第24話 一体いつから——“それ”を使っていると錯覚していた?
あーしがデカい木の化け物を倒してまもなく、あーしらを追いかけてこちらに来ていた面々がこの場に到着した。
フランツさんのパーティーの四人、ボンドルドさん(と馬車を引く馬)、レイブンのパーティーの二人、全員が無事に集合出来た。
しかしホッとしたのも束の間、すでに次なる脅威が迫っていた。
それに気がついたローグが、急いで近くに避難出来そうな場所を探したところ、なんかちょーど良く地下に続いている洞窟への入り口みたいなんがあったので、すぐにみんなでその中に入り込んだ。
入り口の先には、広大な地下空間が広がっていた。
内部は薄暗いケド、入り口からの明かりもあり、今んとこはそれなりに視界も通った。
「ここは……内部には
「今は都合がいいんだが、居ないってのは不自然だな……なぜだ?」
ローグの言葉に続いたフランツさんの疑問に、レイブンが「おそらくだが……」と前置きして答えた。
「ここは、俺が担当した
「……確かに、巨人のいた痕跡があるな」
「まあ、そのトロールについては、すでにユメノが
「なるほど……元はトロールのテリトリーだったなら、他にモンスターがいないのも納得だ。……ここが安全なんだとしたら、どうにかこの中に隠れてやり過ごすしかないか……」
今、あーしらに降りかかっている脅威——それは大量のモンスターが付近に集結しようとしているというモノ。
その原因は、まあ、あーし……がデカい動く木を倒すのに使ったワザ。アレのデカい音が、どーやら周辺のモンスターを刺激して……とゆーことらしい。
まあ、つまりはあーしのせいなんだけど……でもしょーがなくね? ゆーてあの木は中々の
とりまあーしらは、洞窟に隠れてモンスター達をやり過ごすことにして、それなりに奥まで進むと、良さげな位置を
ちょっとした
これでどうにか、集まって来るモンスター達をやり過ごせれば、と願っていたのだケド——やっぱりそうカンタンにはいかないんだね……
「——クソッ、入ってくるぞ……!」
ローグが小声で悪態をつく。
洞窟の入り口より入ってきたのは、体の太さや長さがもはや電車かよってデカさの——
「——あれはっ! ……もしかしたら、『
「ボンドさん、知ってる魔物なんですか……?!」
「知識では、ね。……もし本当にそうだとしたら、あれは
「れ、Lv38……!?」
「っ、毒か……厄介だな」
「それに、かなり感知能力も高いとか……なんでも、生物の体温を探知出来る能力があるという」
「えっ、それってヤバくない……?」
思わずあーしも小声でそう呟く。
「ああ……おそらく、我々の事も見つけてしまう……可能性は高い」
あーしらが隠れている場所は、ボンドさんが使った道具によって簡単には見つからないよーになっている、らしーけど……相手の見つける能力が高かったら、ソレも効かないってコト……?!
……ま、だとしたらもう、戦うしか無くね?
「“……やれやれ、次は蛇退治ということか、忙しいことだな”」
「ユメノ、やるのか……? やれるのか……っ?!」
「ま、待てっ! アイツとここでやり合ったら、外に集まってきてる連中にも確実に気づかれるぞっ! さすがにあの数と連戦になったら、ユメノ、お前だって……」
「——っ! ローグ、外にはそんなに沢山いるのか……?」
「……ああ。——まあ、連中も一枚岩ってわけじゃねーし、互いに争ってる連中もいるが……
「でも、このままじゃあのヘビに見つかっちゃうじゃん? ならやるしかなくね?」
「ユメノ……」
「ま、なるべく外で戦うよーにするよ。とりまアイツ倒してからね」
「ぐっ……すまん、ユメノ……オレ達は、君に
「ちっ、ルーキーに頼り切りなんて、情けねーぜ……」
「ユメノ……死なないで……私、無事を祈ってるから……!」
「……健闘を、祈る」
フランツさんのパーティー全員が、あーしに見送りの言葉をかけてくれる……なんかまるで、最後の別れかのよーだケド……。
「……ユメノ君、どうしても無理だと思ったら、その時はここに戻ってきていい。だからどうか、出来る限りでいい、奮闘してくれ……!」
ボンドさんはそう言ってくれたけど、モンスターを倒しきれなくてあーしが戻ったら、どっちにしろ終わりだよね?
