしはまたもや理解不能な光景を目撃した。


 地面に置かれた箱の高さは、ゆーてフランツさんの膝ちょいくらい。フランツさんは自分の背丈よりデカい皮を縦に持って運んで、そのまま箱の中に放り込む。

 そんな入れ方したらトーゼン皮は箱の底に当たるし、つーか入れ方ヘタすぎ……? なんて考えたあーしの目の前で、皮はそのまま箱の中に消えた。

 

 ………………は?


 ……いや、だから、なんなん、さっきからさぁ。

 アレ、あーしの目、バグった?

 いや手品? あの箱ってなんかそれっぽいフインキあるんよ、なんか見た目も人体切断とかする時に使うよーな箱感あるし。


 ……いや、まあ、つまりはコレが“ボンドさんが居ればたくさん運べる”っていう、アレの、意味か……?

 要はあの箱も、なんかトクベツな機能があるってコトなんしょ? いや、アレもボンドさんの“スキル”ってやつのチカラなんか……?


 

 ——まあ、そんな感じで、たくさんの素材に関しても、ボンドさんの活躍によってすべてが回収できたのだった。


 ボンドさんの出した箱は、ボンドさんのスキルによって内部の広さが見た目以上になってるってコトらしくて、その後も大量の素材をその内部に収納していった。

 箱の口よりデカいやつとかは、ボンドさんがコレまたスキルを使って通せるサイズにまで“小さく”させたりとかもして。

 更には、持ち運ぶには重さがヤバいようなブツとかも、スキルによって浮かせることで難なく運んでいた。


 ……とりまアレよ、ボンドさんはドラの「四次元ポケット」とか「スモールライト」みたいなことが出来る能力のーりょくを持ってるってコト。

 マジかよボンさん、アンタ22世紀から来たんデスカ?

 ……「商人」のジョブの能力ってコトなんだろーけど、いや、マジでジョブの能力ってヤベーんだね。

 

 ……あーしも俄然ガゼン、ジョブってのにキョーミ出てきたカモ。。。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る