第141話 農家の食事は献立は決まりがちだけど美味しいのは間違いない
さて、皐月おばさんの家で洋裁について、色々教えてもらっていたら、良い時間になってしまった。
「もう遅くなってきたし、うちでご飯を食べていったらどうかしら?」
皐月おばさんがそう言うと弥生ちゃんも言う。
「それなら私も手伝うよ」
そしてお母さんを見るとニコニコして言う。
「それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかしら」
もうこうなったら俺が何かを言う意味はなさそうだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて食べていくよ」
それを聞いた皐月おばさんは嬉しそうに言った。
「じゃあ、まずはおやつ代わりにすぐ出せるものから作っちゃうわね」
というわけでまず出てきたのは焼きトウモロコシだ。
「うわ、うまそう。
早速いただきます」
焼きトウモロコシにかぶりつくとバター醤油でこんがり甘じょっぱく、香ばしい味わいが口の中に広がった。
「うーん、懐かしい味だな。
お祭りの屋台とかで売ってるやつにも似てるけど」
俺がそういうと弥生ちゃんが笑いながら言う。
「昔は一緒によく食べたよね。
基本的に味付けは屋台のものと同じだから美味しいでしょ?」
「うん、すごく美味しい。
これなら毎日でも食べられると思うよ」
俺がそういうと弥生ちゃんは苦笑しながら言う。
「あー、でも本当に毎日のご飯がトウモロコシだらけになると流石にうーんってなっちゃうけどね」
俺は弥生ちゃんに聞いてみる。
「え、そういうこともあるの?」
弥生ちゃんはコクっとうなずいて言う。
「トウモロコシが取れすぎたりするとそうなることもあるよ」
「ああ、スーパーでも八百屋でも商品を置けるスペースは決まってるから、出荷できる量も制限があるんで、残りは自分達で食べることになっちゃうってこと?」
「うん、ご近所さんとかにおすそ分けとかしてもある程度は余るときとかあるからね。
まあ、トウモロコシは葉野菜の小松菜とかレタス、あるいはフルーツとかよりはまだ持つから取れ過ぎたら捨てるとかはないけど」
「確かにスーパーの見切り品のコーナーって、葉野菜とかバナナとかいちごとかのフルーツが多いもんな。
豆とかトウモロコシとかはほとんどみない気がする」
「だから、最近うちで作ってる作物は豆とかトウモロコシとかジャガイモとか何だよね。
お米もちょっとは作ってるけど、あんまりお金にならないから今のメインは梨だね」
「確かに梨は千葉県北西部の名産品だよね」
「そうそう、梨狩りとか梨の直売とかが今は一番お金になってるからね」
「梨も食べたいけど、まだ季節には早いよね」
「そうだね、夏休みくらいから取れるけどメインは9月10月だから今はまだまだ早いね」
そんな事を言っていたら夕食が出来上がってきたみたいだ。
献立は豚肉とゴーヤにトウモロコシのチャンプルーにトマト・とうもろこし・オクラ・いんげん・みょうがの夏野菜のおひたし、いんげんとえのきの煮びたし、冷たいコーンポタージュ、後は茹で枝豆と初夏らしい献立だった。
「うーん、どれも美味しそう。
頂きます」
俺がそういうと弥生ちゃんが嬉しそうに言う。
「殆どはうちの畑で取れたものだよ。
豚肉とかトマトにえのきとかは違うけどね」
「こういう献立もいいよね」
やっぱりとれたてだからなのか、全部美味しくて俺はあっという間に平らげてしまった。
「フー、ごちそうさまでした」
そしてそれを聞いた皐月おばさんは嬉しそうに言った。
「やっぱり男の子は良いわね。
美味しそうにたくさん食べてくれるし」
それを聞いて弥生ちゃんはすねたように言う。
「だって太りたくないもん。
お母さんは食べてもあんまり太らないけど、私はそうじゃないし」
それを聞いて俺は弥生ちゃんへ言う。
「弥生ちゃんはちょっと気にし過ぎだと思うけどな。
まあ、俺のお母さんみたいに糖尿病で大変なことになるよりは痩せてたほうが良いのかもしれないけど」
そしてお母さんが言う。
「こら、そこで余計なこと言わないの。
お母さんだって最近がんばってるのよ」
「うへ、ごめん」
まあそんな感じで食事も終わり俺たちは帰ることになった。
そして帰り際にお母さんが皐月おばさんに封筒を手渡している。
「姉さん、今日はありがとう。
こころばかりだけど受け取ってね」
「あら、そんなに気を使わなくてもいいのに。
でも、ありがたく受け取っておくわ」
うーん、親しき仲にも礼儀ありってことか。
俺もお礼を用意しておいたほうが良かったかもしれないな。
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