まあ、死ぬまで戦ってくれ! とか言われるよりはいいんだケド。
「ユメノ……お前には命を救ってもらった借りがある。もちろん、この借りはいずれ返すつもりだ。だが今の俺には、何も返せない。だから……まだ、死ぬなよ」
レイブンもレイブンなりに、あーしのことを激励してくれてる。
「あ、えっと……きみには感謝してる。レイブンを助けてくれたし……僕らもなんか、お礼が出来ればいいんだけど……と、とにかく死なないで!」
「そ、そーだな。なんかしてやれたら良かったけど、おれ達にゃ、何も出来ることないし……と、とにかく頑張れ!」
なんとなく流れで、レイブンの仲間二人もあーしに声をかけてくれる。
……さて、みんなとのお別れも済んだし、それじゃ行くかな。
いやいや、別にお別れする気はねーけどさ。でもまー、今度の戦いは、ゆーてあーしとしても中々に厳しそーかなという気持ちはある。
……でもやるしかねーし、よし……イクカ……!
「——あ、そうだ。あの、おれらには無理だけど、でも、あっちの
「あぁアレか! 僕らも昨日使ってもらったよね。——そうだよ、せめてアレくらい使ってもらったら……?」
……ん、補助
あーしはモイラの方に視線を向ける。
「あっ、でも、私、“
モイラは、どこか申し訳なさそうにそう言った。
それにローグも残念そうに続ける。
「まあ、ジョブも持ってないお前たち二人は効果的に感じたかもしれねーが、昨日モイラが使ってた加護とか、近接ジョブ持ちならフツーに自前のスキルで出来るレベルのやつだからな」
「なんだ、そうだったのか……」
「——え、でも、この子もルーキーだしジョブも持ってないんだろ? なら効果あるんじゃないの?」
「おいおい、コイツは普通のルーキーとはまるで別物だろ」
「それは、そうだけど……」
「……待てよ、いや、まさかな……。——な、なあ、ユメノ、君って“
フランツさんが、ホントに念のため、という風に聞いてきた。
「“ふっ、おいおい、いまさら何を言っている?”」
「だ、だよな、悪い……」
「……ソレで、そのオーラなんとかってのは、何なの?」
「…………聞いたかフランツ、マジかコイツ、いや、ほんとに……マジか??」
「い、いやいや、知らずに使っているという可能性とかは……?」
「……でもコイツ、戦ってる時にも
「……あえてしてないとか、使うまでもないとか、なのか……? ゆ、ユメノ」
「……いや、だから、知らないし。たぶん使ってもナイと思うケド……?」
「…………えーっと、それじゃ、モイラ、試しにやってみてくれないか?」
「……あ、はい、その、“
「まあ、それと、“
「わ、分かりました。——じゃあユメノ、ちょっとこっちへ……」
何やらモイラがあーしにやってくれるっぽい流れになった。
モイラは何やら左手で、首から下げてる物を握り込んだ。そして、右手にはなんかハンドベルみたいなものを持って、それをあーしに向ける。
少しの間、目を瞑ってじっとしていた後に、目を開けると、あーしに向けて右手のベルを振りかざした。
『“
すると、なんかあーしの体の内から何かが……何かが湧き出てくるよーな感覚が……!
——こ、これは……
さらに、先ほどの手順を繰り返して、もう一回。
『“
今度はあーしの体の周りに、
——これは……守りだ。見えない
——パワーとアーマー。ナルホド、つまり、これは……“
「……ユメノ、どうだ?」
フランツさんの問いに、あーしは簡潔に答える。
「……いや、勝ったわ、コレ」
「えっ」
「“ちょっと外のモンスター滅ぼしてくる”」
「ユメノ——?!」
あーしは隠れていた窪みの内より飛び出した。
——カラダがっ、軽いっ! 速いっ! そしてっ、強いっ!!
——勝てるっ! これなら勝てるっ!!
——今ならっ、あのケモノすら苦戦することなく瞬殺出来るっ!!!
