第10話 ドン・ネズーミ……ちゃん
は?
え、なんでネズミちゃん、あーしにこれを買わせようとしてくるの? どういう
「びっくりしたよね。でも最後まで話を聞いて欲しいんだよね」
なんだろう、ここから逆転出来るの? あーしは無理だと思うんだケド……。まあ、とりあえず最後まで聞いてみよう。
「
ほうほう。
でもそれなら、フツーに魔法の兜って言うよね? つまり
「この兜はね、兜を被ってたら周りの人に意識されにくくなるのよね。それがまず第一の効果なのよね」
うん? なんか聞いたことあるなー、そんな効果を持つ被り物って。ドラの道具にもあったよね。色的にもちょっと似てるし。
「そして第二の効果なんだけどね、つけている間は普通より疲れやすくなるのよね。そこは
はー、ナルホド。やっぱりデメリットもちゃんとあるわけね。
疲れやすくなるってのは、つまり
でも、ただちょっと疲れやすくなるダケってんなら、そこまで気にならないケド……程度によるよネ。
でもまあ、人に意識されなくなるとか今のあーしにはチョー使える効果があるわけだし、それを考えたら少しくらい疲れるだけならアリ、かな〜?
「そして第三の効果、最後の効果はね……まあ、
マジか。
外せないって、それじゃずっと付けたままになるってコト? え、一生? 一生外せないの?
つーかそれ、第二の効果と合わさると割とヤバくね? だって寝てる時も外せないんしょ? んで、つけてる間はどんどん生気を抜かれてくわけっしょ?
コンボ成立してんじゃん。フツーにコロしにきてるじゃん。
てかまずさ、こんなカワイくねー兜を一生外せないとかなんの罰ゲームなんだよ、ゼッテーやだろそんなん。
「外せないんだけどね、ずっとつけてたら兜に生命力を吸い尽くされて、体を乗っとられるのよね。だから気をつけてね」
だから、じゃねーんデスけど。
いやどう気をつけろってゆーの? 外せないならケッキョクその内に死ぬジャン? だったら、ゼッタイつけるわけないジャン。
「えーっと、外せないならフツーに死ぬしかナイと思うんだけど……どう気をつければいーの?」
「それはもちろん、定期的に外せばいいのよね」
「いや外せないって言ってなかったっけ?!」
「普通には外せないんだけどね。外す方法も、もちろん、ちゃんとあるのよね」
あ、あるんだ。ヨカッタ。
「兜に“
「でぃすぺる? なにそれ?」
「一時的に
「そーなんだ。んでも、そんな魔法なんてあーし使えないんですケド……?」
そもそも魔法なんてものが、まずあーしにはなんもワカランチンなのですケド。
「確かに普通の人は“解呪”なんて魔法は使えないよね。そもそも魔法を使える人なんて、ごく一部しかいないわけだしね」
「そうだよねー。魔法使いなんてフツーいないっしょ。あーしも知り合いに魔法使いとか一人もいないし」
「でも大丈夫よ。自分が使えないなら、使える人に頼めばいいのよね。“解呪”を使える人なら、教会にいけば大抵いるのよね。だから教会に行って頼めばいいのよね」
「…………教会かぁ」
ナルホドー、普通なら教会に行って頼めばそれやってくれる感じなんだねー。
でもね、あーしがなんで、そんなブツまで使ってまで頭を隠そうとしているのかというとさ、
教会から隠れるための装備を、教会で外してもらわないといけないとか、ちょっとナニヲイッテイルノカワカラナイ……。
やっぱりこのカブトは無しだね。
「……ネズミちゃん、オススメしてもらったところ悪いけど、やっぱりこのカブトはやめとこうかな。いやー、あーしってちょっと教会ってトコとソリが合わなくてさー」
「知ってるよ。あんな騒ぎを起こしたらね。この街の教会には二度と近寄れないよね」
「そーそー、あんだけデカい騒ぎを起こしちゃったらね〜——ってなんで知ってんの!?」
えっ、えっ、マジで、えっ? なんでそのこと知ってるのネズミちゃん?!
いやそりゃ、すごい騒ぎになってたし、噂が広まるのはナニもおかしくはないんだケド。
でも、あーしが逃げ出してからまだそんな経ってないし、いくらなんでもこの時点で知ってるハズがないと思うというか——まだついさっきの出来事だよ?!
