3-10
結局俺はソファを占領して寝オチしてしまい、トムが腹に飛び乗ってくるまで眠りこけていた。
さすがにモリソンさんちの
夜のうちにけっこうな雨が降ったらしく、道路のあちこちに水たまりができていて、雨に濡れたアスファルトと街路樹の葉のにおいがした。空気が澄んでいて冷たい。
そんなふうに匂いを感じたのも何週間ぶりだろう。ほんとに、腹が減ってるとろくなことがない。
ポケットからスマホを取り出したら、画面がつかなかった。モリソンさんちで充電させてもらえばよかった。俺は教会へ急いだ。
司祭館の玄関のカギを開けても、誰の気配もしなかったし、もちろん……クリスのにおいもしなかった。代わりに生ゴミと汗のにおいがして、さすがにこりゃヤバいな、クリスが帰ってきたら絶対怒られると思ってリビングの電話に目をやったら、留守電が入っていることを示す赤ランプがついていた。
俺は駆け寄って、でもこれまで何回も裏切られてきたから、今回も、どうでもいい慰めの言葉を吹き込んできたどこかの誰かだろうと自分を落ちつかせてから再生ボタンを押した。
スピーカーから流れてきたのはスミスさんの声だった。
『ディーン、落ちついて聞くんだ』落ちつけって言ってるわりには、スミスさんは今さっき銃撃戦でもやってきたみたいな感じだった。
『マクファーソン神父が見つかった。病院に搬送されたが意識がない。これから病院の住所を言う――』
いったんメッセージが途切れた。
続けてもう一件伝言が入っていて、俺はふるえる手でメモ用紙とペンを探し出して、病院の名前と住所を書きとった。
意識がない。意識がない――ああ、それって考えられる限りでサイアクの状況ってことだ。まだ死んでいないだけ。たぶん、スミスさんは俺を気遣ってそういうふうに言ったんだろう。
行ったことのない病院だったが、バスとどっちが早いかグーグルに聞くまでもなかった。俺に決まってる。
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