第13話 馬鹿にしないでよ!
瞼が重い。何かが柔らかい物体が乗っかっているみたいに。
今朝は5時起き。今から無料のサンライズツアーに参加するためだ。主催は昨日と同様、フォトグラファーマリオさん。
無料だから別に無理しなくてもいいのだが、旅において無理するかしないかって、またこの場所へ来るか来ないかのジャッジで決まるような気もする。
ミャンマーか…。再度訪問あるかな…。
最大都市ヤンゴンならあるかもしれないけど、地方都市パゴンはないかも知れないなぁ・・・。
どの国を旅していても、必ず1度は訪れる贅沢な迷い。
で、結局気力を振りしぼって起きるんだ。そもそももう来ないだろうなと思って毎度長期旅程を立てて、1か国周遊しているんだからと自分を布団の中で説得してね。
出発は5時40分。今回は総勢20名でスタートする。朝のツアーなので徒歩でスポットまで向かう。20分ほど歩き、ライトアップされているパコダ前に到着した。
朝晩の冷え込みがきついミャンマー。ここまでのウォーキングも震えながら歩いてきた。息も白い。ドバイから来たお姉ちゃんと喋りながらここまで来たが、大半の会話が、どうしてこんなに寒いのか、と言う話題だった。
遺跡保護の観点から今、パガンではパゴダに登ることは禁止されているはずだ。
しかしマリオさんが案内したのは、登れるパゴダ。
そんなのあるんだ。いや、だめだけど、やっちゃってるパターンじゃないかなと後から思った。
靴を脱いで冷たい石を歩きながら、上に向かう。靴を脱ぐのは礼儀だから仕方ないが、朝はきっついのう。氷を上を歩くようで罰ゲームのように冷たくて痛い。
6時過ぎ、パゴダの屋根の上に到着。すでに多くの旅人がカメラを構えていた。ここのパコダは登れるよ!とか、どこからそんな情報を仕入れてくるのだろうか。
参加者皆さん超親切で、屋根に上るときも手を引っ張ってくれたり、支えてくれたりしてくれる。いけないことしている者同士、と言う共通点から優しくできるのだろうか。
バカン日の出は6時42分。30分近くパゴダの上で待っていると芯まで冷えてくる。回路を忍ばせてくればよかった。皆さん、震えながら太陽のお出ましを待つ。
表情は真剣勝負をしている顔つきだ。
お・・・やっと周囲に赤みが差してきた。ちらほら、バルーンも上がってきている。
神々しいなぁ。パコダの後ろから鋭くも儚い後光の光が差し込む。
来年の年賀状にしようかな。・・・・・・・・・・・・・・と。
7時にギブアップ。寒すぎる。おしっこしたい。
パコダを降りると内部にブッダが鎮座しているのが見えてきた。
朝のお祈りをする。なかなかスマートな表情でこちらを見ている。でも私に聞こえてくるのは、
「早くおしっこにいけ。」
と言う声のみ。では行かせていただきます。
案内人のマリオさんを探すも見つからない。結局、予想以上に多い人で見つからなかった。先に戻ります、の一言は言いたかったが仕方がない。あとで再会したら謝ろう。
ダッシュで宿まで戻る。途中、朝方、ライトアップされていたパコダの近くでは、地元の人が朝市の準備をしていた。
しっかり太陽が出るまでは、やはり寒い。
でも朝日に照らされたパコダもいいなぁ…。ここだけ時間が止まっている…。
贅沢な空間だ…。と感傷に浸っている場合じゃない。緊急事態を抱えているのだ。
宿へ飛び込み、用をすます。安心と安定を取り戻し、足を洗ってから変わり映えのしない朝食を頂き、おいしくないコーヒーで暖を取る。
宿のスタッフはダウンを着ている。だって寒いもんね。紅葉の時期のようなプラスティックな風がほほを撫でていく。
今日も長い一日になりそうだ。お替りしてこようかな。
因みに昨日乗せて頂いたお兄ちゃんとこの朝食BARで再会し、レンタルバイク代の半額を支払って欲しいとお願いされた。このお兄ちゃんはバイクを1日使っており、私は夕方ちょこっと後部座席に座らせてもらっただけで半額とは…と思ったが、クレームイングリッシュが思い浮かばなかったので観念して、要求通り4000チャットを支払った。
やはりもうちょっと、とっさの一言イングリッシュを勉強しなきゃなぁ。
バガンは思いのほか広い。
滞在3日目。オールドバガン、ニューバガンエリアにも行っておきたいから、ある決断をした。
そう。思い切ってEバイクを借りたのだ。もちろんヘルメット付き。
Eバイクと呼ばれる中国製のもの。免許なしで乗れるようでパスポートチェックもなかった。電動自転車と言う枠組みらしい。
免許は持っているものの、ペーパードライバーの私。
さて、どうなるやら。
宿がある場所はレンタルバイク屋が軒を連ねるストリート。向かいに暇そうなレンタル屋があり、親父が欠伸をずっとしていたので、そこで借りることにした。
1日借りて6000チャット。
だいたいレンタルバイクの相場は統一されている。ん???私さっきの兄ちゃんにちょっと多めに支払ったのか?
やはり、相場を先に把握しておくべきだった。把握してい居たところで交渉イングリッシュはできないが…。
もやもやを抱えたまま、まずは周辺をぐるぐる回って練習させてもらう。うん、なんとか行けそう。
さて出発。
のろのろとスピードを全く出さず、走り始める。
緑の中を駆け抜けてく電動バイク
一人旅なの私気ままにアクセル踏むの
交差点ではチャリが何度もベルを鳴らして
煽ってくるから私もついつい
大声になる
馬鹿にしないでよ!
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