……ん? てゆーかネズミちゃんって、最初からそれを知ってたからあーしにこのカブトを
あーしの内心が表情に出ていたのか、ネズミちゃんは、焦るあーしに向けてなにやら説明を始めた。
「アタシがそれを知ってるのがおかしいかい? 別に何もおかしくはないよ。だってアタシにはたくさんのお友達がいるからね。アタシの情報網にかかれば、この街のことで知らないことなんて何もないのさ」
「ええっ? ナニソレ? お友達ぃ?」
「そうさ、
「……なんかよく分からんケド、ネズミちゃんはネズミたちのボスってコト?」
「別にそんな大層なもんじゃないよ。ただ、この街のネズミでアタシに逆らえるようなヤツはいないけどね」
いやそれはボスじゃん。完全にボスとして君臨してるじゃん。
……まあ、よく分からんけど、ネズミちゃんには独自の情報網なるものがあって、それでこの街の出来事はすぐに知ることが出来るってことなんスかね。はぁ、それはスゲェ。
いやでも、ということは、つまりネズミちゃんは、あーしが教会で
つーか、なんなら最初からそれ知ってたワケじゃ? 黒髪なんて特徴的な見た目してますし、あーし。
……ならこれ、フツーに捕まっちゃうんじゃないの、あーし。だって店に犯罪者きたら、フツーなら
でも今までは、フツーに接客してくれてたケド——それはただの時間稼ぎで、実はもうすでに通報済みだった、なんてことは……
ヤベッ……あーし今すぐ逃げるべき?
あーしの考えが表に出て、明らかに
「そんなに心配そうにしなくても、大丈夫よ。アタシはアンタを、教会に突き出したりするつもりはないからね。——そもそも、教会とソリが合わないのはアタシも同じさ。なにせ、
そう言ってネズミちゃんは、マジにこの場でステップを踏み出して、何やら踊りのようなものを披露し始めた。
子供くらいの大きさのネズミちゃんが、尻尾をふりふり、頭をふりふり、お
まあなんかよく分からんけど、ネズミちゃんも教会のことキライみたいね。
それなら、あーしのことを黙っててくれるのにもナットク出来る。
つーかむしろ、あーしのことを手助けしようとしてくれてる感あるくない?
「んじゃあ、ネズミちゃんはあーしのことを教会に突き出すつもりはないんだね?」
「そうだよ。むしろアタシはアンタに味方する方だよ。教会が嫌いなヤツはみんな仲間さ」
「……ありがと。でもさー、教会を使えないことはどーしよーもないから、カブトについては諦めるしかないヨネ? ネズミちゃんが良かれと思ってこれを
「そうだね。この街の教会はさすがに使えないだろうね。でもそれなら、別の街の教会を使えばいいんだよ」
「別の街の……?」
「そもそも、アタシはアンタが、すぐにこの街を出るつもりだと思ってたんだけどね。この街の教会に目をつけられたんだから、よっぽどの事情でもない限りは、すぐにトンズラするもんだよね、普通はね。……それとも、アンタはこの街を離れられない事情があるのかい?」
「いや、そんな事情はないんだけど……」
「なら、とっとと街を出るよね。そうして次の街か、あるいはその次あたりで教会に行って、兜を外せるようにすればいいよ。あるいは教会を避けて神殿を頼ってもいいよね。……まあ、アタシの考えを言わせてもらえば、兜は出来るだけ被っておいた方がいいと思うけどね。なんせアンタの黒毛は目立ちすぎるからね。この街の教会からは離れても、噂が立ったらどうなるか、分からないからね」
むむ……街を出る、かー。
今後のこととか、まだゼンゼン考えてなかったけど、そーか、とっとと出た方がいいんだ。
まー、あーしも別にこの街に用があるわけではないから、すぐに出て行くのは構わないんだケド。
……でも、それはそれで色々と問題があるんよね。
では何が問題なのかとゆーと、まあ、行くアテが無い、とゆーコト。
この辺の土地勘とかゼンゼン無いし、知り合いもいない。つーかカネも無い。
いやホント、何も無いんよ、マジで。今のあーしにあるものなんて、この剣くんくらいのもんよ。
だからトツゼン街から離れろと言われても、マジでどーしたもんかって感じなんすけど……
あーし一人じゃもう、ホント何からどーすればいいのかもワカラナイから、誰かに相談でもしたいところだけど……。
まず知り合いがいないし、電話も無いし、親切にしてくれそうな人もいないというか、いつのまにかクソ目立つ見た目の犯罪者になってしまっていたというか……。
はぁ、マジであーし、これからどーしましょ……?
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