第135話 今日の勉強会の内容は社会科だ

 さて、広瀬くんの誕生日パーティは無事終わったし、今は試験前期間なので、今日の放課後は勉強会だな。


 放課後にいつものように集まったメンバーへ俺は聞く。


「今日からは真面目に勉強会をしようと思うけど、今日やる科目は何がいいと思う?」


 真っ先に答えたのは東雲しののめさんだ。


「じゃあ、今日は社会科がいい!」


「あー、社会科か。

 文系でも理数系でもないうえに教科書の内容もばらつきぎみで問題集が少ないから、系統だった勉強法がなくって、ちょっと厄介なんだよな。

 しかも地理に”世界史””日本史”の歴史系と、公民の”倫理””政治経済””現代社会”と、大きく分けて6つの分野に分かれて並行して授業が進むからな」


俺がそういうと東雲しののめさんは困り果てたように言った。


「そーなんだよね。

 覚えることが多いからさぁ。

 もう全然ついてけなくて……」


 ろう言うと東雲しののめさんは体を投げ出して、ぐでっと机の上に伏せてしまった。


俺の方に投げだされた手先を見て俺は東雲しののめさんへ聞いた。


「ん?

 東雲しののめさん、またちょっとマニキュア変えた?」


 俺がそう言うと東雲しののめさんはガバっと体を起こしつつ顔を輝かせて嬉しそうに言った。


「おおー、

 そこに気がつくとはさすが秦ピッピ。

 マニキュアってさ、髪型買えるとかよりカバ味がなくっても自分でもわかるから、いつでも眺められてテンション上がるんよ」


急に笑顔になった東雲しののめさんだがまあ言いたいことはわかる。


「なるほど、誰かのためだけじゃなく、自分のためのお洒落なんだね。

 ネイルって」


「まあ、他人からどう見られるかっていうのも気にすっけど、自分で見てテンション上がるってのはいいんだよね」


「んじゃ、マニキュアの原料に使われてる酢酸エステル類は酢酸、いわゆる酢に含まれてる物質なんだけど、記録に残ってる限り一番古く生成していたのはバビロニア辺りと言われてるけど、バビロニアがどこにあるかわかる?」


「え、わかんないけど、どのあたり?」


「バビロニアはいわゆるメソポタミア文明に属する文明で今だとイラクのあたりだね。

  じゃあ、イラクはどのあたりにあるかわかるかな?」


俺が聞くと東雲しののめさんは顔をしかめていった。


「わ、わかんない」


「イラクはシリアとイランの間で地中海と紅海の間くらいにある国だね。

 まあこんな感じで世界史と地理を紐つけてて自分の興味の引きそうなことから覚えていくと

勉強も楽しくなると思うよ。

 国公立大学を目指すなら、一般的に文系は2科目、理系は1科目は社会の勉強が必要だからね」


 特に2科目が必要な文系の受験生の場合は、覚えることが多くて大変なんだよな。


「東雲さんはちなみに将来国立を受けるなら文系?理系?」


 俺がそう聞くと東雲さんは胸を張りながら言った。


「あたしが理系を受けるような顔に見える?」


「まあ、そうは見えないよな。

 とすると社会科は2科目が必要だな」


「うー、そういうことなんだね」


「そういうこと。

 社会科は暗記の比率が高いっというイメージが強いけど、色々関連付けて覚えて行けば例えば世界史と地理なら国の名前とその国がどこにあるのか、近くにある国はどこなのかとか覚えれば、どっちの科目でも役に立つだろ。

 大学受験のときに使う科目で、社会科目は何を選ぶかを決めるときにも役に立つと思うよ」


「なるほど、それもそうだね」


「覚えることが多いならなるべく少なくて住むように工夫するのも大事だよ。

 まあ最終的にはほぼ暗記科目だから地道に覚えるしかないんだけどな。

 そのためには国語と同じように声に出して読むことも大事だね。

 あと時事問題にも対応できるようニュースをチェックしてそこに出てくる国の名前とかは覚えたほうがいいと思うよ」


 俺がそういうと西梅枝さいかちさんが苦笑しつつ言う。


「社会科は定期テストの範囲だけでも覚えることが多くて本当に大変ですよね」


「そうだね。

 だから最終的には、好きな科目や興味のある科目を勉強するのが一番だと思う。

 新發田しばたさんは日本史とかの歴史系は割と好きでしょ」


 俺がそういうと新發田しばたさんはアハハハとごまかすように笑いながら言う。


「たしかにそうですね」


「それを考えると、ゲームや漫画、アニメとか小説なんかで楽しみながら覚えるのもいいんだけど、みんながみんなそういうのが好きなわけじゃないしな。

  でもまあ、そう言うのがきっかけで三国志とか戦国時代の人物や出来事に詳しくなったりするし、フランス革命を舞台にした漫画やアニメを見て興味を持てばそういったことも覚えるのが楽しくはなるんだよね」


「それなら、おすすめの漫画とかがあれば教えてほしいです」


「もうちょっと具体的にどういう地代のどういった地域のお話の漫画が読みたいとかがあれば探してみるよ」


「でしたら古代エジプトに関する漫画とかが呼んでみたいですね」


「なるほど、エジプトはヨーロッパやメソポタミアとのつながりも強いし古代に関して覚えるにはいいかもね」


「はい、お願いしますね」


「まあ歴史系で年代に合わせた出来事を暗記するなら語呂合わせもいいけどな。

 例えば、1582年の本能寺の変を覚えるのに、”1582年、本能寺の変で織田信長は明智光秀に謀反を越されて自害する”とただ覚えるよりもよりも、”イチゴパンツ(1582)で信長自害”のほうが覚えやすいだろ。

 数字を語呂合わせに使うのは女子高生は得意だと思うし」


 俺がそういうと東雲しののめさんがケラケラ笑って言った。


「”イチゴパンツ(1582)で信長自害”ってチョー受けるんだけど。

 これは確かに覚ええちゃうよ」


「まあ、この手の呂合わせは教科書が変わると使えなくなることも多いんだけどな。

 昔は”1192(いい国)つくろう 鎌倉幕府”って覚えてたらしいけど今は”1185(いい箱)つくろう 鎌倉幕府”という語呂合わせが定番だろ」


「そうなん?」


 東雲しののめさんががそう聞いてくるので俺はうなづいて答える。


「1192年は源頼朝が征夷大将軍に就任した年で昔はここが鎌倉幕府成立と考えられていたんだけど、1185年には平氏軍が屋島や壇ノ浦の戦いで負けて平氏一門が滅亡し、源義経が後白河法皇により無断任官したことで、源頼朝の命により土佐坊昌俊、義経を襲撃するも失敗する。

 しかし頼朝は、後白河法皇より源義経追討の院宣を賜るとともに、守護・地頭を設置したことで、実質的な支配権を得たことで、鎌倉幕府の成立は1185年と考えられるようになったんだ」


「秦ピッピはよくそんなことを覚えてるねぇ」


「いやこのあたりは日本史やるならまず覚えないといけないとこだぞ。

  実質的に朝廷から武家へと権力が移動した瞬間だしな」


「なるほど、わかったようなわからないような……」


「まあ、意味も分からずにただ暗記するよりも興味を持てるように勉強したほうが面白くなるんもは確かだよ。

 さっきのマニキュアから色々繋げていったようにね。

 服に使われてる染料の各地域で使われてる材料とかを調べたりするのも面白いよ」


「たしかにそういうのは面白そうだね」


 まあ、そんな感じで進んだような進まなかったようなのが今日の勉強会の内容だった。


 撮影した内容もかなりグダグダだったんだが何故か割と評判は良かったようだ。

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