ひとりぼっちの幽霊
仲仁へび(旧:離久)
第1話
幽霊でひとりぼっちってかなり悲惨。
その土地に縛られてる私は動くことができない。
どういう理由で死んだのか分からないけど、生前の私はそうとうそこを動きたくなかったみたいね。
私は、どうにかそこから離れようとしたけど、いつも失敗。
一定距離を移動したら、元の場所に戻されてしまうの。
ここ、人が来ないから退屈なのよね。
廃墟のホテルだもの。
運が悪いことに、やんちゃな集団が肝試しをするのにもためらうくらいの、廃れっぷり。
おかげ様で何年もひとり。
はぁ、誰か悪党でもいいから来てくれないかしら。
数年前、借金をなすりつけられて女に逃げられた俺は、やばい人間に追われて各地を転々とする生活を送っていた。
人目を気にする生活は過酷で、体力も精神も消耗するばかりだ。
今度あの女にあったら、ただじゃおかない。
とは思うものの、警戒心の強い女だったから、もう二度と会うことはないのだろう。
もうその件に関しては諦めていた。
それより明日の生活の心配のほうが重要。
やつれはてた俺は、身を隠すためにとある廃墟へ向かった。
やんちゃな人間すらためらう荒みっぷりの廃墟。
訳ありの人間にはいい隠れ場所だ。
ボロボロの階段をのぼって、各階を見て回る
どこの階もガラスが割れてて、風が吹き込んでくるな。
寝泊まりするには、もっといい場所を見つけなければ。
あちこち壊れた廃墟を探索していると、不意に声がかかった。
「あっ、そこの床抜けるから気をつけたほうがいいわよ」
「あっ、これはご丁寧にどうも」
「「……」」
こんなところに人がいるわけがない、と気づき真っ青になる。
しかし、そこにあった半透明の女の顔を見た俺は、すぐに真っ赤になった。怒りで。
俺はその女をみて、思わず叫んだ。
お前そんなとこにいたのかよ!
ひとりぼっちの幽霊 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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