第139話 衣装を自作してる人に教われたのはすごく助かった

 さて、西梅枝さいかちさんと自作ハーフパンツ用の生地を湯沢屋で買い、ランチをビストロで食べ、プラネタリウムを二人で観たらいい時間になっていた。


西梅枝さいかちさん今日はありがとうな」


「いえ、こちらこそすごく楽しかったです。

 あ、ハーフパンツ用の生地と型紙を渡しておきますね」


「あ、うん、了解。

 できるだけ早めに作るようにするよ」


 俺がそういうと西梅枝さいかちさんは笑顔で言う。


「試験期間の間は無理しなくてもいいですよ。

 でも夏休みの前には、できればほしいですけどね。

 家の中で履ければ助かりますから」


「了解、善処するよ」


 俺達は津田沼駅で分かれて、俺は家路についた。


 そして翌日の日曜日は弥生ちゃんと皐月おばさんに洋裁を教わる日だ。


「じゃあ、行ってきます」


 と家を出ようとしたらお母さんが思いがけないことを言った。


「あ、偶には姉さんに会いたいから私も行くわよ」


「あ、うん、じゃあ一緒に行こうか」


 というわけで俺はお母さんと一緒にお出かけだ。


 馬込沢からは鎌ケ谷・新鎌ヶ谷を超えて六実で降りて東側の大津川を超えたあたりに弥生ちゃんたちの家はある。


 弥生ちゃんの家は兼業農家で水田や、タケノコが取れる竹林にトウモロコシやジャガイモなどを作れる畑、さらに観光梨園もあって、収穫の季節になると梨狩りのための観光客が結構訪れる。


 そしてたしか、庭では鶏と犬を買っていた。


 とはいえそれは俺が小学校三年生で弥生ちゃんが六年生の頃の話だから、今でもそうなのかはわからないけど。


「でもあんまり景色は変わってないね」


「自衛隊の基地も近いからじゃないかしら?」


「ああ、それはあるかもね」


 近くには海上自衛隊下総航空基地が有るためか六実駅の東側には高い建物も少なく、のんびりした感じの田舎的な田園風景が広がっていたりする。


 そして弥生ちゃんの家も一見するとあんまり変わってなかった。


 でかい母屋と広い庭に加えて野菜などを洗うために井戸水を汲める納屋や軽トラックやトラクターに自家用車が入れられる車庫があり、犬や鶏も変わらずに居た。


「おーい、元気だったか?」


 ”ばう”


 どうやら犬には忘れられてはなかったらしい。


 その割には郵便配達や宅配便の人にはめちゃ吠えるんだけどな。


「こんにちは姉さん、久しぶり」


 お母さんが皐月おばさんにそう言ってるがお母さんが痩せたことで、やっぱり似た姉妹なんだなと言う感じに見えるようになった。


 お母さんは糖尿で早く死んでしまったが、皐月おばさんかなり長生きできたんだけど、80を過ぎてだいぶボケてしまって看護が大変だったと聞いたからなかなかままならないものだよな。


「あら、でも二人が来るのは本当久しぶりな感じね」


 そして弥生ちゃんも出迎えてくれる。


「あっくん久しぶり」


「うん、お久しぶり。

 でも、弥生ちゃんとは皐月おばさんほど久しぶりじゃないけどね」


「でもうちに来るのは随分久しぶりだよね?」


「うん、前は小学校低学園の時だったから」


 俺達がそんな話をしてると皐月おばさんが言う。


「章ちゃんもこんなにちっちゃかったのに随分おっきくなったわね」


「それはそうよ、姉さん。

 章浩ももう高校生だもの」


「時が経つのは早いわよねぇ」


 どうも皐月おばさんにとっては俺は小学校のガキンチョのままのイメージだったらしい。


「あの、みんな懐かしいのはわかるけど、今日来たのは洋裁を教わりたいからなんで……」


 俺がそういうと皐月おばさんが笑顔で言う。


「あらあら、ごめんなさい。

 じゃあ、みんな入りましょう」


 というわけで俺達は家の中に案内された。


「なんか家の中、すごくきれいになってる?」


 俺がそう聞くと皐月おばさんが答えてくれた。


「ええ、リノベーションしたのよ」


「なるほど、家の中身を綺麗にしたんだ」


「結構古かったから」


 そして案内されたのがテーブルに置かれたミシンやトルソー、ミシン糸などがたくさん収納された棚なども置いてある洋裁専用の部屋。


「うわあ、すごいな」


 俺がそういう弥生ちゃんが笑顔で言う。


「うふふ、それほどでもないけどね」


「でも、本当にすごいわね。

 私は洋裁をやめてしまったし、少し姉さんが羨ましいわ」


 お母さんがそう言うと皐月おばさんも笑顔で言う。


「元々農家で大家族が住むのが前提の家だったけど、今は人がそんなに居ないから部屋も余っているのよね。

 だからリノベーションしたのだけど。

 ええと、それじゃあ始めましょうか」


「あ、はい。

 作りたいのはこういう服なんですけどね」


 と俺は毀滅のコミックスを取り出して、キャラクターが着ている服を見せる。


「下の服も比較的ダボッとしているし、上は羽織だから、生地の柄の布さえあればそこまで難しくはなさそうね」


 あっさりという皐月おばさんに俺はちょっと驚く。


「え、そうなんですか?」


「そうね、章ちゃんでも一月もあれば作れると思うわ」


「それなら助かります」


「ちょっと見た感じだと難しそうに感じるけど、ほとんどがミシンの直線縫いで作れるからね」


 弥生ちゃんもそう言うのでなるほどと俺はうなずく。


「じゃあ、皐月おばさんのように、普段から着るものをあまり作らない俺でも作りやすいほうだったんだ」


「そうそう、だから頑張って作ってみましょう。

 学ラン風の上着と、裾をしぼった袴風パンツの方は羽織よりは難しいけどね。

 じゃあ章ちゃんの体の大きさに合わせないといけないから採寸しないと」


 というわけで俺は皐月おばさんや弥生ちゃんに体のあれこれ採寸されていた。


「本当にずいぶん大きくなったのねぇ」


「お母さんは6年くらいあってなかったからね。

 あっくんももう高校生なんだから大きくなってて当然でしょ」


「そうね、時が経つのは早いものだわ」


 採寸した俺の体の大きさに合わせて、皐月おばさんが隊服と羽織用の型紙を切ってくれているようだ。


「ここの型紙は上の前右だから……」


 みたいにちゃんと教えてくれるのもありがたい。


 そして切った型紙をメンディングテープで貼り付けて衣服っぽい形にして俺に合わせてくれる。


「こんな感じで大丈夫そうね」


 ニコっと笑って皐月おばさんがそう言った。


「ありがとうございます。

 すごく助かります」


 やっぱり、自作で衣装を作ってる人に教えてもらうと助かるな。


 クリア


 日曜日:皐月おばさん&弥生ちゃんに洋裁を教わる


 予定


 7月10日:東雲しののめさん誕生日


 7月21日:新發田しばたさんと小規模同人イベントに参加


 7月29日:西梅枝さいかちさんとホタル観賞


 8月1・2・3日:文ちゃんと海


 8月5・6・7・8日:九重ここのえさんと山でキャンプ


 8月10日:文ちゃんの誕生日


 8月のお盆:白檮山かしやまさんとコミケ1日目2日目に参加


 8月20日:中垣内なかがいととプールデート


 8月23日:南木なみきさんと水族館デート


 8月26・27日:弥生ちゃんとTDR


 7月末と8月末:東雲しののめさんと宿題

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