3-5
次の日俺は朝早く起きて、朝飯も食わずに学校へ行った。
クリスの顔なんか見たくもなかった。顔を合わせれば絶対、なにごともなかったみたいに「おはよう」って言うに決まってる。俺がどんな思いであんなこと言ったか知りもしないで――ニックとは違う意味であの薄情者は!
あれでよく神の愛がどうのこうのいえるよな、目の前の兄弟を愛することができない者は神を愛することができない、だっけ? 目の前の群れの兄弟っていったら、まんま俺じゃねえかよ!
クリスが神様ってのを
それとも、兄弟っていうのはやっぱ……血のつながったやつじゃないとダメってことなのか?
俺は今でも、ちょろそうな車を見るとギルやロジャーの兄貴に教えてやりたくなるし、そんなヘマすることなんか絶対ないと思うけど、バートとバーニーの兄貴がサツにつかまったって
俺の天秤はすっごく揺れてる。
クリスは血のつながった兄弟じゃないけど、一緒にいる、俺の
死にもの狂いでやったって、俺はギルバートの兄貴ひとりにすらかなわない。人狼にはクリスのお祈りも効かない。「使えるカードはなにもない」状態だ。
だからって、じゃあ
俺は授業が終わったあとも図書室にダラダラ居残っていた。勉強がしたかった……わけじゃない。第一頭に入るわけない。今日はクリスの出勤日じゃないのが救いだ。マジで
うーん、スミスのばあさんに泣きついて飯を食わせてもらおうかなあ。バアさんなら、俺がちょっと悪いこと(授業をサボったとか、ミサ用のワインを飲んじまったとか)したからクリスに怒られて一食抜きにされたんだっていえば、
思ったとおり、俺が玄関先に現れて、ちょっぴりうなだれて、クリスに叱られたんだと、やってもいないいたずらをしおらしく告白すると、スミスさんは大げさに眉をひそめたあと、俺を家に入れてくれた。
「ごめんなさいね、前もって知らせていてくれたら、もっとたくさん作っておいたんだけど……。午後にいつもの量の買い物をしてきてしまったから、今週はもうこれぐらいしか……」
「ううん、いいんだ、俺が悪いんだから」
近所の人の車に乗せてもらって買い物に行くバアさんは、ケータイを持っていない。途中で連絡して買い物を増やすなんてできないし、これからやろうとしてる悪事を先に通告するやつなんていないだろ。
「でも、神父さまがいらっしゃらないときの食事はどうしているの、ディーン? さっき教会にお電話したら、どなたも出られなかったわよ」
ゲッ、なんで電話すんだよ、ウソついたのバレるだろ!
「えっ……いや簡単な料理なら俺でもできるんだけどその、スミスさんのご飯のほうがおいしいから、つい……。けどなんで電話したの?」
「先週のミサでスカーフを忘れたんじゃないかってことに、今朝ようやく気づいて。それにあなたが来ていることを一応お伝えしておいたほうがいいでしょう、心配されるといけないから」
「おっ……俺のことなら大丈夫だよ、女子供じゃないんだし!」
「そうなの? でも……」
「スカーフなら探しとくからさ! それに、クリスが出ないのは、きっとほら……病院かどっかに呼ばれたんだよ。病院だとケータイ使わないようにしてるからさ」
「ああ、そうね」
とバアさんは納得して、病気やケガで入院している人のために、とかいってお祈りを始めたので、俺はしかたなくつきあうはめになった。身から出た
だけどその夜クリスは帰ってこなかった。
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