第136話 勉強の集中できる時間は得意苦手で人それぞれ

 さて、翌日の放課後も勉強会だ。


「うううーん、なかなか覚えられないよぉ」


 だらっと机に突っ伏して疲れ切ったように東雲しののめさんがそういう。


 割とみんなの勉強が遅れているらしい社会科をやっているのだが、どうにも勉強がはかどっている様子じゃないな。


「ニホンゴムズカシイデース……」


 同じく九重ここのえさんもあまり勉強が捗ってる様子ではない。


「うーん、二人には社会科は苦手意識が強い科目みたいだな。

 じゃあ少しやり方をみんなと変えてみようか」


 がばっと顔を起こして東雲しののめさんが聞いてくる。


「どんな勉強方法?」


 俺はその質問に答える。

 

「ポモドーロ・テクニックっていうやつで、短時間で作業と休憩を繰り返すことで、集中力と生産性を高め、効率よく作業を進めることができる時間管理方法」


「短時間で作業と休憩を繰り返す?」


「一般的には人間の集中力は45分って言われてるし、実際に学校の授業も45分だったりするんだけど、ポモドーロ・テクニックでは25分の作業と5分休憩を何度か行って、作業効率を上げるんだよ。

 ただ人間が本当にきつい作業だと集中できる限界は15分らしいから、東雲しののめさんと九重ここのえさんは15分勉強したら5分休憩しよう。

 それから15分の勉強を4回繰り返したら、30分 の休憩をとって脳をちゃんと休めよう。

 ただし、休憩時間はスマホを見たりしないでちゃんと脳を休めること。

 他の人達もそのほうが効率が上がりそうと思うなら試して見ても良いかもね」


 俺がそういうと西梅枝さいかちさんが少し考えてから言う。


「では、私もそちらの方法を試してみますね」


「うん、試してみてやっぱり45分間集中したほうが良いと思ったら、そっちに戻してもいいしね」


「じゃあ、私もそっちを試してみる」


「私もそうしてみたいです」


 どうやら中垣内なかがいと南木なみきポモドーロ・テクニックを試してみるつもりらしい。


 そして新發田しばたさんはおずおずという。


「すみません、私は今まで通り45分間集中してやります。

 あまり細切れに勉強するとかえってはかどらない気がしますので」


新發田しばたさんみたいに歴史が好きとかなら、むしろ長めに勉強時間をとってもいいと思うよ。

 楽しいことや興味があることなら人間は90分くらいまでは集中できるらしいしね」


「あ、はい。

 物事ってそういうものだと思います」


 実際に新發田しばたさんは銃剣乱舞にドはまりしてた時は、睡眠時間削ってまでゲームに没頭してたみたいだしな。


「んじゃ、タイマーを15分セットにするから

 試す人はそこでいったん手を止めて、休憩に入ろう」


 俺がそういうと東雲しののめさんは元気に答えた。


「うん、15分なら何とかなるっしょ」


 というわけでタイマーをセットして、タイマーが鳴るまでは勉強に集中する。


 そして15分が経って”ぴぴぴぴ”というタイマーの音が鳴る。


「じゃあ、新發田しばたさん以外は、5分休憩にはいろう」


 東雲しののめさんはシャーペンを手放して笑顔で言う。


「しゃー、あたし頑張った!」


 そして九重ここのえさんも笑顔だ。


「これならナントカなりそうデース」


「まあ、飯の直後だとか睡眠不足だとかじゃない限り、15分なら大体の作業は集中できるはずだしな」


 そして西海枝さいかちさんも言う。


「少し苦手な教科はこの方式がよさそうですね」


「うん、特に暗記がメインの教科にはこれがいいと思う。

 国語や英語みたいに文章の意図を読み取れるまで反復して読み込んだほうがいい教科の場合はもうちょっと長いほうがいいかもだけど」


「その場合は25分勉強やって5分とかでしょうか?」


「むしろ読む文章の幅を見て、あとは回数で決めたほうがいいかもね。

 下手に時間で決めると尻切れトンボになっちゃうかもしれないし」


「なるほど、それもそうですね」


 というわけで、時間を細かく設定して勉強と休憩を繰り返すことで、東雲しののめさんや九重ここのえさんの社会科の勉強もはかどったようだ。


 新發田しばたさんは普通に45分間勉強して15分休憩するでも十分集中が続いているので、やはり興味があるとかやってい楽しいのかつまらないのかというのも大事なんだとは思うけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る