あーしは一気に身体能力が上がっていた。
本来なら、いきなりこんなパワーなってもマトモに動けんレベルやけど、そこはそう、剣くん操作のオートモードなあーしにはなんの問題もナカッタ。
今のあーしなら、剣くんの求める
ソレはつまり……一気に動きのレベルが
勢いよく飛び出したあーしの目の前には——お前普段どこの路線走ってん?——ってくらいデカいヘビ。
ヘビはあーしがトツゼン出てきたのにも即座に反応して、大口を開けて一気に突っ込んで来た。——コイツのデカさなら、あーしなどヨユーで丸呑み
むろん今のあーしは、そんな
巨体に見合わぬスピードは、まさに電車かってくらいの速さだったケド、今のあーしにはなんの問題もナイ。
迫る大口を、それより大きく跳んで
『“
一瞬で相当な長さまで伸びた光の刃が、ヘビの首を一撃にて斬り落とした。
——ヌッ、これは……ワザの使いすぎ? これ以上使うのは、ちょっと
あーしはワザを放った感触から、どーにもこれ以上はあまりワザを使えないかもしれないというのを理解する。
まあ、今のあーしならワザ使わなくてもなんとか出来そーだけど、うーん、でもデカいやつとかはやっぱメンドーかなー?
とりまヘビは倒したし、外のヤツらを——って、ヘビまだ生きてるっ?!
斬り落とされたヘビの頭が、首だけで動いてあーしに向かってくる。
かと思えば、胴体の方もやたらと暴れてビッタンバッタン。
元がデカいから、こんなんされたらチョー迷惑なんすケド! つーか洞窟が崩れちゃいそーだし!
あーしはまず、突進してくるヘビの頭を、再び跳び上がって躱すと同時にその上に着地——その勢いのまま、ヘビの眉間辺りに剣を深々と突き刺す。
暴れるヘビ頭、しかしあーしは剣にしがみ付いて耐える。
ヘビ頭は徐々に動きが緩やかになっていき、ついには動きが停止した。
——うん? これって、もしかして……
続いてあーしは、
胴体は頭よりダイナミックに動き回る。そのままだと地面や壁にぶち当てられそーになるので、そうなる
普通なら、こんな暴れるデカいチューブの上でそんな
そんな演目をこなすことしばし、ついにはひとしきり暴れた胴体の方も、動きを止めて沈黙するのだった。
そして、あーしは疑問の答えを確信した。
——これ、やっぱりそーだ。そーゆーことなんだ、コレは。
と、そこで洞窟の入り口より新手が侵入してきた。それも複数。
一匹目——あーしの身長より余裕でデカいカマキリ。もちろんデカくて鋭そーな
二匹目——頭が二つある犬みたいなヤツ。デカい。大型トラック並み。
三匹目——
素早い動きで一番最初にあーしの元に来たのは、頭二つのイヌ。両方の口で同時に噛みつこうとしてくる。
『“
あーしは跳び上がって噛みつきを躱しつつ、すれ違いざまに空中で“剣技”を放って二つの頭を同時に吹き飛ばす。
着地と同時に、今度はカマキリが羽ばたきながら空中から襲いかかってくる。
ビュビュン——ほぼ同時くらいの連続した両手のカマによる攻撃は、これまたほぼ同時な速度の二連剣撃によって弾く——どころかカマごと破壊する。
両方のカマを壊されたカマキリは、
『“
あーしのオリジナルワザを食らって、逃げる間も無く粉砕された。
最後にやって来たのは、メタリックなトカゲ。
動きは一番遅いケド、見た目は一番硬そーだし——ジッサイ一番硬いんでしょーね。
ま、カンケーないケドね。
グワッ——と噛みついてくる口をひらりと躱して、頭の上に乗る。そして剣くんを頭部に突き立てる——!
ザクッ——確かに感触はすごい硬いっぽい感じだったケド、ほとんど
グラッ——トカゲはその一撃で仕留められたよーで、噛みつきの勢いを残したままその動きを停止して、地面を
そうして、洞窟に
……さて、そんじゃ後は、洞窟の入り口の辺りに陣取って、外の
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